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155日目 異世界 後編

「おい小僧、終わったか?」

しばらくすると、タンチさんが戻ってくる。

「いえ、もう少し時間がかかります」


「ちんたらやってんじゃねぇよ。

サボってたんじゃねぇだろうな」

「違います。

狭間様は【リカバリ】が使えるのです。

SPを回復しながら【トラバサミ】を発動しているのです」

ローシュさんがフォローしてくれる。


「ほぉ……(あの位置からここまで【トラバサミ】を設置してきたってことか?)

おい小僧。

【トラバサミ】はいくつ設置できたんだ?」

「わかりません。

1000個はいってないと思うんですが……」


「はぁ!?」

タンチさんは驚き、ローシュさんの方をみる。

ローシュさんは無言でうなずく。

「確認してみりゃわかるこったな」

タンチさんはそう言うと、天井に何かを放り投げる。

バゴッ!

あれは魔石か?

タンチさんが投げたものは天井にめり込むが、暗くてよく確認できない。

「よし、帰るぞ」

「はい」











洞窟の外に出ると、冒険者たちが装備の手入れなどをしている。

これから魔物が増える時間ということだから、準備をしているのだろう。

ショーンとクラールもこれから洞窟へ入るということか。


僕とタンチさん、ローシュさんは逆に洞窟から出て、木製の建物へ入っていく。

ギルドだ。

少し大き目のテーブルへ座る。

タンチさんは、軽く手を上げて店員さんを呼ぶ。


「これとこれ、あとは適当なツマミを頼む。

お前らも頼め。

おい木偶の坊、どうせシトン様から金が出るんだろ?」

「はい。報酬はきちんと支払わせていただきます」

タンチさんにローシュさんが答える。


そうか。

シトン様からタンチさんへの依頼だもんな。

「じゃあ酒を頼めよ」

「お酒飲むんですか?」


「当たり前だろ」

「でも狩りってこれからですよね?」


「俺のような【罠師】はもうやることなんてねぇんだよ。

おい木偶の坊、お前も飲めよ」

「いえ。私は護衛がありますので」

「ケ、つまんねぇ野郎だな。

おい小僧、お前は飲むんだろ?」

マジかよ。


ローシュさんが飲まないなら僕が飲むしかないだろう。

「はい。じゃあいただきます」











ほどなくして料理とお酒が運ばれてくる。

「お疲れ様です」

飲み物が運ばれてきたので、僕が乾杯をタンチさんに促す。

「おい、木偶の坊。座れよ」

タンチさんは、ローシュさんを座らせようとする。

料理と飲物が運ばれてきたが、ローシュさんは僕の後ろで立ったままなのだ。


「いいえ。私は護衛がありますから」

「ふざけんな……おめぇみてぇなのが突っ立ってたら酒がまずくなるだろうが。

座れよ」

確かに、僕も食事をしにくい。

「お酒を飲まなくても、せめて座って一緒に食べません?」

僕もローシュさんに座るように言う。


「いえ。護衛の任務がありますから」

マジか。

頑なだな。

ここで立たれたままだと、正直食べにくい。

「では、私は少し離れていましょう」

ローシュさんは空気を読んだのだろうか。

立ったまま離れた位置に移動しようとする。


「おい。座れよ」

しかし、タンチさんも引かない。

「何度も言いますが、護衛がありますので」


「雑魚騎士が……お前は座った程度で護衛ができなくなるのか?」

タンチさんは、フォークをローシュさんに向けて言う。

「……………………」

しかし、ローシュさんはタンチさんを無視し、後方へ移動する。

「ケ、勝手にしろよ」


ゴトッ!


タンチさんはテーブルの上に、大きな球形のアイテムを置く。

水晶玉のようなものだ。

「こいつを見な。

 そろそろ魔物が出てくんだろ」

「おぉ!! 洞窟の中が写ってますね!!

 魔導具ですか!?」

水晶玉の中には、洞窟内部が写っている。

上から見ている映像だ。


「おぅ、見るのは初めてか?」

タンチさんは苦笑いしながら聞いてくる。

あれ?

てっきり、うるせぇ黙って見とけとか言われると思った。

「はい! これってさっき洞窟の天井に投げていたものですか?」


「そうだ。

 よくわかったな。

 俺が投げた魔石が天井にめり込んでる。

 そこから見たものがここに映し出されるわけだな」

「それは凄いですね」

遠隔のカメラのようなものだ。


「これを見ながら酒を飲むのがうめぇんだよ」

タンチさんはグラスをこちらに向けてくる。

「あ、お疲れ様です」

僕はグラスをタンチさんに向け軽く乾杯する。

これで良いんだろうか?

仕事の後上司と飲むとしたら、こんな感じなのかな?


「おい小僧、ジョブは【見習い罠師】にしとけよ」

「はい。そうですね」

ジョブは【見習い罠師】のまま変えていない。

ここでジョブレベルを上げておけってことだろうか。


「いいか、罠に敵をハメるときにジョブ経験値が入る。

 その経験値は遠方、たとえ狩り場にいなくても入るってわけだ。

 ま、つまりここでも経験値が入る」

「えぇ!! 本当ですか!?」

それが本当なら凄いことだ。

ここで飯食ってレベルが上がるってことか?


