126日目(異世界)
「狭間さん、お客様がお見えですよ」
「僕にですか?」
教会のシスターに呼ばれる。
僕にお客さんってすごい珍しいな。
そもそも異世界での知り合いなんてほとんどいないし。
「へい、ケンちゃん」
「アンティさんでしたか」
アンティさんが、片手をひょいと上げ、こちらに向かってくる。
「この前の聖職者を拉致してる集団いたじゃん?」
「はい、何か進展があったんですか?」
「そそ、とりあえず全滅させたわ」
「おぉ……全滅ですか……」
この人、絶対皆殺しにしてるよな。
「そんでさ、街なかは前より多少安全になってるから、一応ケンちゃんにも言っておこうと思ったのよ」
「わざわざありがとうございます」
アンティさんはテキトウなように見えるけど、きっちり報告までしてくれた。
すげぇ人殺してるし、見た目も怖いけど、多分良い人なんだろう。
多分……
「ギルドの人間が絡んでたって話でしたが、結構規模の大きな組織だったんですか?」
「まぁね。
ある程度でかかったし、トップ層はそれなりに強かったわ。
苦戦はしなかったけどな」
「おはよう、ケン。
お客さんかい?」
クラールだ。
「うん、この間話したアンティさんだよ」
「どもども」
アンティさんはクラールに軽く手を上げて挨拶する。
「彼がアンティさんか。
はじめまして、クラールと申します。
よろしくお願いします」
クラールがアンティさんに挨拶をすると、一瞬彼のまわりが輝いたのではないかと錯覚するほどに爽やかだ。
「うぉ、すげぇイケメン……」
「ほぉ……貴殿がアンティ殿か?」
サワナ様だ。
サワナ様も朝食を終えてちょうどやってきたところだ。
「あれ?
サワナ様もアンティさんのことはご存知なんですか?」
「まぁな。
お前にも言ったとおり、私は常に貴重な素材を集めている。
以前ギルドに出しておいた依頼を、アンティ殿がこなしてくれたことがあってな」
なるほど。
不老薬に必要な素材を、アンティさんがギルド経由で納品してくれたってことか。
「まいったなぁ。
俺って有名人じゃね?」
アンティさんは、頭をポリポリとかく。
「しかし、実際に見るのは初めてだ……」
ぁ……
サワナ様の鑑定が発動している。
「おい……」
アンティさんの声のトーンが低い。
!!
一瞬であたりの空気がピリつく。
アンティさんが急に真顔になり、サワナ様を睨みつける。
「あんた、賢者だろ?
勝手に鑑定すんのやめてくんねぇかな……」
「あぁ……不快だったか……」
「やたらと鑑定すんのは、あんまり褒められたもんじゃねぇな……
あんたが賢者じゃなかったら、即ぶっ殺してるところだ」
「そうか……それは失礼した」
うぉ……
あのサワナ様が引いた……
アンティさんってやっぱりヤバい人だよな……
「やべぇ、朝からちょっと食いすぎたな。
フヨウの半分くらいは食ったんじゃねぇか?」
「いちいち私と比べるのはやめてくれ」
ショーンとフヨウも朝食を終えてやってくる。
「あれ?
なんかタイミング悪かった?」
ショーンが言う。
「いや、ちょうどみんな揃ったし、狩りに行こう」
クラールが何事も無かったように言う。
「そんじゃ、俺は行くわ。
ケンちゃん、またな」
アンティさんは、またすぐに軽い感じになり、後ろ向きに手を振って帰っていく。
「誰だあいつ?」
ショーンが眉間にシワを寄せて言う。
◇
「それでサワナ様、どうだったんです?」
クラールがサワナ様に聞く。
「なんだ?」
「賊殺しのアンティですよ」
「あぁ、まぁ悪くはない。
だが、私の好みではないな。
あいつは調教したところで、私に従順にはならんだろう……
いたぶったところで、狂犬のように噛み付いてくるな。
私はもっと、子犬のように媚びてくる目が好みなのだよ」
サワナ様が何か言ってる。
「あの……鑑定結果について聞きたいのですが」
ですよね……
「ん?
なんだつまらんヤツだな。
ま、今後ヤツには関わらんことだな。
特に狭間、お前ヤツに気に入られているようだったが?」
「まぁ一度助けてもらってますけど……
何かマズイんですか?」
「……あんなどす黒い魂は初めて見た。
尋常ではない数の人間を殺しているぞ。
いや、それだけではないな……」
サワナ様は顎に手を当て考えている。
「人の理から離れているように見えたな……
強さも異常だ。
お前らが束になってかかっても、数分と持たんぞ」
「は? マジかよ」
ショーンは納得いかないようだ。
「恐らく何か、特殊な方法で強さを得たんだろう」
「特殊な方法ってなんだよ?」
ショーンがサワナ様に問う。
「さぁな……
まぁまっとうに狩りをするだけが強くなる方法ではない。
雑魚でも魔道具と装備である程度は強くなれるからな」
「アンティさんが、道具や装備に頼っているようには見えませんでしたが……」
アンティさんが賊を討伐したときの動きを思い出す。
素の状態でめちゃめちゃ強いように見えたけど。
「だから、よくわからんのだよ。
一つ言えるのは、お前らはヤツを参考にしないほうが良い
いいな?」
「はい……」
◇
「おい、フヨウ。
今日はお前の装備を用意してやったぞ」
「む?」
サワナ様がフヨウに言う。
フヨウはあからさまに警戒している。
変な装備なんじゃないだろうか……
ドサッ!
「これだ。
あとは、これで髪をまとめておけ」
ぉ?
意外と普通の装備に見えるぞ
「承知した……」
◇
今日はフヨウの動きがいい。
あの装備の影響だろう。
黒のジャケットに黒のパンツ、それから、銀色の髪留めで髪を短くまとめている。
端的に言うと、男前だ。
ちょっと学ランに近いような格好だな。
「ほほぉ……
悪くない、悪くないぞ……」
サワナ様もご満悦の様子で、フヨウを見ている。
この人は、男装した女子も好みなのだろうか……
狭間圏
【調合師:Lv31(↑+20)】【司祭:Lv33(↑+12)】【魔闘家:Lv31(↑+11)】
HP:352/352
MP:4/904
SP:2/444(↑+4)【調合師】:+112
力:46(↑+1)【調合師】:-10
耐久:106【調合師】:-10
俊敏:63(↑+1)【調合師】:-10
技:38(↑+1)【調合師】:-10
器用:94(↑+2)【調合師】:+81
魔力:81(↑+1)
神聖:136(↑+1)
魔力操作:141(↑+1)
【回復魔法】Lv92+1
【ハイヒール】Lv50+1
【リヒール】Lv57+1
【ハイリカバリ】Lv59+1
【グレイトヒール】Lv3+1
【補助魔法】計+8
【体術】Lv13+1
【魔影装】Lv30+1
【魔影脚】Lv6+1
【魔影連脚】Lv6+1
【降下耐性】計+10
【調合】Lv14+2
【ポーション合成】Lv24+4
【ハイポーション合成】Lv18+4




