55日目(異世界)後編
僕はノーツさんのパーティのところへ戻ってきた。
「あれ?
ノーツさんは?」
ノーツさんが見当たらない。
「あぁ、各パーティのリーダーは騎士団長のところだ。
これからの作戦の説明を受けてるんだろ」
なるほど、カーシーさんが教えてくれる。
「俺たち下っ端は待機だろ。
人数も多いし、全員で説明を聞く意味がねぇからな。
まぁあれだろ?
去年と同じだろ?」
「だろうな」
オルランドさんやラウールさんも去年この要請クエストに参加したのだろう。
「おい、狭間。
お前派手にやられてなかったか?」
「はい、ショーンさんに鍛えてもらってたんですよ」
「鍛えてもらう?」
「はい、知り合いの知り合いだったので、修行に付き合ってもらいました」
「あぁ、ならいんだが」
僕が派手に吹っ飛ばされていたので、ラウールさんが心配してくれたようだ。
「あいつ槍使いのショーンだろ?
先月の武闘大会で優勝したらしいぞ」
オルランドさんが言う。
「おいおいウソだろ?
あんな若いやつが優勝するなんてことあんのか?」
ラウールさんは驚いているようだ。
武闘大会っていうのがあるのか。
ラウールさんのリアクションを見る限り凄いことなんだろう。
「確かにめちゃくちゃ強いですね。
何度くらっても全く攻撃が見えませんでしたよ」
「お前回復職なんだから、戦う必要なんてないだろ」
カーシーさんが呆れたように言う。
そんな話をしているとノーツさんが戻ってきた。
「今回も南回りだそうだ」
「あぁ、去年と一緒だな」
そうなのか。
「あぁ、狭間くんは初めてだからな。
ダブルヘッドが出てくるのは森の中央よりも奥だ。
だが、そこへ向かう前にもできるだけ魔物は殲滅させておきたい。
だから、俺たちや他の街の冒険者は全員南回りのルートで、騎士団の方は北回りのルートだ。
各ルートは中央でぶつかるから、そこで合流してさらに奥へ進む」
「おぉ、なるほど。
ショーンさんも一緒のルートだ」
「?」
「あの槍使いに鍛えてもらうんだとよ」
オルランドさんがノーツさんに説明してくれる。
「そうか。
よし、早速出発だ。
明後日には森の中央で騎士団と合流だ」
僕はまた大きな荷物を背負う。
他の街の冒険者と南ルートを進む。
4つの街から1パーティずつ来ているようだ。
要請クエストだからなのかは分からないが、ガラの悪い連中はいない。
冒険者って別にガラ悪いってわけじゃないのかな。
「おい、お前のそれ【ストレージ】だろ?」
他の街の冒険者に話しかけられる。
【ストレージ】習得のためだろって意味かな。
「はい、そうですよ」
「おい、ノーツ。
いいよな?」
「あぁ構わないよ」
「ぇ?」
他の街の冒険者たちが、荷物を僕にくくりつける。
さらに荷物が多くなる。
バックパックの上にもさらに積まれる。
「じゃ、頑張れよ」
「はい、頑張ります!」
そういうことか。
【ストレージ】習得のために協力してくれる。
やばいな、荷物が多すぎる。
みんなの足を引っ張らないようにしないと。
「俺のも頼むぜ」
ドサッ!
さらに荷物が増える。
「ぁ、ショーンさん!
ありがとうございます!」
「お前なぁ、荷物持ちにされてんだぞ?」
「はい!
ありがとうございます!」
「ったく、ぶっ飛んだ野郎だぜ……」
僕たちは南ルートを進む。
出てくる魔物は、昨日と一緒だ。
大きなアリの魔物、ビッグアント。
植物の魔物、ポイズンフラワー。
それから熊の魔物、シングルヘッド。
こっちは20人以上の冒険者パーティだ。
そして他のパーティの動きも良い。
魔物が出た瞬間に殲滅する。
こんなんでジョブレベルを上げてもいいんだろうかと思ってしまうほど手際が良い。
特に、やはりと言うべきか、ショーンさんの動きが別格だ。
回復いらないんじゃないかってくらい、さっさと殲滅してしまう。
◇
それから日が暮れるまで移動を続ける。
「この辺で野営だ。
ドロップアイテムの振り分けもやっておこう」
「よし、行ってくる。
狭間くんはやっぱり毒の実がほしいのか?」
「あれ?
ドロップアイテムは全て領主様にいくんでは?」
「あぁ、それはシングルヘッドとダブルヘッドの素材だ。
魔石と毒の実はもらっていいぞ」
「では毒の実をお願いします」
しばらくすると、ノーツさんが戻ってくる。
「魔石も結構出ていたようだな。
狭間くんは本当に毒の実だけでいいんだな?」
「はい、今は魔石より毒の実が欲しいんです」
「これ全部いいぞ」
「おぉ、大量ですね」
「そりゃ誰も欲しがらねぇからな」
オルランドさんが言う。
40個くらいあるだろうか。
昨日の分と合わせて50個くらいになった。
また荷物が増えるな。
早く【ストレージ】を習得したい。
僕は野営の準備を済ますと、ショーンさんのところへ行く。
「ショーンさん、また稽古をつけてください」
「やっぱり来たか……」
僕たちは野営から少し離れたところまでやってきた。
「明日の分のMPもちゃんと残しておけよ」
「はい!よろしくお願いします!」
「じゃ、いくぞ!」
◇
それからまた何度も吹っ飛ばされた。
地面を転がり続けるので泥だらけになる。
もう何回目だろうか。
ダメだ。
全く攻撃が見えない。
どうなってるんだ?
「なぁ、そろそろやめにしないか?」
「すみません、もう少し、もう少しだけお願いします!」
「MP切れないわけ?」
「はい、まだ少し残ってます」
「てかさ、お前MP結構あんのな」
「はい、それくらいしか能が無いですからね」
「飯行こうぜ、飯」
「すみません、もう一回だけお願いできませんか?」
「ったくしつけぇな!」
そういうと、またショーンさんが踏み込む。
ダッ!
メキッ!
肩に槍がめり込む。
ドガッ!
地面を転がる。
受け身を取ることもできない。
ガッ!ガッ!
吹っ飛びながら地面を転がり続ける。
威力が強すぎるんだ。
全然止まらない。
バゴッ!
僕は木に背中がぶつかり止まる。
やばい……
肩だけでなく、他の骨も折れてるっぽい。
「わりぃ!
つい力が入っちまった!
大丈夫か?」
ショーンさんが駆け寄ってくる。
「だいぶ吹っ飛んだな。
まだ意識あるか……
って、お前……」
「大丈夫ですよ」
僕は【ヒール】を重ねながら言う。
「どうしたんですか?」
「……なんで笑ってんだよ……」
あれ?
そうか……
どうやら僕は笑っていたようだ……
カチャリ
狭間圏
【斥候:Lv0(New)】
HP:44/142(↑+10)
MP:121/410
SP:18/18【斥候:+30】
力:21
耐久:30(↑+3)
俊敏:33(↑+2)【斥候:+15】
器用:14【斥候:+15】
魔力:25
神聖:51(↑+3)【斥候:−10】
【回復魔法:Lv22(↑+1) ヒール:Lv21(↑+1)エリアヒール:Lv0】
【盾:Lv8(↑+1)】
【マルチタスク:Lv14(↑+1)】
【毒耐性:Lv9(↑+1)】
【etc.(16)】




