128日目(異世界)
「お前たち、悪くはなかったぞ」
「ありがとうございました!」
僕は元気よくお礼を言う。
今からサワナ様はこの街を出発する。
各地の教会に結界を張り、不老薬の素材を集めながら旅をしなければならない。
「あの、我々がサワナ様に同行し、修行をつけていただくことはできないのでしょうか?」
「ほぅ……」
クラールの提案に、サワナ様は頬を赤らめ、鼻息を荒くする。
「お前たちを各地に連れ回す。
確かに……イイ……イイ……提案だ」
「「「「……………………」」」」
クラールがまた何かサワナ様のスイッチを押してしまったのだろうか。
「だが……」
サワナ様が元に戻る。
「ダメだな。
付いてきても意味がない」
「なんだよ。
足手まといってことか?」
ショーンが不満げに言う。
「いいや、そうではない。
お前たちならそこそこは戦えるだろう。
私はこれから各地の教会に結界を張りに行く。
それから、錬金術師への素材の依頼だな。
狩りにはしばらく行かない」
「ぁ〜……そりゃ微妙だな」
「そういうことだ。
それでも付いてくるなら面倒をみてやるぞ?」
サワナ様の目が怪しく光る……
きっとろくなことは考えていないだろう。
「……いいえ、やめておきます」
クラールが返す。
「そうだ、お前たちに餞別だ……」
「俺、昨日もらったけど……」
確かに、ショーンについては昨日おかしな装備をもらっていた。
しかしサワナ様はそれを無視し、【魔力庫】から装備を取り出す。
……これももはや嫌な予感しかしない。
「これをくれてやろう。
例によってステータス補正が強力なヤツだ」
ドサッ!
僕たちはそれぞれ、装備を広げて確認をする。
何の生地だろうか……
スケスケの素材だ。
黒っぽいスケスケの生地だが、角度を変えるとキラキラと輝く。
マントの部類に入るのか?
みんなを見てみる。
僕とショーン、クラールは同じ装備だ。
「あの、これはマントでしょうか?」
「いいや、少し特殊な装備でな。
マントとして使うこともできるが、この装備は単体で使用しないと、ステータスにマイナスの補正がついてしまう。
だが、単体で装備すれば、かなりのステータスが上がるという代物だ」
「「「……………………」」」
つまり、全裸でスケスケのマントを装備すればステータス補正が爆上がりだと……
なんというか、死ぬ直前までは使いたくない。
しかし、死ぬ直前に着替える暇なんてないだろう……
「おぉ……」
フヨウだけは、銀色のオシャレな髪留めをもらっている。
ちょ……ずるくね?
「ではさらばだ!」
そういうと、サワナ様はポータルへ行ってしまう。
最後までよくわからない好みだったな……
◇
「さて、これからどうする?」
「どうしようか……」
お金でも貯めようかな。
イヴォンさんからこの魔道具の腕輪を買い取りたい。
「すまない……私は故郷へ帰ることにする」
ん?
フヨウの表情が険しい。
「なんだ?
急用か?」
「まさか……」
クラールがなにかに気づく。
「マヤシィナから連絡だ。
恐らく、領地を広げるための討伐隊が組まれる」
フヨウは、青く輝く魔石を見せてくれる。
これがマヤシィナとの連絡用の魔石だろう。
何かしらの急用があり、魔石が光っているということだ。
「ようやくだ……
この手で父と兄の仇をうてる……」
「ショーン、ケン、僕らも行こう」
クラールが言う。
ちょっと意外だ。
「……いくらお前たちでも危険だ。
それに、私の戦いに巻き込むわけにはいかない」
「危険なのはいつものことだろう?
それにどれくらいの魔物なのか確認して、危険度が高いようだったら僕たちは討伐に参加しなければいい。
ショーン、ケンはどう思う?」
「ま、俺は構わないぜ。
別にやることもねぇし。
ケンはどうだ?」
フヨウの父親と兄がやられたってことは相当強い魔物なんだろう。
確かに危険ではあるけど、一緒に修行をしてきた仲だしフヨウに協力してあげたい。
!!
突然目の前にスクリーンが現れる。
これは……【文書】のスキルだ。
クラールが魔石で発動している。
僕がカルディさんとつくった魔石だ。
しかし、何故今発動するんだ?
『ケン、ショーン。
二人も一緒にマヤシィナに行ってほしい。
わけは後で説明するよ』
どういうことだ?
