131日目(異世界)前編
ゴンゴンッ!
分厚い扉にノックが響く。
僕は今、マヤシィナの城の一室にいる。
誰だろうか?
「おはようございます!」
「おはようございます!」
扉の前には、城の兵士さんがおり、元気よく挨拶してくれる。
そして、元気よく挨拶をされれば、当然元気よく挨拶を返す。
「お時間よろしければ、中庭の方におこしください。
フヨウ様がお呼びのようです」
「了解です!」
兵士さんは、ビシッと背筋が伸びており、こちらもビシッと背筋を伸ばし、大きな声で返事をしてしまう。
なんというか、体育会系だよな。
◇
「おい、お前のおはようございますが、俺の部屋にまで聞こえてきたぜ?」
「僕の部屋にも聞こえてきたよ……」
「え?
そうなの?」
僕、ショーン、クラールは呼び出された中庭に来ている。
そして、中庭で朝食を摂っている。
「おはよう」
「やぁフヨウ、おはよう」
フヨウも僕たちのテーブルへやってくる。
「それで、今日はどうしたの?」
「今日から少しの間、騎士団と一緒に昨日の森近辺で狩りをする。
キミたちもどうだ?」
「それなら一緒に行きたいね」
僕がどう返答しようか迷っていると、クラールが応えてくれる。
正直、狩りなら是非いきたい。
「おいおい、討伐隊が組まれるって話じゃなかったのか?」
ショーンが聞いている。
確かに、フヨウは父と兄の敵討ちを目標にしている。
その相手を倒すため、討伐隊が組まれるから戻ってきたって話だった。
「そうだ。
だが、今すぐに討伐隊が組まれるわけでは無い。
それまでの間、タイラ様から森の強力な魔物でステータスとジョブを上げてくるように言われたのだ」
「そういうことなら、一緒に行こうぜ」
◇
僕たちはマヤシィナの出口近辺へやってきた。
「ケン殿、ショーン殿、クラール殿よろしくお願い申し上げる」
騎士団長のギュエンさんだ。
「「「よろしくお願いします」」」
ギュエンさんの他に、数名の騎士の方々がいた。
昨日よりは少ないが、魔法部隊もいるようだ。
ちなみにだが、クラールとショーンは奥義を使わずに普通に戦うらしい。
僕は基本的に回復のみで、攻撃には参加しないように言われている。
おそらく今日もやることが無さそうだ……
ジョブは【錬金術師】や【薬師】、【調合師】なんかの戦闘では上げにくいものにしておこう。
◇
おおまかな流れは昨日と同じだ。
まず、ギュエンさんが盾を構えて突っ込みその後、全員で魔物を囲む。
そして、魔物を袋叩きにするのだ。
このとき、フヨウの【雷属性】攻撃が栄える。
集団戦での【雷属性】はかなり有効だ。
マヤシィナの魔物はそれなりに強いので、完全に動きが止まることはないが、それでも【雷属性】の攻撃によって動きが鈍る。
できれば僕も【雷属性】の攻撃か魔法がなにか欲しいところだ。
それから、ギュエンさんの動きもかなり良い。
盾系のジョブだとは思うのだが、タンクのみとして活躍しているわけではない。
俊敏や力も相当あるだろう。
普通に火力が高いのだ。
ショーンやクラールの動きも良いが、力をセーブしているようにも見える。
他の騎士と同じくらいの殲滅力だ。
◇
「今日は良い狩りができましたな!」
「……そうだな」
ギュエンさんはそう言うが、フヨウは微妙だ。
僕やクラール、ショーンが本気で戦っていないからだろう。
こんなんでいいのだろうか……
「今夜話がある。
城ではなく、城下町の食堂に皆来てくれないか?」
フヨウが神妙な面持ちで僕たちに言う。
「了解」
クラールがすぐに返答する。
やっぱりそうなるよな。
フヨウにとってはこれから敵討ちに出るわけだ。
僕たちの戦いぶりを見て、不審に思ったはずだ。
◇
「来たか……座ってくれ」
フヨウが食堂の奥に座っていた。
とりあえず、僕たちは同じテーブルに座り、食べ物と飲み物をそれぞれ注文する。
『おい、どうすんだよ?』
『まぁ僕に任せて欲しい』
現在は僕、ショーン、クラールで【コール】を使用中だ。
僕もフヨウにはうまく説明できそうにないので、クラールに任せる。
「それで、昼間の狩りのことかな?」
「そうだ。
昼間の狩りと、昨日の狩りについてだが、キミたちは力をセーブしているように見えた……
なにか理由があるのか?」
クラールとフヨウが話す。
僕とショーンは特に何も言わない。
「ケンの【呪術】さ。
常に耐性は上げておいたほうが良いだろう?」
「それは……そう……だが……」
「フヨウについては、タイラ様が実力を確認する必要があっただろう?
だから、僕たちだけに【呪術】を使ってもらったんだ」
「……………………」
フヨウは黙ってしまった。
納得したという感じではないな……




