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150日目 異世界 後編

マジかよ……

錬金棟に入ると、広間で老人たちが麻雀をしている。

僕は、錬金術の研究をしている人たちが互いに意見を出し合ったりしている、と勝手にイメージをしていた。

ところが、これはなんだろうな。老人ホームのように見える……。

「おぅい! 若いの連れてきたぞ! 中を見学したいんだとよ!」

一瞬、ジャラジャラという音が止まる。

「次、ハコテン(持ち点0以下で負けること)になったヤツが案内してやれ」

再びジャラジャラという音が鳴る。

えっと……待っていればいいんだろうか……。



「クソ! あのジジイ! カンチャン待ちしやがって!」

どうやら1人が負けたようだ。

あの老人が案内してくれるのだろうか。

「あの状態でカンチャン待ちはありえねぇだろうが……」

何やらぶつくさ言っている。

「案内を頼んでもよろしいでしょうか?」

ローシュさんが言ってくれる。

「んあぁん?」

老人は非常に機嫌が悪そうだ。


「狭間様がお待ちです。案内をお願いします」

1ミリも動じないローシュさん。

頼りになる護衛だ。


「チッ! ったく、俺だってテンパイだったんだぞ!」

「狭間様がお待ちです。案内をお願いします」

老人の愚痴を無視するローシュさん。

頼りになる護衛だ。


「クソ! もう一局だ!」

「狭間様がお待ちです。案内をお願いします」

ガッ!

え?

なんとローシュさんが老人の頭を鷲掴みにして持ち上げる。

ちょ!!


「いでで! わかった! わかったから離せ!」

「では、案内をお願いします」

「これだから銀仮面は……」

老人が不機嫌そうに言う。

ローシュさんは顔色1つ変えずにいる。

いきなり頭を鷲掴みにするとか、ちょっと怖い。


「ここの老人は、多少雑に扱っても問題ありません」

僕が驚いていると、ローシュさんが教えてくれる。

「は、はぁ……」

なんかおかしくないか?



僕たちは二階へきた。

「ほら、若いやつの仕事場は基本ここだな。

見てみろ、箱にちっさい魔石が入ってんだろ?

これをひたすら【魔導合成】で大きくして、魔法を入れられるようにすんだよ」

一階の老人たちとは違い、黙々と作業を続けている。

若いとは言っても、30〜40代だろう。

【錬金術】はMPが必要だからな。

ある程度の年齢でMPが高くないと務まらないのかもしれない。

異世界でも、30〜40代の人が苦労しているのだろうか……。


「もし、僕が仕事をもらうとしたら、ここでしょうか?」

「あんたの器用のステータスとスキルによるんじゃないか?

ある程度器用が無いと魔道具の作成は無理だからな。

器用の低い若いやつは、ここで下積みだ」

あぁ、それならここだな。

僕は器用のステータスがそれほど高くない。

一時期サワナ様に言われて、【薬師】のジョブを使っていたが、それほど生産系のスキルは使い込んでいない。


「実際に魔石に効力を与える【魔導命令】は器用のステータスが無いと、威力が減衰するからな。

魔道具も一緒だ。基本的に作った者の器用のステータスが依存すんだよ」

「魔道具を作っているところも見てみたいです」

「あんた、シトン様が連れてきた人だろ?

ここの局長に話してみればいいんじゃないか?」

「錬金棟の局長ですか?」

「そうだよ。今日も地下で研究してんじゃないのか?」

地下もあるのか。

「ぜひお話してみたいです」

「そうか、そうか。じゃ、地下室行ってきな。

俺はこれで……」

ガッ!

そそくさと去ろうとする老人の頭を、ローシュさんが鷲掴みにする。

「それでは、地下室への案内をお願いします」

「いでで、わかった! わかったから離せ!

