表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/312

50日目(異世界)


日本では意識がなくなる直前まで【エアブレード】を撃ちまくった。

現在の【エアブレード】のレベルは2だ。

発動のタイミングや距離が【エアカッター】とそれほど変わらないので、すぐに実戦で使えるだろう。


今日はクレス達と再戦する予定だ。

だから、狩りは軽めにする。

初めて行った狩場で、芋虫の魔物ラオペをスキルや魔法なしで倒していく。

軽く盾を使う程度で基本ノーダメージだ。

【見習い聖職者】と【見習い魔法士】で戦っておく。

2つのジョブのレベルが3になったので、まだ昼過ぎだが街へ帰る。


夕方まで、ゆっくりと身体を休めておく。









気持ちが高ぶり、全く落ち着かない……


夕方になり、治療所へ行く。

まだクレス達は来ていないな。


ゆっくり辺りを見回し、一番長い列へ並ぶ。

とにかく彼らに発見してもらうのが目的だ。


いつものように冒険者を治療していくが、今日は【ヒール】ではなく【マイナーヒール】を使う。

できる限りはMPを温存しておきたい。

しばらくすると、彼らがやってきた。


僕はクレスと目が合う。

一瞬驚いたような表情をし、こちらを睨めつけてくる。


後ろの奴らは驚き、呆れているようだ。

やれやれ、といったところだろうか。


さて、目的は果たした。

これ以上MPを使いたくないので、この場を立ち去る。


僕は昨日以上にゆっくりと時間をかけて帰る。


ドスッ!


今日も後ろから蹴りをくらって吹っ飛んでいく。


ズザァー!


僕は地面を転がると、すかさず受け身を取り立ち上がる。


ダメだな。

来るとわかっていても、後ろからだと反応できない。


「お前マジでいかれてんじゃねぇのか?」


「………………」


僕は無言で盾を構える。


「またその盾がムカつくんだよな」

「おい、今日はお仕置きのあと、盾もらってこうぜ」


クレスが苛立ち、後ろの戦士ミューロが茶化すように言う。


「ぉ、そりゃいい考えだっ!」

言い終わると同時にこちらへ踏み込んでくる。


ドゴッ!


盾に衝撃が伝わる。

相変わらず、ステータス差はまだまだある。


だが、盾で受けるのが昨日より楽になっている。


ドスッ!

ドガガッ!


素早く、重い攻撃だが、相変わらず拳一辺倒だ。


僕は盾で受け止めつつ【ヒール】を使う。


「おらいくぞ、しっかり盾構えてないと死ぬからな!」


クレスが両手を同時に引く。

くる!

スキルだ!


【ガード】!


「【連撃】!」


ガギンッ!

ガガガガガガッ!


凄まじい金属音が鳴り響く。

いける……

【ガード】の上からならダメージは半減だ。


「なっ!」


クレスは驚いているが、連撃を止めない。


マズイ……

そろそろ【ガード】が切れる……


ガガガガッ!


ドドドドドドスッ!


金属音が打撃音に変わり、ダメージ量が増える。


「クソが!

無駄なあがきしやがってよ!」


ドスッ!


ズザァー!


【連撃】が終わると、僕はふっ飛ばされ、体勢を崩すが、なんとか倒れずにすむ。

【ヒール】をかけ続けているので、あと一回くらいはなんとか耐えられるか?


「ハッ!」


まずい、すぐにクレスが突っ込んでくる。


「【連撃】!」


きた!

【ガード】だ!



ガガガガッ!


ドドドドドドスッ!


再び金属音からの打撃音が響き渡る。

身体がミシミシときしむ。


やばい、とにかく一旦引いて、【ヒール】だ。

連続スキルだと、回復が追いつかない。


「おらおら、まだいくぞぉ!」


3連続か!

これはヤバい!


とにかく【ガード】だ!


「ほらよ!」


ガガガガッ!


ドドドドドドスッ!



「ゴホッ!

