157日目 異世界
「【回転ノコギリ】?」
「はい。昨日習得したんですが、タンチさんはご存知ですか?」
異世界では、今日も第六戦線の洞窟で罠を設置しまくっている。
まず【回転ノコギリ】について、タンチさんに意見を聞いてみる。
「いや、知らねぇな。壁か? 床か? それとも天井か?」
タンチさんはどこに設置できるのかを聞いてくる。
「壁と床に設置できそうですね」
「ほぉ……一回発動してみろや」
「はい」
僕は洞窟の地面に【回転ノコギリ】を設置する。
げ……
「うわ、これ結構SP消費しますね。【アイアンアロー】の3倍近く持っていかれます」
「そりゃ期待できるな。発動までの時間は?」
「7時間です。現状【トラバサミ】の倍くらいの時間がかかりますね」
「7か……ギリギリ間に合うか」
【トラバサミ】は習得当初設置から発動まで6時間かかっていたが、今はスキルレベルが上がり3時間程度で発動できる。
【回転ノコギリ】は消費SPも発動までの時間もかなり大きい。
「発動時間と消費SPから考えると、かなり強力な罠だろうな。今日はそいつを使っていけ」
「わかりました」
◇
いや、マジで【ハイリカバリ】の魔石を作りまくっておいて良かった。
【回転ノコギリ】の消費SPが大きいので、あっという間にMPもSPも切れてしまう。
よし自作の魔石を使ってみよう。
僕は【ハイリカバリ】の魔石を握りしめ、発動させる。
うわ……
全然回復しない。
SP回復量としては、直接【ハイリカバリ】を使った場合の4割程度だ。
これは、【魔導命令】のレベルを上げる必要があるな。
まぁ器用のステータスに関しては、このまま罠をしかけまくればどんどん上がっていくだろう。
それから【ストレージ】に入れてある【ハイリカバリ】の魔石を使いまくっていくが、それでも昨日よりも早く罠の設置が終わる。
まぁSP強化の修行として考えれば、効率は良い。
もともと多い僕の全MPと、さらに【ハイリカバリ】の分でSPを消費しまくっている。
強化スピードはかなり早いだろう。
◇
「それじゃ【回転ノコギリ】ってのを見てやろうじゃねぇか」
本日も酒場でレベルアップである。
僕は木製のコップをタンチさんに向け、乾杯する。
「タンチさんの罠は、属性攻撃っぽいですけどどうやって習得したんですか?」
「昔は罠の街中で罠設置の依頼とかもあってよ」
「え? 街中に罠ですか?」
「あぁ、まぁ警備の一種だな。デカイ屋敷の宝物庫や寝室に、安全のために罠を仕掛けてくれってのがあってな」
「なるほど。そういうことですか」
「そんで、罠の中には単体で発動できねぇのがあるんだ」
「他のスキルや魔法と併用ってことですか?」
「いや、魔石だ。【魔石発動】って罠がある。ま、その名の通り、罠として魔石を発動させるってやつだ」
「おぉ、それは便利そうですね」
「そうだな。【魔石発動】の場合、他の罠と違って仕掛けるときに魔石が必要なわけだが、仕掛けた後に、俺たち【罠師】以外の人間も取り外しができる。
屋敷の主人が罠をコントロールできるってわけだ。
それで、【炎魔法】や【氷魔法】の入った魔石を罠として設置してたら習得したってわけよ」
「魔石を使った罠か……」
今日本で魔石を大量生産しているからな。
罠として使うのもアリってことか。
「俺の場合、【魔石発動】は【罠職人】てジョブで習得した。お前、当分先だぞ」
「はい! 頑張ります!」
まだ【見習い罠使い】を脱したばかりだからな。
これからだろう。
「おい、そろそろお前の罠のところにくるぞ」
「はい……」
タンチさんの罠を突破した魔物がぞろぞろとやってくる。
相変わらずすごい数だ。
おぉ?
発動するぞ!!
ギュルルルルル!!
ギュィイイイーン!!
地面からチェンソーのように回転するノコギリがせり出す。
ギュルブシュシュッ!!
ギュルッブシャ!!
ブシャッ!!
ギュルルルブッシャー!!
通り抜けようとする魔物を容赦なく切り刻む。
さらに、壁に設置したほうの【回転ノコギリ】が出てくる。
ビュイィィーン!!
ブルシャァッ!!
壁から出てきた方も、容赦なく魔物の身体を切り刻む。
ギュルブシュシュッ!!
ギュルッブシャ!!
ブシャッ!!
ギュルルルブッシャー!!
「お前……これ、えげつねぇな」
「ですね……」
ギュルブシュシュッ!!
ギュルッブシャ!!
ブシャッ!!
ギュルルルブッシャー!!
洞窟内にノコギリの回転音と魔物の断末魔が響き渡る。
血が飛び散り、魔物の臓物が散らばる。
地獄絵図だ。
ギュルブシュシュッ!!
ギュルッブシャ!!
ブシャッ!!
ギュルルルブッシャー!!
「おい、俺この前、罠には敵を弱体化させる側面もあるって話したよな」
「はい」
ギュルブシュシュッ!!
ギュルッブシャ!!
ブシャッ!!
ギュルルルブッシャー!!
「お前のはよ、完全に殺りにいってるよな」
「…………………」
ギュルブシュシュッ!!
ギュルッブシャ!!
ブシャッ!!
ギュルルルブッシャー!!
「お待たせしました。ハーブソーセージです」
タンチさんが注文していた食事が運ばれてくる。
ギュルブシュシュッ!!
ギュルッブシャ!!
ブシャッ!!
ギュルルルブッシャー!!
「おい、それお前にやるよ」
タンチさんはソーセージを指差す。
「ありがとうございます。でも、今はちょっと食べたくないですね」
ギュルブシュシュッ!!
ギュルッブシャ!!
ブシャッ!!
ギュルルルブッシャー!!
「あ! 新スキルを習得しました!!」
「おぅ、なんてやつだ?」
ギュルブシュシュッ!!
ギュルッブシャ!!
ブシャッ!!
ギュルルルブッシャー!!
「【ギロチン】です」
「……………………」
ギュルブシュシュッ!!
ギュルッブシャ!!
ブシャッ!!
ギュルルルブッシャー!!
【ギロチン:Lv0】New




