134日目(異世界)後編
ゆっくりと、音を立てずに門の内部に入っていく。
なんか、全然気づいてないみたいだな。
あっけなく門を通り過ぎる。
「それで、どうするんですか?」
ガンビさんに聞かれる。
「とりあえず仲間と合流したいんですよね」
最初に僕の無事をみんなに伝えたい。
「仲間は城にいるはずです」
「行ってみましょう」
◇
僕たちは城周辺に到着する。
「ちょっと調べてみますね」
ガンビさんがうなずくと、僕は【パーセプション】を細長く展開し、僕たちが宿泊していた場所を確認する。
「いませんね……」
部屋には誰もいないようだ。
……ん?
おかしい……
「変ですよ。
僕の仲間がいない以外にも、人が少なすぎます」
「どちらにしろ、お仲間がいないのであれば、一度自分たちの街へ戻ったほうが良いのではないですか?」
「そうですね……」
ショーンやクラールがどこへ行ったのかも気になるけど、とにかく今回の件をイヴォンさんに報告したほうがいいだろう。
「よし、アインバウムへ戻って報告してきます」
「ではポータルのほうへ向かいましょう」
◇
ガンビさんと一緒にポータルへ移動する。
なんだあれ?
ポータルの周辺にはいつもより多めの兵士がいる。
それから、転移魔法陣の上に大きな金属が置かれている。
これじゃポータル使うことなんてできないよな……
「封印されていますね」
「封印?」
「上の大きな金属を見てください。
あれはただの金属じゃないですね。
魔法の効果を弱める魔道具です」
「ポータルは使えないってことですよね?」
「そうです。
こちらからポータルを使うこともできませんし、どこか別の場所からあのポータルへの転移もできません」
「まいったな……」
「有事の際、例えば魔物が大量発生するとか、戦争が起こるとか、そういったときにのみポータルの使用制限をするんです。
狭間さんの言っていたように、城の兵が少ないのであれば、何らかの重要な事が起きているのだと思います」
「情報収集する必要がありますね」
「私はマヤシィナの友人たちにあってきます。
無事も伝えたいですし、なにか情報を聞いてきますよ」
「僕の方でも、 【空間魔法】で兵士たちの会話を聞いてみます」
◇
しばらくして、ガンビさんと合流する。
「どうでした?」
「どうやら、タイラ様が兵を引き連れ新緑の覇者を討伐しに行ったようです」
「こちらも同じ情報ですね。
兵士や城の人の会話でもその話が出ていました」
「タイラ様と城の兵士が戻ってくるまではポータルは使えないと考えたほうがいいでしょう」
「……そうですか」
「それで、お仲間の情報は何か得られましたか?」
「いえ、でも多分一緒に討伐に行っていると思います。
仲間の一人の目的が、新緑の覇者の討伐でしたから」
「なるほど、ではお仲間との合流もタイラ様の帰還後ということですね」
いつ帰ってくるかもわからないんだよな。
それにフヨウの敵である新緑の覇者を相手に無事に帰還できるのだろうか。
それから、あのソーミルとかいう賊たちとマヤシィナの関係もあるし……
「狭間さんがよければ、先日助けていただいた者たちと一緒に隣町のポータルで帰還するのはどうでしょうか」
「そうですね……」
確かに、このままここにいても見つかるかもしれないし、早くイヴォンさんに状況を知らせたほうがいい。
だけど、このままショーンやクラール、フヨウを放っておいてもいいのだろうか。
賊のアジトがマヤシィナの地下にあった以上、彼らと無関係な可能性は限りなく低い。
だとしたら、みんなが危険だ……
「いえ、僕は仲間を追ってみます」
「一人でですか?」
「はい……」
「マヤシィナ周辺の魔物は強力です。
あのソーミルという者を倒したほど強いお方でも、一人ではMPやSPが枯渇しますよ」
「大丈夫ですよ。
昨日たっぷり魔石をもらいましたからね。
MPを節約したまま行動できそうです」
「しかし……」
ガンビさんが心配してくれているが、大丈夫だと思う。
魔石を使いまくっても、僕が使える魔法なら日本で補充ができるからだ。
「では、せめてこちらをお持ちください」
ガンビさんが自分の手荷物から僕に渡してくれる。
「私も同行したいところですが、おそらく足手まといになるでしょう。
これは、周辺の地図と、魔物の弱点属性です。
マヤシィナの密林には、火属性が弱点の魔物が多くいますが、弱点が無いものもいます」
「ありがとうございます」
よし、できるだけ急いでみんなのところへ行こう。
マヤシィナ周辺の密林へ来た。
以前狩りをしたときには、このあたりから魔物が出現し始めたんだよな。
ぁ、いた。
エルダーライノ、でかいサイの魔物だ。
以前は、マヤシィナの騎士の方々と周りを囲んでボコボコにしたヤツだ。
僕は後衛として見ていただけだけど、どれくらい強いのだろうか。
魔物は気づいていないので、とりあえず【魔影装】で近づき、攻撃してみる。
ザッ!