ガハッ!」


血反吐が出るが、なんとか立っている。

とにかく盾を構える。


「おいおい、コイツなんだよ。

ゴキブリ並だな、うざってぇ……」

「おい、手伝おうか?」


やっぱりきたか……

【ヒール】に集中だ。


「頼むわ、SP切れた」


よし、狙い通りだ。

まずはSP切れを狙う。

でなければ話にならない。


ザッ!

ザッ!


ミューロがゆっくりと近づいてくる。

魔法使いは来ないのか?

MPを温存してくれると助かる。

3人は無理だ。


「ハッ!」

ミューロが剣で突きを放つ。


ビュン!


僕はそれをすかさず避ける。


ブワッ!


風圧がくる。

凄まじい威力だ……

まともにもらったらクレス以上にHPをもっていかれる。


でも、思った通りだ。

ミューロはジョブを【盗賊】にした僕よりも俊敏が低い。

避けることはできる。

問題はこのあとだ。


ガツッ!


クレスの打撃をもらってしまう。


やっぱり2人同時ってことはこうなるだろう。


【ヒール】を使いながら防御に徹する。


ミューロの攻撃を避け、クレスの攻撃をもらってしまう。

僕の回復速度よりもダメージ量のほうがやや多い。


さらに2人連携して攻撃をしてくる。


ミューロの攻撃を避けたあと、盾をクレスの方向へすかさず向ける。

クレスのほうが俊敏が上なので、さらに盾の左から打撃がくる。


ドスッ!


HP、MPともジリ貧だ。


彼らも余裕の表情。


だが……

連携攻撃も一辺倒だ。


何度も同じ攻撃をもらうことはない。



ガッ!


徐々にタイミングが合ってくる。

「こいつ……」


クレスの攻撃に盾がかする。


彼らの攻撃と、僕の回復速度が同程度になっている。


もう少し、もう少しで完全にタイミングが掴める……


よし!

ここだ!


ガキンッ!


完全にタイミングが合う。

ミューロの攻撃をかわし、クレスの攻撃を盾で受ける。


もちろん、ステータス差により盾で受けてもダメージがある。

だが、僕の回復速度の方がダメージを上回る。


しかし……

ミューロが両手を剣ごと後ろに引き、体勢を低く構える。


やばい!

なにかくる!


「【斬撃】!」

【ガード】!


僕は身体をそらしつつ【ガード】を発動する。


ガギンッ!


身体が大きく浮き上がり、ふっ飛ばされる。

盾を構えた左腕に激痛が走る。


大丈夫、動く。

骨まではやられていない。


僕がふっ飛ばされたところに、すかさずクレスが攻撃してくる。

僕はゴロゴロと地面を転がり盾を構え、体勢を立て直す。


ズゴッ!

ドガッ!


何発か直撃をもらってしまうが、HPはまだある。

ひたすらに防御しながらの【ヒール】だ。


「おい、マジかよこいつ、そろそろめんどくせぇんだけど。

【斬撃】あと何回いける?」

「今ので終わり。

今日は狩りで使い切ったからな」

「俺の魔法使おうか?」


さっきまで観戦していた魔法使いも参戦する気か?


「いや、MPがもったいないな。

やめておこう。

クレスもそれでいいな?」

「あぁ、こんなゴキブリ野郎に明日のMPを使うのは勿体無い」


彼らの話合っている間も【ヒール】を使い続ける。


この流れは、帰るつもりか?


「おい、ゴキブリ野郎。

よかったな。

今日のお仕置きは終わりだ。

SPが余ってるときは、もっとボコすからな?

明日から来んなよ。

てか、来なくても見かけたらぶん殴るけどな」

「飯に行くか。

酒でも飲もうぜ」


よしよし、おしゃべりの間に随分と回復させてもらった。


3人は飲食街のほうへ歩き出す。


「【エアブレード】!」


ブシュッ!


魔法使いの少年が倒れる。


ドサッ!


