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43日目(異世界)


今日も朝から道具屋へ来ている。

今の僕に圧倒的に足りないステータスは、耐久だ。

だから今日はホーンラビットの角を折らずにやってみる。


【見習い聖職者】

カチャリ

【盗賊】


もちろん、ジョブを盗賊に変える。


「シギャァッ!!」

今日も僕を親の仇のように睨みつけ、突進してくる。


動き自体はわかっているので、いつもよりもやや距離をとってかわす。


「いッ!!」

が、鋭い角がかする。


そうか、ホーンラビットは角の使い方を知っている。

ただリーチが伸びるだけではない。

僕が突進を避けるときに、ホーンラビットは首を振り、角をこちらに向ける。

だから、やや大きく避けたところでかすってしまうんだ。

突進を避けながらも、ホーンラビットの首の動きをよく見ておくんだ。


【盗賊】で俊敏が上がっているとはいえ、慣れるまでは難しい。

しかし、直撃しなければそれほどのダメージは無い。








しばらく時間が経つと、動きに慣れてきた。

反撃もできそうだ。

僕は攻撃を避けながらも、ホーンラビットの腹に手を当てる。


「はっ!」


ただし、攻撃はしない。

あくまでもタイミングを測るだけだ。


僕は今日からギルドの治療所へ行くのをやめる。

ただしクレス達に屈したわけではない。

MPを治療所の回復に使うのではなく、自分に使うためだ。


だから、このホーンラビットは仕留めない。


僕はホーンラビットの攻撃を避け、押さえつける。

「よし!」


呼吸を整えながら、ホーンラビットを縛り付ける。

数分休憩すると、今度はホーンラビットを2匹同時に放つ。


「シギャァッ!」

「ギャァッ!」


2匹同時に襲いかかってくる。


「うぉっと!」

2匹同時でも、直撃はかわすことができるようだ。

ただし……


ビシュッ!

「ッ!!」


たまにかする。

かすった箇所からは血が出ている。


2匹同時にも慣れておかなければならない。

クレスの速さはこんなものでは無かった。


よし、次だ。

まだ2匹の攻撃をかわすことも慣れていない。

この状態で、自分に【マイナーヒール】をかけようとする。


「シギャァッ!!」


ホーンラビットの突進が絶え間なく続く。

ダメだ。

なかなか【マイナーヒール】を使わせてくれない。


しかし、動きながらの回復はマスターしておく必要がある。







結局傷だらけになり、最終的には2匹ともなんとか短剣で仕留めた。

【盗賊】でSP補正があるので、【ガウジダガー】を11発も使うことができた。


今のところ、回復しながらの行動はできていない。

ただ、2匹同時に相手にすることはなんとかできたな。


僕は、肉の解体加工をする。

ただし、【マイナーヒール】を使いながらだ。


……いつもよりも、集中できていない。

だけど、できるっちゃできる。

戦いながら【マイナーヒール】を使うよりは、解体加工しながらのほうがハードルは低い。


一通りの作業を終える。

今日はギリギリまでホーンラビットの攻撃を避け続けたので、いつもよりもやや時間が遅い。


「おや?

今日は時間がかかっていますね」

カルディさんがやってきた。


「えぇ、ちょっと方針を変えようと思いまして」


僕は、耐久と俊敏を上げるために、今日から治療所には行かず、自分に【回復魔法】を使うことを説明した。

さらに【盗賊】のジョブを取得したことを報告した。

だけど、クレスたちのことは何も言わなかった。


彼らのことを言えば、カルディさんからギルド受付のガランさんに話がいって助けてもらえるかもしれない。

だけど、それじゃ僕自身で戦うことができない。

あれは貴重な経験だ。

是非とも自分で解決したい。


「そうですか、そうですか。

もう【盗賊】のジョブを取得したんですねぇ。

だとしても、このままホーンラビットとここで戦い、その後治療所で【回復魔法】を使うことが一番良さそうです。

神聖が増えて、もらえるお金も増えてきたでしょう?」

「確かにそうなんですが、今は耐久やHPを上げたくて……」


ん〜……

クレスたちのことを伏せたままだと違和感があるか……

あれほどお金をのことを気にしていたのに、治療所に行かないのは不自然だよな……


「あの、お金をクエストで稼ぐのはまだ厳しいでしょうか?」

「そうですねぇ、【盗賊】のジョブがありますから、最低限の装備を整えればなんとかなるかもしれません。

ただ、それでもやはり、治療所のほうが金銭的な効率はいいですし、危険度は圧倒的に上がりますよ?」

「はい、それでも【盗賊】のジョブレベルも上げたいですし、クエストを受けたいです」


「では、最初は僕が直接依頼します」

「?