【魔影脚】!
僕は、エルダーライノの真横まで移動し、一番ダメージが大きくなりそうな顔面に【魔影脚】を打ち込む。
バギッ!
「ブオゥッ!」
エルダーライノは唸ると、身体を回転させ尻尾で攻撃してくる。
ブワッ!
「よっ!」
僕はそれをかわし、エルダーライノの背中に乗る。
あの巨体から繰り出される攻撃はかなりのダメージになりそうだけど、あのスピードなら【魔影装】があればあたることはない。
魔物相手よりも、対人戦で俊敏が鍛えられたからな。
「はあぁぁ!」
背中に乗ったまま【魔影連撃】を打ち込む。
ドスドスドスドスッ!
「ブオゥブオォォ!」
エルダーライノは苦しそうに走り出す。
ドガドガドガッ!
ザッ!
僕は背中から飛び降り、構える。
これ、完全に火力不足だな。
おそらくエルダーライノならば、ソロで倒せるだろう。
しかし、僕の攻撃力だと一体倒すのにものすごい時間がかかる。
しかも、【魔影装】はなかなか燃費が悪い。
今まで対人戦で重宝はしてきたが、ソロで狩りをするとなると僕のMPでも割とすぐに尽きてしまう。
今度は【魔影装】を解除し、日本で上げまくった【補助魔法】を中心にかけてみる。
【パワーストライク】(力強化)
【プロテクト】【ハイプロテクト】(耐久強化)
【バイタルエイド】【ハイバイタルエイド】(HP強化)
【アジリティエイド】【ハイアジリティエイド】(俊敏強化)
【ヒットストライク】(技強化)
前衛のステータスが上がるものをかけていく。
「はっ!」
バギッ!
ぉ、ただの突きなら【魔影装】だけのときよりも、若干威力が高いか?
しかし、この状態だと【魔影脚】や【魔影連撃】を使うことができない。
【魔影装】を使っていないからだ。
そうすると、使える【体術】の技は【閃光突き】しかない。
あんまり使っていないので、スキルレベルも低いままだったりする。
ダッ!
僕は踏み込み、【閃光突き】をエルダーライノの巨体に打ち込む。
ドスッ!
「ブモオゥ!!」
効いてるな。
【補助魔法】+【閃光突き】はだいたい【魔影装】+【魔影脚】と同じくらいだ。
これまた、倒すまでに時間がかかりそうだ。
しかもフル補助もわりと燃費が悪い。
そして、フル補助+【魔影装】ならば、それほど時間がかからずに倒せるかもしれないが、さらに燃費が悪い。
なんだか、後衛職、もしくは対人戦に特化したスキルやステータスになってしまったようだ。
前衛として長く戦うのと、ソロで戦うには何か工夫をする必要がある。
「【フレアバースト】!!」
ボゴオォォーーーーン!!
で、結局【フレアバースト】に頼らないと、時間がかかってみんなに追いつけないだろう。
狭間圏
【魔闘家:Lv38】
HP:409/380【魔闘家】:+29
MP:204/1031【魔闘家】:+29
SP:121/494(↑+1)【魔闘家】:-23
力:56(↑+2)【魔闘家】:+12
耐久:121【魔闘家】:+12
俊敏:72【魔闘家】:+69
技:49(↑+2)【魔闘家】:+39
器用:103【魔闘家】:-23
魔力:87【魔闘家】:+12
神聖:150(↑+1)
魔力操作:171【魔闘家】:+49
【グレイトヒール】Lv12+1
【空間魔法】Lv87+1
【パーセプション】Lv97+1
【遠方認知】Lv46+1
【呪術】Lv27+1
【バイタルブレイク】Lv31+1
【パワーブレイク】Lv27+1
【アーマーブレイク】Lv27+1
【スロウ】Lv27+1
【マルチタスク】Lv125+1
【体術】Lv20+2
【閃光突き】Lv2+1
【魔影装】Lv35+1
【魔影脚】Lv10+1
【魔影連脚】Lv9+1
【魔影連撃】Lv6+1
【自己強化】Lv19+1
【不屈】Lv15+1
【鉄壁】Lv33+1
【フレアバースト】Lv13+1




