151日目 異世界
「転移魔法陣ですか?」
「そうそう、キミも使ったことがあるだろう?」
「はい」
「あれももちろん魔道具なんだ。だけどあれは僕たちが作ったものじゃないんだよ」
「そうなんですか?」
「そりゃそうさ。僕たちの技術じゃ無理だよ。
昔から転移魔法陣があってさ。その周りに街ができていったんだ」
「なるほど……確かに、消費MPが凄く少ないのにかなり離れた場所に【転移】できますよね」
「そう。キミ、【空間魔術師】なんだろう?」
「はい」
「じゃ、【転移】は当然使えるよね?」
「はい、使えます」
「キミの【転移】って一回で最大どれくらい飛べるの?」
「えっと、10kmくらいは飛べると思います」
「おぉ、やるね。それってMPも結構消費するでしょ?」
「はい。距離に比例し、【空間魔法】や【転移】のスキルレベル、魔力操作に反比例していると思います」
「そうそう。よくわかってるね。じゃぁさ、仮に100km飛べるとしたらMP枯れちゃうよね?」
「えっと……はい」
実はそれくらいならギリギリMPは残る。
しかし、話の主題ではないし、MPが異常にあることもあまり言いたくはない。
シトン様にも、あまり自分のステータスについてはしゃべるなと言われているし。
「ふーん……まぁいいや。でもさ、実際転移魔法陣を使って100km移動してもMPの消費なんてたかが知れてるよね」
「はい……それって……」
「そう。この転移魔法陣を作った【錬金術師】器用や【魔導合成】のレベルが我々の数千倍の可能性があるってこと。」
「な!!」
数千倍ってそんな馬鹿な話があるのか?
「だってさ、考えてごらんよ。
実際の【転移】の消費MPのおそらく0.1%くらいだろう?
そんなふざけた【錬金術師】なんて存在しないのよ」
「確かに……」
なんてこった。
便利だと思って使っていた転移魔法陣が、そんな大層な代物だったとは。
「しかし、それだけの技術が放置されているんですね」
「そうそう、古代の魔道具はさ、謎が多いわけよ。
古代文明が滅んだのか、それとも外界には古代文明以上のものがあるのか。
我々が住んでいる内界なんて、世界のごく一部なのかもしれないよね」
確かに、外界がどれくらい広いのかは全くの未知だ。
「今日の勉強はこれくらいにしておこう」
「はい! ありがとうございました!」
僕は局長にお礼を言って錬金塔を後にする。
◇
「さて、2つ目の条件だが、これは私からの条件というわけではない」
「はい」
なんだろうか。
「ギルド貢献度をできる限り上げてほしい」
「了解です。やっぱり最低限この数値を上げておかないといけないんですね……」
基本的にパーティを組む場合、ギルドカードを見せることになる。
そのギルドカードは大まかなステータスとギルド貢献度が記入されている。
ギルド貢献度というのは、ランクのようなものだ。
これまでダブルヘッドの討伐、武闘大会での回復、戦線での戦いで少しずつ上げてきた。
今のギルドランクは22だ。
「あの、どれくらい上げればいいんでしょうか」
「そうだな……最低50は必要だ。でなければ、キミの同行に騎士団が納得しないだろう」
「わかりました。でしたらやはり戦線で戦ったり回復したりするのがいいですよね?」
「それなんだが、キミは確か【見習い罠使い】のジョブを習得していたな?」
「はい。あります。使ったことはありませんけど……」
「そうか。それならば、第六戦線へ行ってもらいたい」
「第六ですか」
確か、今ショーンとクラールが第六戦線で修行をしているはず。
このままだと、強さに差がつけられそうだったんだよな。
これはちょうど良い機会だ。
こっちも第六戦線行けば、またみんなと修行ができる。
「そうだな。ただし、ジョブを【見習い罠使い】にし、器用のステータスを上げてもらおう。そうすれば、魔石の合成が加速されるだろう?」
「なるほど」
でもなぁ。
僕罠のことはあまりわからないんだよな。
「あの、罠って設置するまでに時間がかかりますよね?」
確か【トラバサミ】というスキルを習得し、使ったことがある。
SPを消費し、発動までに6時間もかかるんだ。
いまいち使い所がわからないんだよな。
「問題ない。第六戦線で会ってもらう人物がいる。彼にいろいろ聞くといいだろう。