「ただし、罠によるジョブ経験値は、【罠師】系のジョブでしか入らない。

 今他のジョブに変えたところでその経験値は取得できないわけだ」

「なるほど。勉強になります」


「何が勉強だよ……」

タンチさんはそう言いながら、お酒をグビッと飲む。


そして、タンチさんが水晶に触れ、指を動かすと、映像も横にスライドする。

「おぉ! これって、周りも見えるんですか!?」

「そうだ、見りゃわかるだろ」

先程からタンチさんは、セリフとは裏腹に苦笑いをしている。


「小僧、そろそろ来るぞ。よく見とけ」

「はい」


水晶の奥の方から魔物がぞろぞろと出現してくる。

「うわ……凄い数ですね」

「まぁな。毎日これじゃ、人間なんて住めたもんじゃねぇよ」


素早い魔物が先行してくる。

狼系の魔物だろうか。

ところが、途中で極端に速度が落ちる。

「これってタンチさんの?」

「そうだ。だいたい最初に来る魔物は動きが速いヤツだからな。

 地面に【とりもち】って罠をしかけてある。

 【とりもち】に威力はほとんどねぇが、魔物の足に貼り付いて動きを遅くし、さらに他の罠にもかかりやすくする」


「なるほど」

「相手の魔物がわかってりゃ、それに合わせた罠を使ったほうが有効ってわけだな」


ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!


さらに魔物が進んだ先にでは、壁から矢か針のようなものが飛び出て、魔物にダメージを与えている。

「あれは矢ですか?」

「そうだな。今度は【アイアンアロー】、壁に設置する系の罠だな。

 さっき【とりもち】にかかったことで、【アイアンアロー】が有効になる」


その後も魔物は次々に罠にかかっていく。

「凄いですね。罠について一つ一つ聞いてきたいですが、きりがないですね」

「まぁな。お前もここで罠使ってりゃ、いろいろ覚えてくるぞ」

凄いな。

まるで罠コンボだ。

氷などの属性系の矢も放たれている。


「酒がうめぇな」

タンチさんが悪役のような表情で笑う。


「おい、お前ももっと食って飲めよ」

「すみません、今ちょっとこの映像から目が離せなくて」


「は……真面目な野郎だな」

タンチさんは機嫌が良さそうに酒を飲む。


「そろそろお前のとこだろ」

「はい、もうすぐだと思います」


ガシャン!


「お!かかりましたね」


ガシャン!

ガシャン!

ガシャン!


先頭の魔物から、つぎつぎに【トラバサミ】にかかっていく。

大した威力は無いようだし、もちろん捕獲もできない。


ガシャン!

ガシャン!

ガシャン!


「ダメですね。【トラバサミ】なのに捕獲はできてません」

「いや……」


ガシャン!

ガシャン!

ガシャン!


「少しずつだが着実に脚にダメージがいってる」


ガシャン!

ガシャン!

ガシャン!


「悪くない」


ガシャン!

ガシャン!

ガシャン!


「脚にダメージがいくということは、動きが確実に鈍るからな。

 外の冒険者達が、格段に戦いやすくなる。

 罠っていうのは、敵を仕留めるのもそうだが、冒険者たちのサポート的な意味合いもある」


ガシャン!

ガシャン!

ガシャン!


「しかし、すげぇ量だな」


ガシャン!

ガシャン!

ガシャン!


「お前、本当に1000個近く【トラバサミ】仕込んだのか」

「はい。途中から数えるのはやめました」


ガシャン!

ガシャン!

ガシャン!


「おい、レベル確認してみろ」

「うわ!!」

僕は思わず大きな声を出してしまった。

レベルが大幅に上がっている。


「レベルが上がりまくってます」

「洞窟の出口はまだ先だからな。まだまだ上がるぞ」












なんと今日一回の狩りで【見習い罠師】がレベル30でカンストした。

そして【罠師】のジョブを習得し、それもすでにレベル33である。

「おい、そんで新しい罠は習得できたのか?」

「はい。【アイアンアロー】が習得できました」


「いいじゃねぇか。地面に【トラバサミ】、壁に【アイアンアロー】を仕掛ければ、連続でダメージを与えられるぞ」


「はい、ありがとうございます!」

「それだけか?」


「あとは【毒ガス】を習得しました」

「あぁ〜……そうか」

タンチさんはなんだか微妙なリアクションをする。


「洞窟内って密閉されていますし、【毒ガス】は有効じゃないんですか?」

「いや、ダメだ。ダメージは与えられるんだがな。

 素材が全部毒にやられちまう」


「なるほど……」

「絶対使うなよ。外の冒険者にボロクソ言われるぞ」


「はい……」


狭間圏はざまけん

【罠使い:Lv33 New ↑+33】

HP:368/408【罠使い】:-40

MP:41/1233【罠使い】:-40

SP:62/526+6【罠使い】:+116

力:72【罠使い】:-20

耐久:132【罠使い】:-20

俊敏:74【罠使い】:-20

技:67【罠使い】:-20

器用:133+4【罠使い】:+53

魔力:89【罠使い】:-20

神聖:155+1【罠使い】:-20

魔力操作:207

【空間魔法】Lv105+1

【転移】Lv43+1

【罠】Lv7+7

【トラバサミ】Lv11+11

【アイアンアロー】NewLv0

【毒ガス】NewLv0

クラールがカッコよすぎ!!

TOブックスの書き下ろしSSはジーン(ショーン)とクラールの出会いについてです。


2巻が出ます!

是非購入をお願いします!

【12月9日発売】~異世界転移したと思ったら日本と往復できるらしい。異世界で最弱、日本では全身麻痺だが、魔法が無限に使えるので修行し続ける~


https://tobooks.shop-pro.jp/?pid=177201006

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毒手に続いて毒繋がり 主人公、毒好きすぎだろ
[気になる点] ステータスのジョブ補正の表記が見習いになってるのはミスですか?
[一言] この短時間で2巻早いですね3巻以上出る事をお祈りします 罠士は罠士で楽しそうなのがいいですね
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