クソ……これだから銀仮面は……」



ギィ……

老人がノックもせずに、地下室の分厚い扉を開ける。

おぉ……

中は本棚やびっしりと壁を埋めており、様々な本や試験管がおいてある。

錬金術をするところ、として想像通りだ。

「いきなり開けちゃっていいんですか?」

「は……局長がここにいるときは、どうせノックなんか聞こえねぇよ。

おい! 局長! 若いの連れてきたぞ!」

「ほぉ……」

中には老人が数名いて、中央の老人が返事をする。

白いひげと白い髪を長く伸ばしており、これまたいかにも研究者といった風貌だ。


「狭間です。よろしくお願いします!」

僕は頭を下げて挨拶をする。

「ほぉ、キミがシトン様がいってた【空間魔法】の使い手?」

「はい。魔道具についていろいろお聞きしたかったのですが……」

一階の老人たちは、麻雀をしていてそれどころではなかった。

「魔道具について、教えていただこと思ったのですが、みなさん取り込み中だったもので……」

僕は苦笑いで事情を説明する。

「キミは、あの麻雀を見て、質問をしなかったのかな?」

局長がひげを触りながら質問してくる。

「え? えぇ、まぁ……」

「キミ、あれが娯楽だって知ってた?」

げ……

そうか、何も知らない人が見たら、あれが魔道具の研究だと思うかもしれない。

「あぁ……なんとなく。みなさんの雰囲気を見て……」

「ふーん……シトン様も面白い人を連れてきたね。

キミ、本当にただの【空間魔術師】なの?」

「え……は、はい」


まずいな。

局長鋭すぎだよ。

「局長、そういった質問はおやめください」

ローシュさんが割って入ってくれる。

「まぁいいよ。面白そうだし。

それで、なにか聞きたいの?」

「あの、できればあまり多くの人には聞かれたく無い内容なのですが……」


僕が聞きたいのは、タイラが使っていた指輪についてだ。

指輪についてなにか分かれば、フヨウを目覚めさせることができるかもしれない。

そしてその魔道具は、人の命を奪うようなものだ。

あまり公にしないほうが良いだろう。


「ふぅん。ま、そういうことならこっちにおいで」

「はい」

僕は局長のあとについていく。

地下室にはいくつもの部屋があり、そのうちの一室に案内される。

「あのさ、この中央東っていうのは、基本的に全部結界がはってあるんだ。

だから、よっぽど高ステータスや高スキルが無い限りは安全なんだよ。

さらに、この地下室は特別でね。

まぁこの部屋であったことは誰にも聞かれることは無いよ。

シトン様のところもそうだけどね」



僕は奥の部屋に入り、タイラが持っていた指輪について話をする。

「人の命を使った魔道具ね……」

「なにかご存知ありませんか?」

「うーん……まぁ、魔道具なんて僕が知らないもののほうが多いし」

「そうなんですか?」

「そうだよ。意外?」

「そうですね。中央東って、中心というか、中枢的な施設だと思っていましたので」

「そうだよ。それは間違いないね。だから、僕たちが作れる魔道具の限界はここで合ってるよ」

「それでも、局長が知らない魔道具のほうが多いんですか?」

ここが中枢で、魔道具の限界なのに、その局長が知らない魔道具のほうが多いのか?


「キミさ、外界って分かる?」

「はい。人が生活できない領域ですよね」

「そう。外界にはさ、遺跡なんかがあってね。人はいないんだけど、結構魔道具が見つかるんだよ。一階で魔道具を見ただろう?」

「あれって、魔道具なんですかね……?」

「そうだよ。麻雀っていう魔道具」

いや、麻雀は魔道具じゃなくね?

