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130日目(異世界)前編

「おはよう、昨日は良く眠れたか?」

「おはようフヨウ。

よく眠れたよ」

僕たちは、朝から城の近くの訓練場に来ている。

今日の予定は、マヤシィナ付近での狩りだ。

タイラ様がフヨウの修行の成果を確かめたいとのことだ。


訓練場にはフヨウとともに、騎士団の方々が待機していた。

「ギュエン殿、こちらが昨日話した私と共に修行をした者たちだ」

「ほぉ……」

ギュエンと呼ばれた男性が僕たちを見る。


「こちらはギュエン殿だ。

マヤシィナの騎士団長で、父上や兄上と共にこの国を守ってきた方だ」

ギュエンさんは、大きな黒い鎧に大剣、大盾を身についている。

190cmくらいあるだろうか。

めちゃくちゃデカイ。

すげぇ強そうだ。


「この度は、助太刀恐れ入る」

ギュエンさんは、兜を脱ぐとこちらに一礼する。

僕と同じ黒い髪だが、短髪だ。

30代後半だろうか。

彫りが深い顔立ちで、あごひげがとても似合っている。


「フヨウ様が認めたということは、かなりの実力者なのだろう……

本日は、よろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

クラールが代表で挨拶をしてくれる。

誰が相手でも、相変わらずのイケメンスマイルだ。

一瞬まわりが輝いたのではないかと錯覚する。


毎回思うのだが、何かしらのスキルが発動しているんじゃないだろうか。


「皆、集まったか?」

少し遅れてタイラ様がやってくる。


「はっ!」

「では参ろう」










マヤシィナから少し離れると、すぐに森に入る。

森の付近に来ると、街から見た印象とはかなり異なる。

一本一本の木が、非常に大きいのだ。


……いや、木だけではないな。

他の植物も大きい。

高温多湿で、植物がどんどん育つのだろうか。

それにしても、小人になった気分だ。


「森に入ると、魔物が出現し始める。

注意してくれ」

「了解」


森の中とはいっても、まだ街から近いところだから全く未開の地というわけではない。

人が同時に何人も通れるような道がある。

僕たちは徒歩で、森の中を進んでいく。












「止まれ」

タイラ様がそう言うと、ピタリと全員が止まる。

奥に魔物が一体いる。


デカイな……

大きなサイのような魔物で、足が六本ある。

何メートルあるんだ?

小さな平屋の家一軒くらいの大きさだ。


「エルダーライノだな」

「どうします?」

タイラ様にギュエンさんが質問する。


「では、私が……」

「そうだな。

早速フヨウの力を見てみたい。

フヨウを中心に陣を組むぞ」

フヨウが出るようだ。

僕たちもそれに合わせて出撃する。


フヨウは無言で突進する。

それに続き、僕たち、騎士の方々がエルダーライノに向かっていく。


「はっ!」

ブシュッ!


フヨウの双剣が不意打ちで決まる。


「ブオゥ!」

ブンッ!

エルダーライノは巨体振り回し自分の周囲を攻撃する。


ブワッ!


