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163日目 異世界 前編

「小隊長!! ご無沙汰しております!!」

僕は今ローシュさんと一緒に騎士団のところへ来ている。

今日は軽く顔合わせをするようだ。

ローシュさんは相変わらず無表情だが、部下たちに慕われているのだろう。

白銀の鎧を着た人たちに挨拶をされている。


「こちらが狭間様、今の私の護衛対象だ」

「狭間です。よろしくお願いします」

僕は頭を下げる。

「おぉ、【空間魔法師】のかたですね。よろしくお願いします」

ローシュさんもそうだが、【聖騎士】の方々は身長が高い。

そしてみんな大きな盾を持っているな。


おそらくみんなHPと耐久が高いのだろう。

中央東の訓練所は宿舎の隣にある。

隣と言っても、訓練所自体が大きいので距離はあるようだ。

そして今僕は訓練所の広場にいるわけだ。


「整列!!」

挨拶をしていると、号令がかかる。

騎士団の方々がビシッと並ぶので、僕もビシッと整列する。


あれは、シトン様か。

シトン様にみんな整列しているのだ。

「狭間様はこちらです」

「え? そうなんですか?」

僕はローシュさんに促され、シトン様のところへ行く。


「本日より、狭間をこちらで預かって欲しい」

シトン様が僕を騎士団に紹介してくれる。

「狭間です。よろしくお願いします!!」

今度は騎士団の一部ではなく、全員に挨拶をする。


「彼は優秀な【空間魔法師】であり、【回復魔法】も使うことができる。役に立つことはあっても、足手まといになることはないだろう」

「おぉ……」

「空間はレアだな」

騎士団の方々はビシッとしているが、雑談が禁止されているわけではないのだろう。

少しざわつく。

そして、ロゲステロンさんの回復が終わったので、【回復魔法】についてはある程度公言しても良いということになった。

ただし【ホーリービジュア】については、秘密にしておく必要がある。


「基本的にはローシュの小隊で行動することになる」

「使用できる【空間魔法】は?」

聖騎士の一人が質問する。

「それは……」

僕が説明しようとすると、シトン様が制止する。


「詳しい魔法やスキルについては後ほど食事でもしながら本人に聞けばいいだろう。

 狭間はMPが非常に豊富で、【転移】を使うことができる、といえば優秀であるのはわかるだろう?」

コホン、とシトン様が咳払いをする。

そして、少し間を開けて話す。


「狭間の希望は外界だ。君たちに同行させてやってくれ」

「よろしくお願いします!!」

僕はもう一度お辞儀をし、挨拶する。


「「「………………」」」

あれ?

なんというか、さっきのローシュさんの部下の方々とは少しリアクションが違う。

外界へ行くという話になった途端にピリついたように思える。


「それは、いつからでしょうか?」

騎士団の方がシトン様に問いかける。

「そうだな。早ければ次回の遠征から加わってもらうつもりだ」


「それは……」

再びざわつく。

「シトン様もご存知の通り、外界は危険です。せめて一年以上は訓練に参加していただかないと」

50代だろうか。

大きな身体に立派な髭を生やしている。

鎧も他の騎士団の方々よりも若干派手に見える。


一年か……それはちょっと厳しいな。

その間ずっとフヨウを放置することになる。

そして、一年後に外界に行ったとしても、フヨウを治せる手がかりが見つかるかも不明だ。


「失礼、聖騎士団長のトロゲンです」

トロゲンさんは、僕の方に一礼し、再びシトン様のほうへ向き直るとシトン様が言う。

「そうだろうな。そこで、どうだ? 簡単な試験をするのは」


「試験、ですか」


「そうだ」

「それは、どういった?」


「方法は任せる。ただし、ミドーにやってもらおう」

「な!! ミドーですか!?」

トロゲンさんは、大きなリアクションをとる。


「そ、それは不適任かと」

「しかし、ミドーが認めれば、他の人間も認めるだろう?

 (確認したいこともあるしな)」


「俺は構わないっすよ!!」

奥から声が聞こえてくる。

いやいや、僕は置いてけぼりなんですけど。

今日は軽い挨拶じゃなかったのか?


そして一人の聖騎士の方が歩いてくる。

180cmはあるだろうが、この中ではそれほど大きい方ではない。

この世界ではあまり見ない、長髪だ。

赤い髪が腰くらいまである。

戦闘中邪魔ではないのだろうか。


「ミドーは良いそうだぞ?」

シトン様がトロゲンさんに言う。

「わ、わかりました……」


「狭間、準備はいいか?」

シトン様が僕に言う。

試験か、筆記ではないよな……

「は……」


バゴッ!!


僕の返事が終わる直前、左半身に衝撃が走る。


ズザァ!!


吹っ飛ばされた?

景色と衝撃、後から来る痛みから自分が攻撃されたことに気づく。


「はい残念。お前、失格。外界なめんな」

大盾を構えたミドーさんだ。

あの盾で吹っ飛ばされたのだろう。


「ミドー!!」

トロゲンさんがミドーさんを怒鳴りつける。

「いや、だってシトン様ご指名ですよ。

 方法は任せるって言ってましたし、俺はシトン様に従っただけです。

 ですよね?」

ミドーさんはシトン様に確認する。

「そうだ(面白くなってきたな)」

「………………」

トロゲンさんは何か言いたそうだが、こらえているように見える。


僕はこの間に、回復して立ち上がる。

結構な威力と速さだった。

不意打ちとはいえ、あんな重装備でこれだけ速いのか。


「てことで、お前、失格」

ミドーさんは僕に言う。

これはマズイ流れだ。


僕は全ての【補助魔法】をかけ、【魔影装】を発動させる。


「すみません!! もう一度、もう一度お願いします!!」

「ダァメ。 弱い奴はいらない」


「お願いします!!」

僕はミドーさんに頭を下げる。

「しつけぇな。ダメだっつってんだろ」


「スゥ……」

僕は息を大きく吸い込み、腰を深く落とし、構える。

「もう一回言うけど、弱い奴はいらない」


ザッ!!


僕はミドーさんの言うことを無視して、地面を思い切り踏み込む。

踏み込みと同時に身体を回転させ、ミドーさん目掛けて【魔影脚】をぶちかます。


バキン!!


大盾にかかとが当たり、大きな金属音がする。


「この野郎……」

ミドーさんがこちらを睨みつける。


僕は再び腰を落とし、構えをとる。

「スゥ……」

深く、深く深呼吸をする。

【魔影装】で、体内にMPを循環させる。


「お願い……します……」

新作始めました。

1話だけでも読んでください。

いや、本当に1話だけでも。

https://ncode.syosetu.com/n4168jn/

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― 新着の感想 ―
久しぶりに盛り上がってまいりました でもこの主人公、根性みせればみせるほどドン引きされるんだよなあ…… 認められるというより根負けを強制する交渉術…… 可哀想に、「お坊ちゃんに厳しさを教えてやる」的な…
またこのパターンかあ フヨウ1年後に治ってなさそう
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