132日目(異世界)別視点
淡い光とともに、狭間は消えていく。
それが【転移】の魔法であることに、ショーン、クラールともにすぐに気づく。
「おい!まずいぞ!」
「クソ、やられた!【転移】だ!」
「ケン!
どこだ!
聞こえるか!?」
ショーンが声を大声を上げ、狭間を呼ぶ。
……………………
返事は無い。
「すぐに探そう。
【転移】の魔法には距離制限があるはずだ」
◇
『だめだな……【コール】にも反応がねぇ』
『そもそも僕たちは【空間魔法】が使えないからね。
闇雲に探し回ったところで、見つかる可能性は低い。
【空間魔法】を使えるケンが連れ去られたのは痛い……』
ショーンとクラールは魔石を使って【コール】で話をしている。
『んで、どうする?
このまま探し回っても見つかる可能性は低いんだろ?』
『仕方ない……
マヤシィナの城へ行こう。
ギュエンさんに相談して、城の兵にも手伝ってもらうほうがいい』
『大丈夫なのか?』
『いや、いまいち信用できないからね……
かといってこのまま二人で探したところで見つかる可能性は低い』
『まぁケンならそう簡単にやられはしないと思うけが……』
『ドラゴンが使役した人間が絡んできたら……』
『………………』
◇
「【転移】ですと!?」
ショーン、クラールは狭間が【転移】によりどこかに連れ去られたことをギュエンに報告する。
「はい、あの光は【転移】で間違いないでしょう」
「やはりただの賊ではないようですな……
わかりました。
ただちに兵に調べさせましょう」
「ご助力感謝します」
「いやいや、元はと言えばこちらから頼んだこと。
当然のことです!」
「……………………」
ギュエンが自身の大きな胸板を叩く。
「なぁに!
私めに任せれば問題ありませんぞ!
すぐに見つけて差し上げましょう!」
「ありがとうございます」
◇
『しかし、まずいことになったな』
『まぁな……
けど、ケンなら賊を全部倒してコロっと戻ってくるんじゃねぇか?』
ショーンとクラールはマヤシィナの客室にいる。
彼らが現在宿泊しているところだ。
城の中では、基本的に【コール】の魔石を使い会話をしている。
トントン!
「失礼する!」
フヨウが息を切らせて入室してくる。
「ケンがさらわれたというのは本当か!?」
「あぁ……【転移】の魔法でね。
おそらくは捕まっていると思う」
ドカドカドカ!
部屋に大きな足音が聞こえてくる。
「やや!
これは、フヨウ様もご一緒でしたか!?」
ギュエンが室内に入る。
「どうしました?
まさか、もう見つかったとか?」
「いえ、残念ながら……
しかし、城の魔道士が連れ去られた可能性がありましてな」
「魔道士ってことは、やっぱりMPが狙われてるってことか?」
「にしても城の魔道士とは大胆だな……」
「そして、これを見ていただきたい」
ギュエンは、クラールたちに青く光る魔石を見せる。
それは、緊急時の呼び出し用の魔石だ。
イヴォンがクラールに持たせている魔石と同じものであり、その魔石が光るときは教会に戻ってこいという合図でもある。
「これは、連れ去られた魔道士の所有している魔石でしてな」
「緊急時の合図として使われるものですね?」
「そのとおりです。
さらに、魔道士に解析させれば、大まかな位置まで特定できますぞ」
「そこにケンもいる可能性がありますね」
「おい、今すぐ行こうぜ!」
ショーンが拳を握りしめる。
「それが……位置が外界、新緑の覇者がいるエリアなのです……」




