161日目 異世界 後編
「魔鉱石が出たぞ!!」
ギルド内の酒場が騒がしくなる。
第六戦線の冒険者たちが、無事に帰還し、魔鉱石が出たことを知らせてくれる。
「魔鉱石ってMPを補充できる魔道具ですよね?」
「そうだ。お前、【土魔法】は使えんのか?」
「はい」
「【鉱脈探知】って【土魔法】知ってるか?」
「知ってます。レベル1ですが一応持ってますね」
「もしMP余ってるなら、行ってこいよ」
MPは少しだけあるな。
罠を仕掛けまくっているので残りは少ないが、一応まだある。
「MPは少し残ってますね」
僕はローシュさんの方を見る。
ローシュさんは、こちらを見て頷く。
ついてきてくれるということだろう。
「行ってきます」
「おぅ、俺は酒飲んで帰って寝るぜ」
◇
洞窟内に人がぞろぞろと集まってくる。
「あれは、採掘をする人たちですかね?」
「そうですね。生産職の中には、採掘に特化したものもあるようです」
なるほど。
採掘特化か。
あのピッケルを持った人たちがそうだろう。
「あっちが【土魔法】を使う人たちですかね?」
「恐らくそうでしょう」
ローシュさんはそういうと、僕を先導してくれる。
「あの、僕も【鉱脈探知】を使えるので、ついていっていいですか?」
「あぁ、【鉱脈探知】を使う人間はここだ」
「MPも残り少ないですが、よろしくお願いします」
僕は頭を下げる。
数分間待つと、魔法使いは10人程度になる。
「よし、行こう。中の魔物はある程度殲滅してあるが、全てではない。
前衛より前に出ないでくれ」
「はい」
僕たちは前衛職の冒険者に続く。
すると、徐々に魔物の死骸が増えてくる。
奥に行けば行くほど、僕が【回転ノコギリ】を設置しまくった方に行くほど、魔物が細切れになっているのだ。
「おい、こりゃひでぇな」
「魔物がミンチにされてるって噂は本当だったんだな……」
「………………」
「どうやら、最近やってきた【罠師】の人間がやってるらしい」
「おい、大丈夫かよ。罠が残ってたら危ないんじゃないか?」
「………………」
グチャ…………グチャ…………
一行は魔物の死骸を踏みながら進んでいく。
避けようにも地面に肉片が多すぎるのだ。
「これ……ただの【罠師】じゃないだろ。
人間も相当殺してるはずだ」
「だろうな……じゃなきゃこんなスキルは手に入らない」
「………………」
いや、そんなことは無いんだけど……
「おい見ろ! サイクロプスだ!」
「すげぇ……真っ二つだぞ」
「………………」
今日も【ギロチン】でサイクロプスを仕留めてある。
「おい、この辺りから始めてくれ」
冒険者から指示が出ると、みんな壁沿いにいき、手を当てている。
僕も他の人たちと同じように壁に手を当てる。
このまま【鉱脈探知】を使えばいいのか?
なんだろうか。
このスキルは【空間魔法】の【遠方認知】に似ているな。
自分の手から、直径1メートル程度の球形の範囲を確認できる。
確認といっても【遠方認知】のように視覚的なことが分かるわけではない。
ただし、金属や鉱石があるのは分かる……気がする。
そして、球形の範囲を少しずつ地中に送って、それをぐりぐりと回していく。
ダメだな。
近くには無い。
そして、スキルレベルが低いせいだとは思うが、球形の範囲を移動させることに時間がかかる。
あんまり広い範囲はできていない気がする。
◇
全然見つからない。
だけど、【鉱脈探知】のMP消費はそれほど多く無い。
残り少ないMPだったが、割と使い続けている。
「おい! あったぞ!」
奥の魔法使いの人が叫ぶ。
人がゾロゾロと集まっていく。
「じゃ、いくぞ。【採掘】!!」
バゴッ!!
ピッケルを持った人がスキルを発動させる。
洞窟に大きな横穴が開き、チラホラと金属や鉱石がむき出しになる。
【採掘】スキルは、土を消しとばしているのだろうか。
邪魔な土だけがなくなり、鉱石なんかには傷がついていないように見える。
「もっと奥だな。【採掘】!!」
【採掘】を連続で発動させ、どんどんと穴を掘っている。
きっと、手で地道に掘り続けることで習得できるスキルなんだろうな。
◇
「初日にしては、結構採れたな」
「とりあえず最初は前衛冒険者優先に分配だろ?」
「そうなんですか?」
僕は採掘組の冒険者に聞いてみる。
「まぁな。前線で戦ってる上に、ほら、これ見てみろよ」
ぐちゃぐちゃになった魔物の死骸を指さす。
「これじゃ、まともな素材手に入れてないだろ?」
「そ、そうですね」
申し訳ない……
「だから前衛冒険者優先になるんだ。
それから、この悪魔みたいな【罠師】にも分配されるんじゃないか?」
「そうなんですか?」
それって僕?
「あぁ、素材が取れない原因ではあるが、ここまで奥にこれたのは、この【罠師】のおかげだろうからな」
「おぉ……」
「なんだ? お前、殺人鬼の知り合いなのか?」
「い、いえ……」
しまった。
とっさに嘘をついてしまった。
「だよな。知り合いなら付き合いを考えた方がいい」
「………………」
新作始めました。
1話だけでも読んでください。
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