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???日目 異世界 別視点 後編

「さて、簡単に死んでくれるなよ」

タイラはそう言うと、剣を構える。


ザッ……


一瞬でショーンとの間を詰める。


「なっ!」


ガギンッ!


ショーンは反射的に槍で防御体勢をとり、ギリギリで剣の直撃を避ける。

しかし、剣圧によりショーンの体は軽々と吹っ飛ぶ。


ドガッ!

ザァッ!


地面に背中をたたきつけられながら、なんとか体勢を整え構える。


『マズイ!避けろ!』

【コール】の魔石でクラールがショーンに注意する。


「くっ!」


吹っ飛んだショーンに対し、タイラは再び一瞬で間合いを詰める。


「ハッ!」


バシュッ!


ただの上段からの切り落とし。

ショーンはギリギリでかわすことができたようだ。

しかし、威力が尋常ではなく地面に亀裂が入る。


「クソ!

なんだってんだよ!

洒落にならねぇぞ!」

「ほぉ……いまのを避けるか。

しかし力の加減がよくわからんな……」

タイラはショーンの言葉を無視し、自分の腕を確認している。


「タイラ様!

どうされたのですか!?」

修行仲間であるショーンに対し、いきなり攻撃をしかけたタイラ。

フヨウが驚きタイラに説明を求める。


「ふむ……そうだな……」

タイラはそう言うと、ギュエンの方を向く。


「どうだ?」

「先程の結界で、近衛以外は全て外に待機させてあります」

ギュエンの言う通り、今回の新緑の覇者討伐軍の大半は結界の外で待機している。

結界の中は近接部隊、それもマヤシィナの精鋭のみだ。


「そうか……ならば今回の目的を話しても問題ないな?」

「はい、よろしいかと」


「フヨウよ、そこの槍使いと、魔弓士は王国のスパイだ」

「なっ!」

フヨウがクラールを見る。


「たしかに、私は教会の者で、王国との繋がりもあります」

「バカな……」

フヨウはクラール、ショーンを睨みつける。


「こそこそと動き回る鼠など、処分するに限るだろう?」

タイラは目を細め、ショーンを見つめる。

いつでも殺せるという余裕を持った表情だ。


(マズイな……タイラの強さは予想を遥かに越えている。

このままでは……)

「待ってください!

今回我々はマヤシィナの動向を見てこいと言われた程度です。

様子見で派遣された者を殺すなど、よりマヤシィナに疑いの目が集まるだけです。

我々を殺すことにメリットがあるとは思えません」

「ハハハッ!

もう少し頭が回ると思ったが、所詮は斥候まがいの兵だな」

「おい!

どういう意味だ!?」

クラールが馬鹿にされたことに対し、ショーンが怒鳴る。


タイラは、右手を軽く動かし剣を振る。


ガギンッ!

ズザァ!


ショーンは槍でガードするが、後退せざるを得ない。


「貴様に話す許可を与えた覚えはないぞ?」

「くっ……(なんつー威力だ)」


「まぁよい、話を続けてやろう。

そもそも、王国から目をつけられるのが目的だとは思わんのか?」

「バカな……一体何のメリットが」


「我々マヤシィナは独立する。

貴様らの首で宣戦布告するのも良いかもしれんな」

「……国を滅ぼすつもりですか」

タイラは戦争を起こすつもりだ。

正気の沙汰ではない。


「それが浅はかだというのだ。

圧倒的武力の前では、国や領土が変わることも常であろう?」

「あなたがお強いのは認める。

しかし、いくら個人が強かろうと国がひっくり返ることはありませんよ」


「ハハハ!!

いいだろう!!

力の一端を見せてやる!!」

タイラの右手が青白い光を放つ。

タイラを中心に吹雪が舞い、収束していく。

「タイラ様!!(あれは……まるで父上の)」

フヨウがタイラを呼び止める。


「ショーン!!」

クラールがショーンの身を案じ叫ぶ。

「【流槍守備の型】!!」

ショーンのスキルにより、水の柱が周囲を固める。


「【羅雪衝(らせつしょう)】!!」

ズバアァァ!

猛烈な吹雪がショーンを襲う。


メキメキッ!

防御として出した水の柱が一瞬で凍る。


バリィーン!!

凍った柱が弾け飛びショーンがふっ飛ばされる。


「ガハッ!」

ショーンは血反吐を吐き、ぐったりとうなだれる。


「やはり、力の加減がちと難しいな……」

「タイラ様!!

お待ち下さい!!

独立など無謀です!!」


「ほぉ、フヨウもそう申すか」

タイラはフヨウへと向き直る。

「では少し種明かしをしてやろう。

先程の技【羅雪衝】を見たな?」


「はい、あれは父上の技……です」

「これを見よ」

タイラは右手を掲げ、手の甲をフヨウに見せる。

指には指輪がはめられており、青白く光り輝く。


「これは、我がマヤシィナに代々伝わる指輪でな。

血鎖(けっさ)の指輪というのだ。

どうだ、この光……ヨウガの力を感じぬか?」

「父上の……?」


「この指輪は、血縁者の全ステータス、スキルを引き継ぐことができる」

「では、タイラ様は父上の力を……?」


「その通りだ」

タイラは笑みを浮かべ、自身の指を見つめる。

「!!(バカな……そんな規格外のものなど……)」

クラールの表情がこわばる。


「おい、そこの鼠よ……この意味がわかるか?」

「……………………(あり得ない)」

クラールは黙って歯を食いしばる。


「今の私は、本来の私のステータスにヨウガの全ステータスがのっているのだ」

「そのような重要な情報を私に伝えてしまってのいいのですか?」


「問題ない。

今貴様は逃亡を考えているのだろうが、ここは結界の中だ。

逃げることもできぬぞ?」

「人間を通さないほどの結界など……」


「あるのだよ。

さらに、この結界は術士が死んでも有効だ。

お前たちには万に一つも生き残れるすべはない」


ザッ……


タイラが高速で動き、クラールの眼前へ現れ、胸ぐらを掴む。


「自身で確認してみたらどうだ?」


ブンッ!


タイラは胸ぐらを掴んだまま、クラールを投げ飛ばす。


ビシィッ!


「ガハッ!」


クラールは大きく飛ばされるが、透明な壁に衝突する。


「ハハハ!!

どれも貴重なマヤシィナの資源だ。

素晴らしいだろう!?」


クラールは衝突した左肩を右手でおさえながら、なんとか立ち上がる。


「いいや!

強力な魔道具には、それ相応のリスクがあるはず!

あなたには、代償があるはずだ!」


「ほぉ……最低限の知識はあるか」

タイラは剣を鞘へと収める。

もはや武器を使う必要すらないという余裕だ。


「残念ながら、そんなものは無い」

「………………(よく見るんだ。必ず代償がある。違和感を探し出せ……)」

クラールは注意深くタイラを観察する。


「……いや、そうか」

タイラは右手を顎に当て、考える。


「代償か……そうだな、あるといえばある。

いや……正確にはあった、というべきか」


タイラは再び手を上方へ上げ、指輪を輝かせる。



「この指輪の能力となった者の……」







「……命だ……」







フヨウは、大きく目を開き立ちすくむ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] !? 続きが来て嬉しい…
[良い点] 更新ありがとうございます。 [一言] ニア 殺してでも奪い取る
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