52日目(日本)
目が覚めると、見慣れた病室……ではない?
若干天井が違うような気がする。
僕はゆっくりと辺りを見回す。
「ケン、目が覚めたの?」
おばさんだ。
アケミおばさんは、父の妹で僕の育ての親だ。
「…………」
僕は声を出そうとするが上手く出せない。
「あぁ、無理しなくていいよ。
ケンは一般病棟に移ったんだよ」
あぁ、そうか。
今までは個室だったけど、怪我もとっくに治ってるしな。
違う病室に移されたのか。
「命があって良かった……」
「……………………」
しばらく無言のまま時間が過ぎる。
心配をかけてしまった……
「まぁ、こっちでできることは全部やってあげるから、あなたはゆっくり休んでなさい」
おばさんは眼をうるませながら言ってくれる。
「ケン、あなたの回復力は凄いそうよ。
医者も看護師さんもみんな驚いてたのよ」
「………………」
ぁ〜……
【回復魔法】を使ってますからね……
「こんなの診たこと無いって。
兄さんや義姉さんが、守ってくれてるのかもしれないね」
「………………」
◇
「じゃあまた明日来るから」
「………………」
僕に気を使ったのだろうか。
事故のこと、今後のことは何も話さなかった。
とにかく今は休めという感じだ。
おばさんが腰をさすってゆっくりと立ち上がる。
そういえば、おばさんは腰痛持ちだった。
帰る前に【ヒール】を使っておこう。
【ヒール】。
発動した感覚があったから、多分回復したと思う。
当たり前だけど、心配をかけてしまったな……
早く上位の【回復魔法】を習得して、おばさんを安心させてあげたい。
おばさんが帰ったあと、あらためて部屋を見渡す。
4人部屋だ。
僕は交通事故で入院している。
ということは、ここは外科病棟ってやつか?
他の3人を見てみる。
中学生くらいの若い男の子と、おじいさんが2人。
男の子は足にギブスをしている。
僕と同じく交通事故だろうか。
おじいさん2人は寝ているので、どこが悪いのかはわからない。
おそらくみんな怪我で入院しているのだろう。
……………………
回復したらまずいだろうか……
基本病室では【エアブレード】の空撃ちをしている。
だからMPは上がっても、魔力や神聖などのステータスは上がらない。
だけど、彼らを回復してしまえば魔力と神聖を上げることができる。
だが回復してしまうと、医者や看護師はおかしいと思うだろう。
う〜ん……
迷うな……
やめておこう。
異世界で治療しているから、ステータスはそこで我慢する。
それに【ヒール】は【エアブレード】に比べて発動に時間がかかりすぎる。
回復をするよりも、【エアブレード】の空撃ちのほうが、圧倒的にMPが成長する。
昨日食べた毒草の分だけはHPが減っているから、回復はそれで我慢しよう。
そして毒が切れるまで【ヒール】を使う。
これだと【アンチポイズン】はなかなか成長しないな。
なんというか、毒状態を回復してしまうのは勿体無い。
自分に【アンチポイズン】を使うことはしばらく無いだろう。
僕は毒によるダメージを全て回復したあと、【エアブレード】を撃ちまくった。
目に見えないが、風の音がする……
隣のベッドまでは聞こえていないだろうか。
まぁ多少聞こえたとしても仕方ない。
MP成長の機会を逃すのは我慢ならない。
エアコンの空調くらいに思ってくれればいいが……
狭間圏
【見習い魔法士:Lv3】
HP:110/130(↑+1)【見習い魔法士:−20】
MP:392/392(↑+27)【見習い魔法士:+32】
SP:17/17
力:21【見習い魔法士:−10】
耐久:27【見習い魔法士:−10】
俊敏:31
器用:14
魔力:24【見習い魔法士:+17】
神聖:43
【魔力操作:Lv26(↑+1)】
【風魔法:Lv30(見習い魔法士:+5)(↑+1)エアブレード:Lv8(↑+2)】
【毒耐性:Lv6(↑+1)】
【etc.(17)】