ギルドでクエストを受注するのではないんですか?」


「初心者向けのクエストもありますが、パーティでなければやや厳しいでしょう。

狭間さんはパーティを組んでクエストへ行くつもりですか?」

「……いえ、こちらの世界での知り合いはほとんどいませんから、ソロの予定です」


カルディさんは小さくうなずくと、地図を持ってきた。

そして、テーブルに地図を広げ、説明してくれる。


「今いるアインバウムがここです。

街の周りにはあまり魔物はいません。

この街から東、こちらの方ですね。

ここへ向かうと森林区域になります。

森林に入ると、徐々に魔物が出始めます」

アインバウムがこれくらいってことは、森までは1km以上ありそうだ。

僕は地図の縮尺で、だいたいの予想をする。


「そして、森に入ってそうですね、1kmくらい進むとこれがあります」

カルディさんが植物の葉を見せてくれる。

だいたい20cmくらいだ。

「薬草です。

一つサンプルに渡しておきますね」

「はい、ありがとうございます」


「この薬草をここへ持ってきていただければ、10セペタで買い取りましょう」

「わかりました。

行けばすぐに見つかるものなのでしょうか?」


「狭間さん、【魔力操作】は使えますね?」

「はい、高度なものでなければ大丈夫です」


「では、魔力を目に集中させて、この薬草を見てください」

「はい……」


僕は、魔力を目に集中させる。

……おぉ。

薬草がもやっと光っている。


「これは、魔素が薬草に集まっているんですか?」

「その通りです。

薬草以外のものでも、ステータスに影響があるものは魔素で見分けることができます。

森を探索するときには、常に魔力を目に集中させると効率的です」


なるほど。

僕は魔力を目に集中させたまま、周囲を見渡す。

さすがは道具屋だ。

置いてある商品のほぼ全てに魔力が満ちている。

「それから、次は魔物についてです。

森の魔物は基本的に、ホーンラビット、ラオペ、バウームの3種類が出てくるでしょう。

ラオペは30cmくらいの芋虫の魔物です。

飛びつき、噛み付いてきますが、攻撃はそれだけです。

バウームは、樹木の魔物です。

こちらは、森の木と似ていますので注意してください。

動いていますから、すぐに普通の木と見分けることはできると思いますが、油断すると囲まれることがあります。

ラオペ、バウーム共にホーンラビットよりも遅いので、現状倒すのは問題ないでしょう」


なるほど、それだったら今の俊敏で十分対応できるな。


「森に深く入りすぎると、今教えた魔物よりも強力な魔物が出てきますから、絶対に深追いをしないでください」

「わかりました」


それから冒険者の装備を狙った盗賊がたまにいるから、装備にはお金をかけすぎないほうが良いということも教えてもらった。

盗賊というのはジョブの【盗賊】ではなく、リアルな盗賊だ。

彼らも金のない駆け出し冒険者を狙うより、行商人を狙ったほうが効率がいいだろう。


カルディは僕に一通りの説明をしてくれると、大きめの肩掛けカバンを出してくる。

「こちらに薬草を入れてきてください。

それから、今日はもうすぐ日が暮れますから装備だけを整えて森へは明日行ってくださいね。

「わかりました。

ありがとうございます!」


それから僕はギルドへ向かい、明日からのホーンラビット捕獲、素材の依頼を取り消す。

これから治療に人が来る時間だ。

クレスたちはまだ来ていなかった。


そして僕は装備を整えるために武器防具屋へ向かう。

この街、アインバウムはそれほど大きい街ではないため、武器屋と防具屋は分かれていない。

中に入ると、建物の割には狭く感じた。

武器防具が店内に並んでいると思っていたが、店内には小さいスペースと、カウンターがある。

恐らくカウンターの奥が広いのだ。

装備を盗んだり、武器をとって強盗してくるのを防ぐためだろうか。

カウンターの中にはドグバさんほどではないが、筋肉質の男性がいた。

この店の店主だろう。


「武器? 防具?」

愛想は全く無いな。

ぶっきらぼうに聞いてくる。


「短剣と、身軽な装備を探しています」