手紙を書いておくから、キミは器用が上がる装備を整えると良い。
準備ができるまでは、これまで通り【転移】の魔石補充と、魔石の合成をしてもらう。
ローシュ、薬師棟を案内してやってくれたまえ」
「はい。承知しました」
◇
「あらあら、ローシュ様。ようこそいらっしゃいました」
僕はローシュさんの案内で、薬師棟にやってきた。
器用の上がる装備を調達しに来たのだ。
本来装備品は魔導具の部類に入るので、錬金棟だ。
しかし、装備品は装備品でも、洋服や指輪などの装飾品は薬師棟なのだとか。
薬師棟には20代か30代くらいのきれいなドレスを着た女性がいた。
「私は護衛です。今回はこちらのハザマ様の器用の上がる装備をお願いしに参りました」
「あらぁ……ローシュ様だわぁ」
「銀仮面様ではありませんこと?」
ドレスを着た女性たちが次々とやってくる。
「……………………」
凄いな。
ローシュさんは全ての女性を無視している。
一体あの目線はどこを向いているのだろう……。
「あら、この坊やの衣装を作ればいいのね?」
「はい、お願いします!」
「うふふ……」
「え?」
何やら僕の身体を触ってくる。
「サイズ確認よ、サ、イ、ズ」
「は、はぁ……」
なんだか緊張してしまうな。
僕は女性に慣れていない。
「それじゃ、こっちにいらっしゃい」
「え、あの……」
僕はローシュさんのほうを見る。
ローシュさんは、着飾った女性たちに引っ張られている。
「ローシュ様はこちらへいらして」
「せっかくですから、ローシュ様はお茶でもしましょう」
「いえ、私は護衛がありますので」
ローシュさんは、女性たちを無視して僕のあとについてくる。
しかし、ここの女性は強引だな。
3人がかりでローシュさんを引っ張っている。
しかし、ローシュさんは彼女たちを全員無視して僕についてくる。
ズルズルズル……
結果的に、ローシュさんが3人の女性をひきずって僕についてくるのだが、異常だよな……これ。
◇
「だいたいサイズはわかったわ。できあがったら取りに来なさい」
「は、はい……」
散々身体を触られた……。
途中メジャーを使って測っていたのだが、それで全てわかると思う。
あんなに触られる意味はあったのだろうか。
「うふふ、顔が真っ赤よ」
「は、ははは……」
僕は愛想笑いをしながら、そそくさと薬師棟を出る。
ローシュさんも僕の後についてくるわけだが、ローシュさんは薬師棟の着飾った女性たちをひたすら全無視している。
なんだか、ここの女性はちょっとおかしくないだろうか。
積極的すぎるというか……。
「参りましたよ……ローシュさんは凄いですね」
「えぇ、まぁ薬師棟の女性も多少雑に扱っても問題はありません」
「え? そうなんですか?」
「はい。【薬師】の方々ですからね。当然不老薬を使っています」
「不老薬ですか。聞いたことがあります」
サワナ様が使っていた薬だ。
「ですから、実際は我々の親世代よりも歳上です。彼女たちから見れば、我々も子供のようなものなのでしょう」
「なるほど……なんだか納得がいきます」
なんというか、昭和のお母さんみたいな図々しさが全面に出ているのだ。
「ちなみに、錬金棟の老人たちと、薬学棟の彼女たちはあまり仲がよくありません」
「あぁ……それもなんとなくわかります」
狭間圏
【錬金術師:Lv39】
HP:381/408【錬金術師】:-27
MP:11/1215【錬金術師】:+118
SP:31/517【錬金術師】:-27
力:69【錬金術師】:-19
耐久:132【錬金術師】:-19
俊敏:72【錬金術師】:-19
技:65【錬金術師】:-19
器用:117+2【錬金術師】:+98
魔力:89
神聖:154
魔力操作:201+1【錬金術師】:+49
【空間魔法】Lv100+1
【転移】Lv38+1
【錬金術】Lv21+1
【魔導合成】Lv10+2
【予約開始】【9/1発売】二拠点修行生活~異世界転移したと思ったら日本と往復できるらしい。異世界で最弱、日本では全身麻痺だが、魔法が無限に使えるので修行し続ける~
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