不意打ちだったからな。

脇腹にもろに入ったのだろう。


「ぁ?」


クレスがこちらを見る。

これまでにない怒りの表情だ。

目が血走っている。


ダメダメ。

逃さないよ……クレス……



まだMPの残っている魔法使いを仕留めておいた。

これで彼らに勝機は無い。


「てめぇ!

ブチ殺す!」


クレスが突進をしてくる。


ミューロも構え、こちらに向かう。

魔法使いの少年は自分に回復魔法をかけているようだ。


僕は、クレスが突進してくる方向へスキルを使う。

「【ガウジダガー】!」


「ハ、ノロマが!」

クレスが、とっさに左へ飛び、拳を繰り出してくる。


が……


ブシュッ!

「なっ!」

彼の肩から血が吹き出る。

「ダメだよ、そっちは魔法撃ってあるから」


僕は笑顔でクレスの拳を盾で受ける。


完全に予想通りの動きだ。


そして、彼らには魔法の耐性がほとんどない。

これも予想通り。

駆け出し冒険者なのだろう。

初期の狩場には恐らく魔法を使う魔物などほとんど出てこない。

魔法職のあの少年ですら、【エアブレード】一撃だ。


クレスは一旦距離をとる。

「おいミューロ!

魔法がくるぞ!

気をつけろ!」

「は? マジかよ!」


今度は2人同時に攻撃をしてくる。

まずはミューロの突き。

ブンッ!

それもさっき見た。


僕はミューロの攻撃をかわしつつ、クレスが攻撃してくるところに【エアブレード】を放つ。


クレスが拳を突き出すが、逆に彼の腕からは血が飛び散る。


ブシュッ!

「クソッ!」


彼らは一旦距離をとり、僕から離れる。


「だからダメだって、そこは魔法攻撃の範囲内だよ……【エアブレード】!」


ブシュッ!

さらにクレスから血が飛び散り、彼は片膝をつく。


「てめぇ、汚ねぇぞ!

SP切れを待ってたのか!」

「うん、まぁそうだよ……

でも、3対1も卑怯じゃないの?」


時間稼ぎか……

魔法使いの少年が自分の回復をしている。


僕は構わず魔法使いの少年へ追撃をする。

「【エアブレード】!」


ブッシャー!

「ひぎゃぁっ!」


さらに血が飛び散る。

これで彼は自分の回復で手一杯だ。


「殺す! 殺してやる!」

クレスの突進と同時に、ミューロが剣を振り下ろす。


僕はミューロの攻撃をかわし、クレスに関しては突進してくる方向に予め【エアブレード】を撃っておいた。


ブッシャー!

突進が裏目に出たのだろう。

カウンター気味に【エアブレード】が決まる。


「ガハッ!」

クレスは倒れ、血を吐く。


「殺す……絶対に殺す……」


あれは当分動けないな。


僕はミューロのほうを見る。


「ひっ……」

ダメだ、こいつはもう戦意がない。

ん〜……残念だな……

もう少し戦士の動きも勉強したかったんだけど。


まぁだけど検証してみたいことがある。

僕はミューロへ近づく。


彼は剣を構え、カタカタと震えている。

「うおぉ!」

何の変哲もない上段からの振り下ろし。

僕はそれをかわし、彼の鎧へ手を当てる。


「【エアブレード】」


「なっ!」

彼は恐怖と驚きの表情を見せる。


ブシュッ!

鎧の中から血が吹き出る。


やっぱりだ。

鎧の中に魔法を撃ち込むことができる。


まぁ彼らの魔法耐性の無さだからできることだろう。

これは僕自身も魔法攻撃に対して、なんらかの対処をしなければならないということだ。


「おいてめぇ!

このままですむと思うなよ!」

クレスが吠える。


「あぁ、もちろんだよ。

こんなにお互い成長できるんだ。

今日限りなんて寂しいことは言わないよ」

僕は笑顔で答える。


クレスは何を言っているんだ、というような驚きの表情だ。


「僕は君たちのおかげで、HPや耐久を大幅に上げることができた。

さらに、【盗賊】のジョブも得ることができたんだ。

今後もこの訓練を続けよう!」

僕は本心で答える。

これっきりというのはあまりに勿体ない。


「SPが全快だったら絶対にこうはならない!

