127日目(異世界)
「そろそろ潮時だな……」
サワナ様はそうつぶやくと、奥義【絶対氷雪】を発動する。
辺り一面が静かに凍りつく。
今日も第五戦線での狩りを終える。
「おい狭間、エクスポーションはどうなっている?」
「はい、今9つまで完成しました」
「ではあと1つ今日中に完成させろ」
「はい」
◇
「私は明日、ここを出る。
お前達、悪くなかったぞ」
サワナ様が言う。
随分と急だ。
「おいおい、第5戦線にもやっと慣れてきたんだ。
もう終わりなのか?」
「慣れた狩場で修行をしたところで、たかが知れているぞ?
それに、お前らも見ただろう。
しばらくは魔物が復活しない」
「確かに……」
連日のサワナ様の奥義で、なんと第5戦線の魔物が少なくなってしまったのだ。
そもそも、人間が住めないほどに魔物が出現する地域なのに、それを一掃してしまうとか尋常ではないよな。
でも、経験値の効率はずば抜けてよかった。
もう少しジョブ経験値を取得しておきたかったなぁ……
「魔物討伐によるジョブ経験値は、その名の通り、ジョブしか上がらん。
素のステータスには影響が無いからな。
私にくっついてくるだけでは、真の強者にはなれんのだよ」
「確かになぁ……」
ショーンは頭の後ろで手を組み、納得する。
サワナ様の言う通りだ。
ジョブによるステータス補正は大きいが、自分で戦わなければ素のステータスは上がらない。
このあたりが潮時なんだろう。
「それで、エクスポーションはできたか?」
「はい、これで全部です」
僕は10個のエクスポーションを渡す。
「ふむ……
まぁ質はそれほど良くないな。
【調合師】のジョブを得たばかりだから、こんなもんだろう。
よし、部位欠損の【回復魔法】だったな?」
「はい!
教えて下さい!」
「いいだろう。
私が直接見たのはもう何年も前のことだ」
おぉ、サワナ様は見たことがあるのか。
「私とイヴォンは同郷でな。
同じ師匠に魔法を教えられたのだ」
「レーゼ様ですか?」
クラールが言う。
イヴォンさんの師匠ということは、クラールも知っているのだろう。
「そうだ。
レーゼは私の父だ」
「賢者様の……」
うぉ……
なんかめっちゃ凄そう。
ぜひ直接会ってみたい。
「説教臭いジジイだったよ。
全ての生物を愛せ……完全なる無償の愛を……
ジジイの口癖だ」
「そのレーゼ様が最上位の【回復魔法】を使えるんですか?」
「そうだな。
だが、随分前にくたばったよ」
「そうなんですか……」
「お前、異世界で身体が動かないんだろ?」
「はい……」
「それで、上位の【回復魔法】が必要なんだな?」
「はい……」
「では何故前衛職や、攻撃魔法を鍛えている?」
「えっと……」
確かに……
日本で身体を動かすためには、上位の【回復魔法】が必要だ。
だけど、今僕は【聖職者】や【司祭】以外のジョブも鍛えている。
「もしかして、回復職に特化しなければ上位の【回復魔法】を習得できないんでしょうか?」
ヤバいな……
もしそうなら、すでに詰んでいる。
いろんなジョブに手を出しすぎた。
「いや、本質はそこではない。
狭間、質問に答えろ。
何故前衛職や、攻撃魔法を鍛えている?」
何故と言われると困るな……
どうしてだろうか……
僕は少し考え込み、答えを出す。
「楽しいから……でしょうか?」
「やはりな……」
サワナ様はニヤリと微笑む。
「上位の【回復魔法】習得には、恐らく【大司祭】のジョブが必要だ。
ジジイがそうだったようにな。
だが狭間、お前は【大司祭】よりもむしろ【賢者】に近いぞ」
「ぇ?
【賢者】ですか?」
「そうだ。
そもそも【賢者】には、【回復魔法】以外のものが必要だからな。
【空間魔術師】の習得も早かったし、やはり【賢者】の習得は可能だろうな」
「それはありがたいです……でも……」
「まぁ話を戻すか」
サワナ様は、紅茶を一口飲む。
「レーゼは回復職に特化していてな。
しかし、それを目指したわけではない。
自然とそうなったのだ。
完全なる他者への無償の愛……それがレーゼを回復特化にさせたのだ。
ジジイは……レーゼはよく言っていた。
自分のためではなく、他者のため、その思いが【回復魔法】を強化するのだとな。
狭間、お前はなんのために上位の【回復魔法】を習得したいのだ?」
「それは……日本での自分の身体のためです」
「だから習得が厳しいのだ。
私とイヴォンが【大司祭】になれなかったわけも分かるだろう?」
確かに、サワナ様やイヴォンさんからは、他者への無償の愛なんて感じられないな……
「確かに、サワナ様やイヴォンさんにゃ無理だな……」
ショーンがまたボソリとぶつやく。
「おいお前、今日はこれを着ておけ」
サワナ様が、またおかしな装備を【魔力庫】から取り出し、ショーンへ渡す。
ショーンは、しまったという表情をするが、しぶしぶ従う。
タンクトップのように肩が出ているが、丈は膝くらいまである。
それから胸元がざっくりと割れており、ショーンの引き締まった胸筋が見える。
色はやっぱり黒と紫だ。
とりあえず言えることは、クソダサい。
「餞別にくれてやろう」
「……ありがとうございます(いらねぇ〜……)」
「狭間、まぁ気を落とすな。
【大司祭】の素質が無くても、お前には【賢者】の素質がある。
【賢者】の素質があるものなどそうはおらん」
「はい……」
他者への無償の愛か……
狭間圏
【司祭:Lv41(↑+8)】【空間魔術師:Lv33(↑+12)】
HP:354/354(↑+2)
MP:7/913【司祭】:+182
SP:3/458(↑+4)
力:47(↑+1)
耐久:107(↑+1)
俊敏:64(↑+1)
技:39(↑+1)
器用:98(↑+1)
魔力:82(↑+1)【司祭】:+91
神聖:137(↑+1)【司祭】:+182
魔力操作:144(↑+1)【司祭】:+41
【回復魔法】Lv93+1
【ハイヒール】Lv51+1
【リヒール】Lv58+1
【ハイリカバリ】Lv63+1
【グレイトヒール】Lv4+1
【補助魔法】計+8
【体術】Lv14+1
【魔影装】Lv31+1
【魔影脚】Lv7+1
【魔影連脚】Lv7+1
【魔影連撃】Lv4+1
【降下耐性】計+9
【調合】Lv19+1
【ポーション合成】Lv36+2
【ハイポーション合成】Lv29+2