巨体からくる風圧が半端ではない。

ヤツの脚にぶつかってしまえば、相当なダメージをくらうことになるだろう。


が……

今の僕たちの俊敏ならば、容易にかわすことができる。


「【爆炎剣】!」

「【濁流槍】!」

「【ファイアアロー】!」

技が次々に決まっていく。


ちなみにだが、僕はやや離れたところで見ているだけだ。

本日は回復に徹してほしいとクラールに言われている。

本当なら、僕も【魔影装】で突っ込んでいきたいところだ……


騎士団の方々も、タイミングを見て技を繰り出している。

さすがは限界領域に近い街の騎士団だ。


以前ダブルヘッド討伐で組まれた騎士団とは比べ物にならないほど強い。

これなら、エルダーライノはただの大きな的だ。













「素晴らしい……」

タイラ様はフヨウの動きを見てつぶやく。


「全てのステータスが底上げされているな」

「ありがとうございます」


「それから、伴の者もかなりの手練であろう?」

タイラ様は僕たちの方を見る。


「はい、彼らとは共に【昇仙拳】の修行に励みました」

「ほぉ……

では、彼らも【昇仙拳】を?」


「はい、ケンは魔法職ですので【昇仙拳】を習得していませんが、ショーンとクラールは習得済みです」

「それは頼もしいな……」

クラールはタイラ様に無言で一礼をする。


「……………………」

ギュエンさんは無言で僕たちを観察している。

騎士団長だからな。

戦力を正確に把握しておきたいのだろう。












それから更に森の奥へ進む。

エルダーライノが数体出たが、問題なく倒している。

そして、僕の今のジョブは戦闘の役には立たない【錬金術師】だ。

だってやること無いんだもの……


回復役として控えているので、マジでやることがない。

騎士団の中には【補助魔法】を使える人もいるので、【補助魔法】も使うことはない。

そして、戦闘が終わると【司祭】にジョブを変えて回復をしている。


やっぱり大規模なパーティーに参加すると、回復メインになってしまうんだよなぁ……

こうなると、魔力と神聖以外のステータスは上げにくい。

ということで、こっそりジョブを【錬金術師】にしている。


「フヨウ様、出ましたぞ……ラッドレパードです」

ギュエンさんの視線の先、森の奥から大きなヒョウのような魔物が現れる。

やはり、脚が六本ある。


「わかった、私一人でいこう」

「ほぉ……一人でか……」

タイラ様は顎に手を当て、フヨウを見ている。


ザッ!


フヨウが踏み込むと、ラッドレパードは後ろへ飛び頭を低くする。


体勢を整えた瞬間に、大きな爪を振り下ろす!

「グガァ!」


速い!

こいつはさっきのエルダーライノよりも全然速い。


それに対し、フヨウは防御をしない。

振り下ろした爪に、双剣を振り上げる。


ガギンッ!


ザシュッ!


フヨウの双剣とラッドレパードの爪がぶつかり合い、フヨウのまわりの地面がえぐれる。

速さはもちろんだが、攻撃力もかなりあるな。


おぉ……

体勢的には、振り上げたフヨウのほうが不利なはずだ。

だけど、下からグイグイと押し上げている。

相変わらずの力技だ。


しかし、相手は六本脚、空いている脚の爪が横からフヨウを薙ぎ払おうとする。


「【豪炎滅雷剣(ごうえんめつらいけん)】!!」

フヨウは双剣でラッドレパードの前脚二本を同時に薙ぎ払う。

あの技は、武道大会の決勝で使っていた技だ。


ドゴォーン!


ラッドレパードは前脚ごと身体をふっ飛ばされる。


「うおぉぉ!!」


バリバリバリ!!

フヨウの双剣が雷を帯びる。


雷属性の追撃が入ると、そこからはハメ技だ。

動きが鈍くなったラッドレパードに容赦なく双剣の連撃が決まる。


だいぶ気合が入ってるな……


「ほぉ……」

タイラ様は満足したように言う。










「フヨウ、ご苦労だった。

しかしあれ程の大技を連発すれば、しばらく休む必要があるだろう」

「いえ、昇仙山(しょうせんざん)での修行でSPが強化されましたのでまだ余裕があります。

また、SP消費が【昇仙拳】によって大幅に下がっております」


「素晴らしい……【昇仙拳】の噂は本当であったのか」


その後もフヨウの戦いぶりを、タイラ様、騎士団の方々が見学する。


「なぁ……今日って俺たちの戦力も確認するって話だろ?」

「そうだね」

ショーンがクラールに確認をする。


しかし、タイラ様はあまり僕たちに興味が無いようにみえる。

フヨウの技を実際に見て、フヨウにどのような性質の技なのかを詳しく聞いている。

限界領域を広げるための狩りならば、僕たちの戦力も把握しておいたほうがいいと思うのだが……


クラールがこちらをちらりと見る。


あぁ、【コール】を使えってことね。


『どしたの?』

『タイラ様達が、僕たちに興味がないのは好都合だよ。

僕たちの情報を詳しく知られることもないし、ケンに至っては、ただの回復職だと思われてるみたいだしね。

タイラ様や騎士団の方に言われない限りは、無理にこっちの戦力を見せないでくれ』

『ぉ!

俺も聞こえるぞ。

ケン、スキルが上がったのか?』


日本で【コール】のスキル上げをしまくったので、すでに三人同時に会話ができるようになっている。

今は僕と、クラール、ショーンでスキルが発動中だ。


『そうなんだ。

今のスキルレベルで三人まで同時に会話できるよ。

明日には四人くらいになってそうだね』

『ケンの成長は目覚ましいね……』

『魔法に関してはバケモノじゃねぇか?』


『まぁとにかく、自分のスキルや魔法に関しては、聞かれない限りは答えないで欲しい』

『了解』


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新再開して嬉しいですが、無理しないでください。 この作品好きです。 [一言] 魔法系の成長が著しいのは日本で修行可能ならではですよね。 たんに強くなるのではなく便利な魔法が増えるのは良い…
[一言] なんか怪しく見えるよねー
感想一覧
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