54日目(日本)
目覚めると、誰かの声が聞こえる。
ん?
いや、誰かの声というより英語だな。
ベッドの横にはイケザキ先生だ。
今日も来てくれたのか。
先生の携帯から英語の音声が流れている。
せめて僕が起きてからにしてはどうだろうか……
寝ている間に音声を流しても意味が無いと思うんだけど……
それにしてもここは4人部屋だ。
この音声は他の入院患者の迷惑ではないだろうか。
と思った矢先、同部屋の中学生のお母さんらしき人にお礼を言われている。
熱心な先生なんですね。
といった感じだ。
素晴らしい人物だとは思うが、まさかこんな状態でも英語をやらされるとは……
ん?
僕は頭のうえのほうになにかあることに気がついた。
あれは、千羽鶴だ。
クラスのみんなが折ってくれたのだろうか。
……凄い量だな。
僕が千羽鶴を見ていると、先生がそれに気がついたようだ。
「おぉ、狭間。
千羽鶴に気がついたか。
あれはな、クラスのみんなが折ってくれたんだ」
やっぱりそうか。
「ちなみに鶴は英語でcraneだ。
覚えておけよ」
「……………………」
いや、僕としてはみんなが鶴を折ってくれた話が聞きたかったんだけど……
「ちなみに俺は折っていないかわりに、一つ一つに頻出単語を書いておいた。
ほら、よく見てみろ」
「……………………」
確かに英単語らしきものが一羽一羽に書いてある。
千単語書いてくれたのだろうか……
この人すげぇな……
「なぁ狭間、知ってるか?
医者ってのは、一般人よりもスピリチュアルや超常現象を信じている人間が多いんだ」
え?
そうなの?
医者なのに?
「なぜだと思う?」
「……………………」
何故だろうか。
むしろ逆のイメージだけどな。
「医学的に絶対に治らないという人間が、ある日突然治ってしまう。
医者をしていると、そういうことに遭遇するらしい。
それに何度も遭遇すると、神や超常現象ってのしかあり得ない、そう思うんだそうだ」
なるほど。
僕も異世界に行っているし、超常現象は体験済みだ。
「だから先生も、お前が受験できるようにやれることはやるからな。
お前も単語覚えとけよ」
「……………………」
僕は目で返事をする。
先生にここまでやってもらったら頑張るしかないよな。
僕は鶴から少し見える単語を覚えようと思う。
……すごく見えにくい。
僕は【水魔法】と【炎魔法】をポットに交互に撃ちつつ、英単語を覚える作業を同時にこなした。
なんと【マルチタスク】が一つ上がった。
魔法の使用と暗記作業は【マルチタスク】に影響するようだった。
狭間圏
【見習い魔法士:Lv3】
HP:110/130【見習い魔法士:−20】
MP:4/405(↑+6)【見習い魔法士:+32】
SP:18/18
力:21【見習い魔法士:−10】
耐久:27【見習い魔法士:−10】
俊敏:31
器用:14
魔力:25【見習い魔法士:+17】
神聖:46
【魔力操作:Lv29(↑+1)】
【炎魔法:Lv20(↑+2)】
【水魔法:Lv10(↑+4)】
【マルチタスク:Lv11(↑+1)】
【etc.(14)】