今の僕の所持金は32270セペタだ。

極力消費を抑えたい。


店主は無言のまま奥へ行き、ゴソゴソと中を探している。

「はい、まず短剣ね」

そう言うと、カウンターにゴン!と短剣を3つ並べる。


「左から1000、3000、12000セペタだ」


1000セペタのものは、カルディさんから借りていたものによく似ている。

刃渡りが10cmくらいだ。

これは訓練だったから良かったけど、実際の戦いではリーチが短いな。

それに対して3000セペタのものは、刃渡りが20cmほどある。

そして12000セペタのものは、刃渡りが30cmほどで重量もありそうだ。


「装備してもいいですか?」

「あぁ」

店主がそう言うと

ガッチャン!


後ろから鍵がかかる音がした。

魔法か何かの仕掛けだろうか。

万引防止だろう。


僕は3000セペタのものを装備してみる。

【短剣:攻撃力+5】

重量もそれほどない。

いい感じだ。


次に12000セペタのものを装備してみる。

【短剣:攻撃力+12 俊敏−2】

ちょっと大きくて重量もある。

さっきのものよりも扱いにくいな。

重いものだと俊敏にマイナス補正が入るのか。


「武器はこれでお願いします」

僕は3000セペタの短剣にする。


「んで、装備は?」

「そうですね。全身お願いします」


店主は短剣を奥へ持っていき、今度は防具を持ってきてくれる。

「麻、木、革、鉄だ」


麻は普通の服にも使われている素材だな。

ただ、普通の服よりも分厚く何重にも縫われている。

この中では一番軽そうだが、防御力も一番低そう。


木製の防具は、麻のものよりも防御力はありそうだ。

ただ、重量はそれなりにあるだろう。


革製のものは、木よりも軽く、麻よりも防御力がありそうで

鉄製のものは、重量、防御力共に相当あるだろう。


「麻が12000、木が20000、革が60000、鉄が150000だ」


高い……

まぁ胸、下半身、足、手、頭全部で5箇所の装備セットだからそれくらいはするんだろう。

今の所持金で買えるのは、麻か木だ。

僕は俊敏を落としたくないので、麻にした。


「盾は?」

「お願いします」


そうか、盾もあったな。

「とりあえず木だ」


ゴトッ!

そういうと店主は木製の盾をカウンターへ置く。

「左から2000、5000、12000だ」


全て木製のものだが、一番左のものは直径が50cmくらいの円形の小盾。

中央のものは、円形ではなく、高さ1mくらいの長方形盾。

一番右のものは、高さ1.5mくらいの大盾だ。


「こちらお願いします」

僕は迷わず小盾を選択する。


「革と鉄もあるけど?」

「いえ、木製で大丈夫です」


たぶん今の所持金では届かないだろう。

「全部で17000だ」

僕はお金を払うと宿屋へ向かう。


ヤバいな、所持金が15000セパタを切った。

これで装備も整った。

明日は初めて街の外へ行ってみる。

僕はMP、SPを消費し、【魔力操作】をしながら眠りについた。


狭間圏はざまけん

【盗賊】

HP:62/62(↑+1)【盗賊:+10】

MP:22/237【盗賊:−20】

SP:−19/5(↑+1)【盗賊:+20】

力:14

耐久:10(↑+1)

俊敏:22(↑+2)【盗賊:+10】

器用:10(↑+1)【盗賊:+10】

魔力:19【盗賊:−10】

神聖:25【盗賊:−10】

【魔力操作:Lv13】【炎魔法:Lv7 ファイアボール:Lv0】【風魔法:Lv21 エアカッター:Lv7】【水魔法:Lv1】【回復魔法:Lv11 マイナーヒール:Lv18】【体術:Lv1】【短剣:Lv2(盗賊:+5) ガウジダガー:Lv1(↑+1)】【炎耐性:Lv1】

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「貴重な経験」だとか言って、自力救済や自主暴力で行こうとするならこの人もただの、けだもののような人間なんですよ。中世ヨーロッパ的世界以下の状態ですね。
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