163日目 異世界 後編
いや、本当に1話だけでも。
https://ncode.syosetu.com/n4168jn/
ミドーさんは、僕が急に攻撃を仕掛けてきたことに驚いているようだ。
今の僕のフル補助、【魔影装】でどこまで通用するか試してみたい。
「はっ!!」
僕は地面が窪むほど思い切り踏み込み、蹴りを繰り出す。
バキン!!
大盾によるガード。
ダメージはほとんどないか?
【魔影連撃】!!
ドガガガ!!
大盾の上から、連撃を繰り出す。
「おい……」
「速いぞ……」
「【空間魔法師】って話じゃなかったのか?」
あたりがざわついているようだが、今の僕にはそれを聞き取る余裕はない。
ドガガガ!!
「くっ…………この…………」
ミドーさんは表情を険しくする。
しかし大盾の上からの攻撃は、それほどダメージは無いだろう。
だが同時に反撃する隙も無いはずだ。
ドガガガ!!
ドガガガ!!
「この野郎………」
ドガガガ!!
ドガガガ!!
僕は連撃の手を緩めない。
「何だあの動き」
「ミドーがおされてるぞ……」
ドガガガ!!
ドガガガ!!
「いつまでも調子に乗ってんなよ!!」
バギンッ!!
大盾が一気に前に出てくる。
僕はそれを右にかわし、再び連撃をする。
ドガガガ!!
体勢を立て直すのが速いな。
盾で攻撃した直後を狙ったのに、まるで隙がない。
しかし、ギュエンほどの脅威はない。
盾の攻撃もかわせるし、もし完全にくらったとしても一撃死は絶対にない。
ドガガガ!!
そして、連撃によるダメージも少しずつ蓄積しているはずだ。
「チッ………」
!!
ミードさんの体がかすかに光る。
回復だ。
そうか。
【聖騎士】は【回復魔法】も使うことができる。
こうなれば根比べか?
いや、連撃でちまちま攻撃するよりも一気に大技を決めよう。
【フレア……
「バカが!!」
ミドーさんは、にやりと笑う。
しまった!!
誘われた?
しかし、途中で止めることはできない。
バースト】!!
バゴーン!!
爆風とともに吹っ飛んだのは僕だ。
返ってくるダメージが通常の【フレアバースト】の比ではない。
大きく吹っ飛ばされ、地面を転がる。
さっきのは何だ?
「ガハッ!!」
ビチビチと血を吐く。
急いで回復だ!!
「好き勝手ぶん殴りやがって!!」
ザッ!!
さらに追撃を仕掛けてくるミドーさんの攻撃をギリギリでかわす。
大盾を構えた状態で、片手剣を使って攻撃をしてくる。
ズバッ!!
大丈夫、負傷していてもかわせない攻撃ではない。
僕はミドーさんの片手剣による斬撃を全てかわしつつ完全回復する。
「シトン様、彼はいったい?」
「面白いだろう?(気色悪いだろう?)」
ズバッ!!
ズバッ!!
ズバッ!!
「くそ……」
反撃ができない。
というのも、さっきの攻撃が不気味なのだ。
おそらくカウンターだろう。
カウンター技はショーンが繰り出すのをみたことがある。
不用意に突っ込んでカウンターをされれば、先程のように大ダメージをもらってしまう。
ならば……
ダッ!!
僕は大きく後退し、一旦距離を取る。
「【エアブレード】!!」
離れた場所から魔法で攻撃だ。
「攻撃魔法まで使ったぞ!!」
「【風魔法】だ」
ギィィン!
【風魔法】が大盾に当たった瞬間、甲高い音がする。
【エアブレード】!!
【エアブレード】!!
【エアブレード】!!
ギィィン!
ギィィン!
ギィィン!
【エアブレード】が大盾で散っている。
ダメか。
攻撃魔法対策もされているようだ。
この程度の攻撃魔法じゃダメージを与えられない。
攻撃魔法は明らかに修行不足だ。
近づけばカウンター、離れての攻撃魔法ではダメージが与えられない。
「………………」
「………………」
しかし、それはミドーさんも同じだ。
僕への攻撃はカウンターでしか与えられないだろう。
お互いに相性が良くないな。
それにしても、ミドーさんはなぜ不意打ちなどしてきたのだろうか。
そんなことをしなくても、十分に強いと思うのだが……
油断するなってことか?
不意打ち……
不意打ち!?
そうか!!
「フフフ……」
「シ、シトン様、狭間どのが笑っておりますが……?」
「………………(これだ、この違和感……これが狭間の気色悪さの正体か?)」
「スゥ……」
僕は深く息を吸い込み、腰を落とす。
ドガッ!!
踏み込みと同時に、大きく身体を回転させ回し蹴りを打ち込む。
「チッ……」
ドガガガ!!
ドガガガ!!
ドガガガ!!
そこから再び【魔影連撃】だ。
「これでは、先程と同じ……」
「いや、違うな。(威力、速度ともに上がっている)」
ドガガガ!!
ドガガガ!!
ドガガガ!!
【フレア……
「バカが!! さっき学ばなかったのか!?」
カウンターだ。
思った通り、こちらの最大火力である【フレアバースト】に合わせてカウンターがくる。
今だ!!
【転移】!!
僕はミドーさんの背後に【転移】する。
「なっ!!」
「なんと!!」
「ほぉ(【転移】か?)」
予想通り。
この空間には【結界魔法】が使用されている。
基本的に【転移】の使用はできないが、今の僕のスキルレベルなら短い距離、ミドーさんの背後に回ることが可能だ。
そして、すでに構えができている。
……バースト】!!
メキッ!!
ボゴオォォーーン!!
拳が背中へと直撃する。
さすがのカウンターも後ろからの不意打ちには対応できないはずだ。
拳がめりめり込み、大きく爆発する。
「がはっ!!」
ミドーさんは、血反吐を吐き、吹っ飛び、地面を転がる。
確実な手応えがあった。
【転移】と【フレアバースト】のコンボは相当有用だ。
!!
ミドーさんの身体が光っている。
なんてことだ。
意識があり、【回復魔法】を使っているのだ。
まずい!!
回復される!!
ダッ!!
僕は、ミドーさんが吹っ飛んでいったさっきに移動する。
すぐさま追撃しないと回復されてしまう。
「【魔影脚】!!」
ドガッ!!
ミドーさんが体勢を立て直す前に、胴体に【魔影脚】を打ち込む。
「かはっ!!」
効いてる。
体制が崩れ、大盾を構えていない状態ならば、鎧の上からでも十分にダメージが通る。
【魔影連撃】!!
ドガガガ!!
ドガガガ!!
ガッ!!
連撃する腕が止まる。
「やりすぎだ……(想定よりもマズイ状況だな)」
腕をシトン様に掴まれている。
「かはっ……はぁ……はぁ……」
目の前には、かろうじて意識を保っているミドーさんが横たわっている。
「あ……」
周りの【聖騎士】の方々も引いているようだ。
これは……完全にやってしまったな……