「さっきも言ったけどさ。基本的にここって結界が張ってあって、【空間魔法】は使えないんだ。まぁ魔力操作や【空間魔法】のレベルが高いと、使えちゃうんだけど。それで、この部屋やシトン様の部屋は、さらに強めの結界が張ってあるんだ」

「なるほど」


「キミさ、麻雀が娯楽だと思ったって言ってたけど、半分は正解ね。麻雀ていうのは、自分の手札を見られるとゲームにならないんだ」

「そうなんですね」

まぁ、少しは知ってるんだけど。

「そう。だから、あの麻雀卓には、結界が張ってある。【空間魔法】で相手の手札を見ようと思っても、できないんだ」

「それで、魔道具という扱いなんですね」

「それがさ、その結界が、シトン様の部屋や、この部屋よりも強いんだ」

「えぇ!?」

ウソだろ。

麻雀卓にそんな強い結界ってクソ無駄じゃないか。

「娯楽なのに、我々が作れる結界の限界を越えてるんだ。この意味わかる?」

「ここの魔道具が遺跡の娯楽以下ってこと……ですか?」

「そうそう。キミ、物分りが良いね。だから結局、僕の知っていることなんて限られてるって話」

マジかよ。

遺跡の魔道具が半端ないってことはよくわかったけど……


「まぁここで魔道具の研究するのも大切なことだけど、ここで研究するだけじゃ解決できるような問題でも無さそうだね」

「……………………」

どうしようか。

タイラ持っていた血鎖(けっさ)指輪(ゆびわ)について、早くも手詰まりだ。


「あの、どういった経緯で外界の遺跡に行ったんですか?」

「そりゃ、調査と開拓だよ。ここの騎士団は最強だからね。戦線以外にも、外界に行って情報を持ち帰ってくるんだ。魔道具も持ち帰るものの1つだね」

それだ!

「あの、僕がそれに参加することってできないんでしょうか?」

「さぁね。僕に権限は無いよ。シトン様に聞いてみれば?」

「はい! 貴重な情報ありがとうございます!」

「いいよ、いいよ。キミ、面白そうだから、またおいでよ。僕の知らないこと、知ってそうだし」

「はい! ありがとうございます!」

僕は錬金棟を出て走り出す。



「ふむ……いいだろう。しかし、今すぐに、というわけにはいかんな」

「できるだけ早いほうがいいんですが……」

フヨウは寝たきりだ。

解決できるなら、できるだけ早いほうが良い。

「狭間くん、君の本来の仕事はロゲステロンを治すことだ。

(お前を外界に連れて行ってもデメリットしか無い)」

「そうですね……」


「それに、外界は危険が多い。

治療の途中で君が死んでは困る。(これは本当に困る)」

「はい……」


「しかし、だ。ロゲステロンを治してくれれば話は別だ。

それに、今後の君には大いに期待している。

(恩を売っておくのも良いだろう)

いくつか条件を与えるので、それをクリアしたら、外界へと行く許可を与えよう」

「はい! ありがとうございます!」

条件てなんだろう……

しかし、どんな条件だろうと、外界へ行けるのであれば、頑張るだけだ。


狭間圏はざまけん

【空間魔術師:Lv40】

HP:378/408【空間魔術師】:-30

MP:34/1214【空間魔術師】:+100

SP:21/517【空間魔術師】:-22

力:69【空間魔術師】:-22

耐久:132【空間魔術師】:-22

俊敏:72【空間魔術師】:-22

技:65【空間魔術師】:-22

器用:111

魔力:89【空間魔術師】:+40

神聖:154

魔力操作:200+2【空間魔術師】:+100

【空間魔法】Lv99+1

【魔力庫】Lv131+1

【転移】Lv37+1

【ストレージ】Lv94+1

【魔影装】Lv50+1

【魔影脚】Lv16+1

【書籍化・コミカライズ決定】

書籍化、コミカライズが決定しました。

応援よろしくお願いします。

購入していただけると、原作執筆の圧力になりこちらの更新が早くなります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「狭間くん、君の本来の仕事はロゲステロンを治すことだ。 (お前を外界に連れて行ってもデメリットしか無い)」 奴隷扱いと変わらないな。治療代を貰っていないようだし。
[気になる点] 中央東は中央棟じゃなくて中央東で合ってるんですか? あと、シトンの心情はちゃんとモノローグの様に書いた方が読みやすいです。というか、今の()の書き方はものすごく読みづらいです。
[良い点] エタったと思っていました [気になる点] タイトル…
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