133日目(異世界)後編
「ぐっ……」
ソーミルは僕の左肩を短剣でつらぬいている。
「ハッ、どうにかなると思ったか?
てめぇなんざ、少し本気出せば相手にならねぇんだよ!」
ブシュッ!
僕の左肩へ短剣をグリグリとねじ込む。
近距離だ……
【フレアバー……
バッ!
近距離で短剣攻撃をしてくるので、【フレアバースト】をしようと思ったが、すぐさま距離をとられてしまう。
「……(何だ、今のは?)」
ソーミルが警戒している今のうちに回復だ。
上がったステータスに……
感覚を……
「おい、今のは昨日カイを仕留めた技か?」
「…………………………」
「まただんまりかよ。
気色の悪い野郎だ……
お前、危険だな……
MPはもったいねぇけど、今すぐぶっ殺してやるよ」
ダッ!
ザスザスザスッ!
凄まじい短剣の連撃だ。
ガッ!
本気の蹴りに吹き飛ぶ。
「がはっ!」
「まだまだ!」
バギッ!
吹き飛び、体勢が崩れた僕に強烈な蹴りが直撃する。
ゴロゴロ……
確実に何本かの骨がやられた。
とにかく回復だ。
「お前、強力な技があるようだが、そんなのは当たらねぇよ。
最初っからずっと俺のターンだからな!」
「フフフ……」
「なに笑ってんだ?
余裕の態度が気に入らねぇな!」
ブスブスブスッ!
猛烈な速さの突きが連続でくる。
身体をそらし、最小限に被害を留めるが、それでも身体が削られていく。
あぁ……
回復が……まるで間に合わない……
感覚を……研ぎ澄ませなければ……
身体をなじませるんだ……
ブスッ!
バキッ!
少しずつ……
少しずつ……
ガスガスッ!
ガガッ!
よし、さっきより一回多くガードできた。
バキッ!
「はぁはぁ……」
「クソしぶてぇな……
なんなんだよお前……」
ボタボタと血が流れる。
血液が減りすぎると、動きが鈍ってしまう……
MPはまだまだあるんだけどな。
ガスッ!
ガッ!
バキッ!
ガッ!
よし、さっきよりさらに一回多くガードできた。
鋭いケリも混ぜながら攻撃してくる。
僕はギリギリ回復が追いつくくらいに攻撃をガードする。
「…………(こいつ、だんだん速く!!)」
ザッザッ!
ガスッ!
短剣はかわし、蹴りはガード。
流れるような連撃だが、少しずつ【魔影装】を使いながら、【補助魔法】のステータス上昇にも慣れつつある。
ヤツの動きを把握できる……
「なんなんだてめぇ……」
「フフフ……いいよ……最高だよ……」
「………………(クソ……落ち着け……余裕だ。
すべてのステータス、スキルは完全に俺が上。
俺がやられるなんてことはあり得ない。)」
シュッ!
シュッ!
ガスッ!
バキッ!
僕は再び吹っ飛び、回復しながら立ち上がる。
「このっ!」
(なんなんだよコイツは!)
ビシャッ!
短剣がかすり、僕の血が飛び散る。
「あぁ……僕の血液が……」
血を失うのは良くない。
蹴りよりもさらに短剣の動きに注意を払う。
「オルァ!」
バキッ!
強烈な前蹴りを両手でガードする。
ズザァ!
蹴りの威力で後ろへ下がるが、踏ん張りをきかせ、体勢を維持する。
「チッ……」
(何故だ……冷や汗が止まらねぇ……
こんなヤツに……?)
◇
「はぁ……はぁ……」
ソーミルの呼吸が乱れる。
「スゥー………………」
逆に僕は呼吸が整ってくる。
「はぁ……はぁ……」
(クソ!
どうなってやがる!
なんで……なんで俺が疲れてるんだ?)
ソーミルが腰を落とし、短剣を引き身構える。
くるぞ……
「ドルァ!」
バンッ!
ソーミルは地面が弾け飛ぶほど力強く踏み込み、突進してくる。
速い!
奥義か?
これまでにないほどの速さ!
避けるのは無理だ!
ブシュッ!
ソーミルの短剣を僕は左手で受け止める。
ブシュッ!ブシュッ!
「このままてめぇごと引き裂いてやるよ!」
「ぐっ!」
短剣は手の甲を突き抜け、血しぶきが出る。
グシャッ!
さらに短剣は手首に向かって、僕の左手を引き裂いていく。
が……
ガッ!
僕は貫かれた左手で短剣を掴む。
【氷結】!
「なっ!」
僕は貫かれた左手を、短剣とヤツの右手ごと【氷結】で固定する。
フフフ……
捕まえた……
「【フレアバースト】ぉぉ!!!」
ボゴォォォーーン!!
渾身の【フレアバースト】をソーミルの腹に叩き込む。
ソーミルの腹と僕自身の右手が破裂するほどの爆発が起きる。
「がはっ!」
完全に手応えがあった。
【魔影装】を使いながらの【フレアバースト】だ。
「クソ……こんな……」
こいつ……
まだ意識があるのか!?
ガクッ!
と思ったけど、さすがに気絶したようだ。
フゥ……
!!
