129日目(異世界)後編
今日は軽く謁見しただけで終わってしまった。
どうやら明日詳しい話があるようだ。
とりあえず、ご飯を食べて部屋にいてくれって感じだったな。
しかし、お城というのは落ち着かないもんだ。
しかも、城の雰囲気がピリピリしているというか……
余計にソワソワしてしまう。
「こちらへどうぞ」
城の従者だろう。
メイド服の女性に、食堂へと案内される。
食堂というより、レストランに近いな。
丸いテーブルがいくつもおいてあり、壁には大きな窓がいくつもある。
中庭をみながら食事を食べることができる。
僕とショーン、クラールは同じテーブルにつき、食事を摂る。
フヨウとは完全に別行動だ。
故郷に来たわけだから、積もる話もあるのだろう。
「おい、これうめぇな」
「確かに、教会の料理にも引けを取らないね」
僕とショーンは料理をガツガツと食べる。
「………………」
クラールは物音一つ立てずに上品に食べている。
ぉ?
目の前にウィンドウが現れる。
『一応警戒してほしい。
変なことは言わないように……
城の中には結界もあるし、【空間魔術師】がいるかもしれないからね』
クラールが【文書】を使ったのだろう。
おそらくショーンにも同様の内容が送られているはずだ。
ぁ、そうだ。
【文書】を使ってやりとりをするよりも、【コール】のほうが便利だ。
僕は【コール】をクラールに対して発動させる。
『聞こえる?』
クラールがこちらに視線を向ける。
『新しい【空間魔法】を習得したんだ。
これ、【コール】っていうんだけど、頭の中でこっちに話しかけてみてよ』
『驚いたな……
こんな【空間魔法】まで習得していたとは……』
クラールは驚いたと言っているが、表情にそれは全く出ていない。
さすがだ。
『かなり便利な魔法だ。
これは、一対一のみかな?』
『そうだね。
だけど多分、スキルレベルが上がれば同時に何人かいけると思う。
感覚的にいけるような気がするんだよね』
『なるほど、さらに便利になるね。
それとケン、食べながらこのスキルを使い続けてくれ。
急に無言で手が止まると不自然だからね』
『了解』
僕とクラールが【コール】で話している間も、ショーンはガツガツと食べ続けている。
◇
食事のあと、僕たちは別々の部屋に通された。
10畳くらいの部屋にベッドとクローゼットなどがある。
電気と水道の代わりに魔石があり、異世界では高級な部屋に部類されるだろう。
僕たちは、フヨウに付いてきたわけだから貴族の従者的な扱いなんだろうか。
とりあえず、今日はここで宿泊するように言われた。
どうやら明日からは、この近辺で狩りをするらしい。
タイラ様が僕たちの実力と、フヨウの修行の成果を確認したいとのことだ。
討伐隊を組むのに、ある程度実力を把握する必要があるんだろう。
しかし、暇だな。
街を見て回りたいんだけど、なんかそんな雰囲気じゃないんだよな。
ちょっとピリピリしているというか……
なんか物々しいし、城の中を勝手にブラブラできるような感じじゃない。
今回討伐する魔物っていうのは相当強いってことだろう。
『ケン、【コール】の発動よろしく』
目の前にウィンドウが現れる。
クラールが【文書】を発動したようだ。
僕はクラールの指示通り【コール】を発動。
『どうしたの?』
『ケン、MPはどうだい?』
『余ってるよ。
本当はどこかで使いたいんだけど、お城の中だし、外にいける雰囲気じゃないよね』
『だろうね。
それなら、このまま僕に【コール】を使い続けてスキルを上げておいてくれないか。
できれば、マヤシィナにいる間に複数同時に使えるようにしてほしい』
『了解』
『あと、MPは必ず少し残しておいてくれ。
何が起こるかわからないからね』
『りょ、了解……』
この状況で使い切ったら怒られるよな……
『それから、城の兵士の配置がやや不自然だ』
『ぇ?
そうなの?』
『そうだね。
通常より警備が多い気がするんだ。
マヤシィナではこれが一般的な可能性もあるけど……』
『そうだ、ケン。
【パーセプション】でフヨウの位置を確認できるかい?
僕が持っている【パーセプション】の魔石では、範囲をコントロールできないんだ』
『了解。
ちょっとやってみるよ』
僕は【パーセプション】の範囲を調整し、辺り一帯を確認していく。
城自体は広いが、宿泊できる部屋は限られている。
ぉ、いたいた。
領主や貴族の滞在している場所は固まっているようだ。
『いたいた。
僕たちとは違う建物だ』
『周辺の様子は?』
『ん〜……
夜なのに兵士が結構いるね。
明日狩りに行くからかな?』
『今僕たちがいる周辺と比べてどう?』
『フヨウ周りのほうが全然多いよ』
『そうか……
妙だな……』
『なんで?』
『よそ者は僕たちだろ?
監視をつけるなら僕たちの方に兵士を置くべきだ』
『フヨウの修行仲間だし、そんなに警戒されてないんじゃない?』
『ならいいけどね……』
『それじゃケン、ショーンにも【コール】を使ってみてよ。
【コール】のスキルについては知っておいてほしいし』
『了解』
僕は【コール】の相手をショーンに切り変える。
『聞こえる?』
『うぉ!?
なんだ?』
『僕だよ、ケンだよ。
新しい【空間魔法】の【コール】を習得したんだ』
『なんだよ、ケンかよ。
またよくわかんねぇ魔法を習得したみたいだな』
『クラールの指示でさ、この【コール】についてもショーンに知らせておいてほしいって』
『なるほどな。
便利なもんだな』
『それで、スキルレベルを上げれば同時に何人も話ができそうだから、今使いながらスキルレベルをあげようと思って』
『しかしなぁ〜……
もうちょっと早く習得してくれよ』
『なんで?』
『この【コール】とかいう魔法があれば、ゲロ風呂に入るお前の近くにいなくて済んだだろ』
『おぉ!
そうか!?
【コール】があれば、ゲロ風呂で状態異常になって動けなくなってもショーンに助けてもらえるね』
『いや……
だからそれが嫌だって話なんだが……』
僕たちはしばらくの間、【コール】を使い続けた。
狭間圏
【空間魔術師:Lv40】
HP:325/355【空間魔術師】:-30
MP:522/931【空間魔術師】:+100
SP:340/466【空間魔術師】:-22
力:48【空間魔術師】:-22
耐久:107【空間魔術師】:-22
俊敏:65【空間魔術師】:-22
技:40【空間魔術師】:-22
器用:100
魔力:83【空間魔術師】:+40
神聖:138
魔力操作:148(↑+1)【空間魔術師】:+100
【コール】Lv7+4