わざわざ【文書】を使って、僕とショーンにだけ伝えてくる必要はあるんだろうか。
わけは後で説明するとあるから、とりあえずショーンに返事をしておこう。
「そうだね。
僕も一緒に行きたいよ。
今回の修行で、どれくらい強くなったのかも確認したいし」
「……………………」
フヨウは顎に手を当て考えている。
「戦力が増えることは、こちらとしてもありがたい……
しかし、危険だ。
私の身に何があっても、危険を察知したら迷わず逃げてくれないか?」
「ぁ?
仲間を見捨てて逃げろってか?
そりゃ約束できねぇな」
「僕も、逃げるのはちょっと嫌かな……」
フヨウの申し出に対し、僕とショーンは同意しない。
「わかった。
僕が【転移】の魔石を持っていくよ。
二人が暴走しても、僕が【転移】を使って逃げる。
それでいいね、フヨウ?」
「なっ!」
クラールが冷静に返す。
と同時に再び【文書】が発動される。
『もちろん、危なくなったらフヨウも一緒に【転移】で飛んでもらうよ』
なるほど……
なら危険性は下がるな。
僕たち以上に、フヨウが暴走しそうだ。
「……それなら大丈夫だ。
クラール、冷静な判断を期待している」
フヨウも同意する。
◇
その後僕たちは、マヤシィナまでのポータルの使用許可を申請する。
麻痺薬や睡眠薬の納品、それから第五戦線でのサワナ様との狩りで僕のギルドランクは21まで上がった。
使用できるポータルも徐々に増やすことができている。
それから、僕とショーンとクラールは教会の一室にいる。
「そんで、なんでわざわざ【文書】まで使って俺たちをマヤシィナに連れて行こうとしたんだ?」
確かに、【文書】を使ってまで伝えたかった内容なんだろうか。
「端的に言うと、マヤシィナの動きが怪しい。
フヨウに同行すれば、マヤシィナで何が起きているかが分かるだろう」
「は?
なんだそりゃ?
なんでお前がそんなことするんだ?」
「確かに、それって僕たちが関与することなの?」
1つの街の動向を監視するってことだよな。
それなら、僕たち個人ではなく国の機関というか、そういったところが動けば良いのではないだろうか。
「疑問はもっともだね」
「そりゃそうだろ。
怪しいんだったら、王国が調査すればいい話だ」
「もしかして、その王国の調査ってのは……」
「ケン、気づいたかい?
その調査が僕たちってわけだ」
「はぁ?
ますます訳わかんねぇだろ。
なんで俺たちが?」
「ショーン、正確には父上がだよ」
「ぁ〜……なるほどな」
「えっと、イヴォンさんが実は王国に所属してて、それで今回マヤシィナを調査するって仕事がきたってこと?」
「そういうことだ」
「なんだよ。
そんなの直接フヨウに聞けばいいだろ?
わざわざ【文書】まで使ってコソコソすることか?」
「フヨウはマヤシィナの貴族だ。
祖国を売って、僕たちに情報を渡すとは限らないし、フヨウ自体が何も知らないかもしれない。
それにただちょっと動きが怪しいってだけだからね。
今回フヨウにくっついて行くくらいが丁度いいよ」
「にしてもなぁ……
フヨウに黙ってコソコソすんのは好きじゃねぇよ」
確かに僕もそういうのはあんまり好きじゃない。
「まぁ様子を見るだけだよ。
少しでも変なところがあれば、父上に報告すればいい。
何も無ければ、そのまま帰ればいいだけだ」
「まぁな……」
狭間圏
【司祭:Lv47(↑+6)】(【空間魔術師:Lv40(↑+7)】【魔闘家Lv36(↑+5)】)
HP:355/355(↑+1)
MP:11/922(↑+1)【司祭】:+194
SP:36/463(↑+3)
力:48(↑+1)
耐久:107
俊敏:65(↑+1)
技:40(↑+1)
器用:99
魔力:83(↑+1)【司祭】:+97
神聖:138(↑+1)【司祭】:+194
魔力操作:146(↑+1)【司祭】:+47
【回復魔法】Lv94+1
【ハイヒール】Lv52+1
【クイックヒール】Lv14+1
【ハイリカバリ】Lv66+1
【グレイトヒール】Lv5+1
【補助魔法】計+7
【体術】Lv15+1
【魔影装】Lv32+1
【魔影脚】Lv8+1
【魔影連脚】Lv8+1
【魔影連撃】Lv5+1
【降下耐性】計+9