右腕に激痛が走る。
安心したからか、痛みに気がついた。
僕の右腕がえらいことになっている。
黒焦げなのはもちろん、拳の骨が見えるほどに破損している。
すぐさま【グレイトヒール】だ。
やっぱり【魔影装】状態の【フレアバースト】は負担が大きい。
昨日日本で【ヒットストライク】を上げまくって、技のステータスを上げていなかったら腕ごと吹き飛んでいた可能性もある……
それから左手の方も重症だ。
ソーミルの短剣が腕に向かって突き刺さっているのだ。
こっちに関しては、【氷結】で固めてしまったので、まずは氷を溶かして短剣を取り除く必要がある。
ぐらっ……
ぁ……
やばいな……
血を失い過ぎたか……?
意識が朦朧とする。
しかし、今のうちにここから抜け出さなければ……
今気絶したら、完全に殺されるだろう。
僕はソーミルの装備一式を【ストレージ】に入れる。
ぉ?
ソーミルの懐には、回復系の魔石もいくつか入っていた。
全部いただきだな。
僕は部屋を見渡す。
いくつかの通路が伸びているな。
結構な広さだ。
僕以外の人間も魔石の補充奴隷として、ここにいるに違いない。
なにせ、魔石補充の生産がなんとか言ってたしな。
◇
ギィ……
分厚い金属の扉を【金属精錬】を使い開けていく。
扉の鍵の部分を【金属精錬】で破壊してしまえば、簡単に開けることができる。
「……………………」
中には何人かの魔法職らしき人たちがいる。
「そこです、入り口の左に置いておきました」
ん?
僕がキョロキョロとしていると、一人の男性が話しかけてくる。
彼の言う、入り口に左には大量の魔石が補充されておいてある。
あれ?
そうか、僕はここの人間だと思われたわけだ。
魔石を回収しに来たと思われたのだろう。
「いや、あの、僕も昨日ここに連れてこられまして……」
「え……」
静まり返った部屋で、彼ら全員が僕を見る。
「一応、リーダーっぽい人は倒しました」
「……………………」
彼らは顔を見合わせている。
「あっちで気絶していますけど……」
◇
他にも同様に、鍵のかけられた部屋がいくつもあり、何人かの魔法職の人が魔石の補充奴隷として監禁されていた。
僕は、その中でも年配の方に事情を話した。
「では、あなたはマヤシィナから遠く離れたところから転移ポータルで?」
「そうですね」
「お話は、あとにしましょう。
とにかく、脱出です」
他の方が脱出を促す。
てか、出口ってどっちなんだろう。
「ぁ、多分そこ罠がありますよ」
僕の【魔影装】で、空間に違和感があることに気づく。
【空間魔法】である【パーセプション】が使えないので、【魔影装】をやや広く展開し、警戒しながら進む。
土壁に小さな穴が空いている。
「ハッ!」
ボコッ!
土壁を破壊すると、中にボウガンが入っている。
小さな魔石も入っているな。
この魔石が反応して、ボウガンの罠が発動するのだろうか。
魔石を取ってしまえば大丈夫だろう。
僕は【ストレージ】に魔石を入れてしまう。
ついでにこのボウガンもいただいておこう。
ん?
少し離れたところに空間があるな。
「離れてください。
ここにもなにかあります」
僕は【魔影装】を発動させて、構えをとり、力をためる。
「ハッ!」
ボゴォッ!
中には畳一畳くらいの空間があった。
「これは……」
「隠し部屋、ですかね?」
中央に台座があり、青紫色に光っている。
「魔石……ですよね?」
僕は周りの魔法職の方々に確認する。
多分魔石なのだとは思うのだが、青紫色の魔石は初めて見る。
「この色は、【結界魔法】の魔石ですね」
年配の魔法職の方が教えてくれる。
これか。
コイツが原因で僕の【空間魔法】が使えないんだな?
いただいてしまおう……
僕は【魔力庫】を発動し、魔石を収納していく。
それから【空間魔法】で【パーセプション】を使っていく。
出口までのルート、それから外の環境がわかるはずだ。
!!
おいおいおい、ここって……
「ここ、マヤシィナの城の地下です……」
狭間圏
【魔闘家:Lv36】
HP:408/380(↑+11)【魔闘家】:+28
MP:231/1012【魔闘家】:+28
SP:470/493(↑+4)【魔闘家】:-23
力:54(↑+3)【魔闘家】:+12
耐久:121(↑+6)【魔闘家】:+12
俊敏:72(↑+4)【魔闘家】:+68
技:47(↑+4)【魔闘家】:+38
器用:103【魔闘家】:-23
魔力:87【魔闘家】:+12
神聖:149(↑+1)
魔力操作:164【魔闘家】:+48
【土魔法】Lv37+1
【マイン】Lv4+1
【回復魔法】Lv101+1
【オートヒール】Lv49+1
【クイックヒール】Lv18+2
【リヒール】Lv78+1
【ハイリカバリ】Lv78+1
【グレイトヒール】Lv11+1
【マルチタスク】Lv123+1
【自己強化】Lv18+2
【不屈】Lv14+2
【鉄壁】Lv32+2
【フレアバースト】Lv12+1
【体術】Lv18+2
【痛覚耐性】Lv9+1
【魔影装】Lv34+1