次は殺すからな!」

「いやいや、それは敗因の一つだけど、問題はそこじゃないよ。

一番の問題は魔法耐性だ。

ぁ、そうだ。

これまでのお礼に【風耐性】をつけてあげよう」


「は?」

「いや、実は僕、MPがまだまだ残っているんだ」

今日は治療所でも狩りでもMPをほとんど使っていない。

まだまだ半分以上は残っている。


「まぁ少し痛いかもしれないけど、回復魔法もかけてあげるよ。

うまくいけば、【風耐性】だけじゃなく【痛覚耐性】もつくかもしれない」

「何を言って……?」


「いくよ!

【エアカッター】!」

「ッ!」

ブシュッ!


「【エアカッター】!

【エアカッター】!

【エアカッター】!」

「ギエェェ!

クソ!

殺す!

絶対に殺してやる!」


「大丈夫、大丈夫、回復してあげるから

【エアカッター】!

【エアカッター】!」

「や、やめろ!

やめろぉぉぉぉ!!」


「【エアカッター】!

【エアカッター】!

【エアカッター】!」

「ヒッ……」


クレスの体中から血が吹き出る。

これ以上はまずいな。


「よし、【ヒール】!」

「もうわかった!

俺が悪かった!」


「いや、それはもういいんだ。

気にしていないよ。

それよりも【風耐性】をつけておいたほうが良い。

そしたら次は僕に勝てるよ!」

「いや、そういう意味でじゃない!」


「いくよ!

【エアカッター】!

【エアカッター】!

【エアカッター】!」

「や、やめ、やめてください」







クレスは思ったよりもHPがあるな。

【エアカッター】ならかなり耐えられるんじゃないか?


「よし、【ヒール】!

ってあれ?」

クレスは白目を剥いて意識を失っている。


「気絶か……

仕方ないな……

まだMPはたくさんあるし、他のみんなも……」

いない……


あらら、逃げてしまったか……

せっかくの強化なのに、勿体無い……


僕は【水魔法】を使ってクレスの顔に水をかける。

クレスが目を覚まし、こちらを見る。


「ヒィッ!」

「ぁ、回復はしておいたよ。

他のみんなはどっか行っちゃったみたい。

まだMPはあるし、もう少しやろうか?」


「ヒィィィッ!」

彼は叫び出すと逃げてしまった。

俊敏が僕より高いので、追いかけても捕まらないだろう。


「おぉーい!

明日もまた頑張ろぉ!」



狭間圏はざまけん

【盗賊:Lv10】

HP:105/129(↑+3)【盗賊:+20】

MP:126/336【盗賊:−18】

SP:−18/15(↑+1)【盗賊:+40】

力:20

耐久:27(↑+3)

俊敏:31(↑+1)【盗賊:+20】

器用:14【盗賊:+20】

魔力:24(↑+2)【盗賊:−8】

神聖:41(↑+1)【盗賊:−8】

【魔力操作:Lv24】

【風魔法:Lv27(↑+1) エアカッター:★ エアブレード:Lv3(↑+1)】

【回復魔法:Lv18 マイナーヒール:★ ヒール:Lv14(↑+1) アンチポイズン:Lv0】

【短剣:Lv6(盗賊:+5) ガウジダガー:Lv5】

【盾:Lv6(↑+1) ガード:Lv4(↑+1)】

【マルチタスク:Lv8(↑+1)】

【etc.(6)】


一章終わりです。


よろしければブックマーク、評価お願いします。


今後とも異世界修行生活をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 男も女も、MとSは表裏一体b クレスはエセSだったなw
[良い点] どんどんステータス上げ信者になってて草 やべーやつじゃん こいつ上げるためなら悪魔に魂売りかねないぞ 悪魔からステータスを借りて期間内に上げて返済しないと魂奪われるみたいな賭けに挑んで悪…
[良い点] 主人公がやばかった
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