123日目(異世界)後編
「ぇ?」
「おい! ボサッとするな! 【濁流槍】!」
ザシュザシュザシュッ!
気づくと、デススコーピオンの群れに囲まれている。
「ちょっ!」
何匹いるのかわからない。
かなりの数だ。
「うぉぉぉ!!」
バリバリッ!
ドゴォォン!
フヨウが全火力でデススコーピオンを薙ぎ払う。
「【アイスレイン】!」
クラールも全体攻撃に切り替える。
「【魔影脚】!」
ドスッ!
僕は一瞬遅れて攻撃に転じる。
ドガッ!
げっ!
死角からの攻撃に吹っ飛ぶ。
1匹に集中していてはダメだ。
僕は【空間魔法】の【パーセプション】を使う。
!!
おいおい!
すごい数だぞ!
僕は攻撃をかわしながら、次々に【魔影脚】を使っていく。
数が多いので、一匹に対し、連撃を使うことができない。
【魔影連撃】や【魔影連脚】は今は使わないほうがいいだろう。
ドガッ!
【魔影脚】を撃ち込んでは、攻撃をかわし、距離をとっていくしかない。
バギッ!
確実にダメージを与えているが、数が多すぎる。
マズイな……
フヨウやショーンに対し、明らかに僕だけが殲滅力が足りていない。
【魔闘家】は俊敏が高く、対人戦ではある程度有利に戦えるが、魔物の群れに対しては、劣ってしまう。
【昇仙拳】が使えないことも大きい。
攻撃のリーチが短いのだ。
「ダメだ!
僕は後衛に切り替える!
援護よろしく!」
「おぅよ!」
「了解!」
「了解した!」
僕はジョブを【上級聖職者】にし、【回復魔法】を使っていく。
特に、フヨウは防御行動をあまりとっていない。
防御面を犠牲にして、絶大な火力を生み出しているようだ。
僕が前衛から後衛に切り替えたことで、戦線が安定する。
ドガッ!
バキッ!
ドガガガッ!
ショーン、クラール、フヨウが次々に攻撃を撃ち込む。
僕は【ハイヒール】を中心に回復をしていく。
戦線が安定したといっても、敵の数が多すぎる。
バキッ!
「クソ! 数が多すぎるぜ!」
僕とクラールが後ろへ下がるかわりに、フヨウとショーンへの攻撃が止まらない。
ん?
ショーンとフヨウの動きが鈍る。
どうした?
「やべぇ! デバフだ!」
ショーンが叫ぶと同時に、僕の方にもデバフがくる。
前衛の能力だけでなく、後衛の能力、魔力や神聖まで下げてくるようだ。
「サイズが小さいのがいるはずだ!
そいつがデバフを使ってる!」
クラールが叫ぶ。
サワナ様からは、魔物の情報を出すなと言われていたクラールだが、そんなことを言ってられる状況ではない。
バゴーンッ!
僕が回復に気を取られていると、デススコーピオンの尻尾がくる。
尻尾の中心をもろにくらってしまい、吹っ飛ぶ。
「ケン! 大丈夫か!?」
僕はすぐに受け身を取り、みんなのところへ戻る。
デバフがヤバい……
耐性があっても、この敵の量には対応できない。
僕は【空間魔法】の【パーセプション】を使いつつ、吹っ飛ばされた位置から戻る。
「いた! あっちにサイズが小さいのが一匹いるよ!」
「了解! フヨウ! ここは頼んだ!!」
「了解した!」
ショーンはそう叫ぶと、僕が指差した方向に突進をする。
しかし、その方向には、デススコーピオンが何体もいる。
「邪魔だ! どけ! 【清流槍】!」
ブシャーッ!
ショーンの向く方向に、水しぶきが起き、デススコーピオンが薙ぎ払われる。
「こいつか!?」
ショーンは飛び上がると、サイズの小さいデススコーピオンの背中に体重をかけた槍を突き刺す。
「ギュエェェ!」
小さいデススコーピオンは耐久はそれほど無いようだ。
ショーンの一撃で沈む。
「よし! 立て直そう!
デバフが切れるまで、殲滅より防御を優先だ!」
ショーンが戻ると、前後にショーンとフヨウが配置され、僕とクラールはその間に挟まれる。
さっきの小さなデススコーピオンを倒したが、まだデバフの効果が残ってしまっているのだ。
全員が固まり、防御に徹すればそれほどダメージは受けずにすむ。
が……
ボコボコボコ……
地面から新たにデススコーピオンが湧き出す。
「おいおい……」
「く……」
やばいな……
かなりの速さで殲滅しているが、それでも敵の出現のほうが多い。
「なんとか耐えるぞ!」
そうこうしていると、今度は【補助魔法】の効果が切れてくる。
デバフがかかった状態で、【補助魔法】が切れるのはまずい。
「【補助魔法】をかけ直すよ!」
僕は急いで一通りの【補助魔法】をかけ直していく。
「しめた! デバフが切れたよ!」
「っしゃ! 反撃だ!」
クラール、ショーンが叫ぶ。
ぇ?
デバフが切れたと思った瞬間に、再びデバフがかかる。
「なんだ!?」
「またデバフだ!」
フヨウが驚き、クラールが言う。
僕はすぐさま【パーセプション】で辺りを確認する。
いた!
サイズの小さいデススコーピオンがまた湧いているんだ。
「最悪だ! 3体もいるよ!」
「マジかよ!?」
デバフを使うデススコーピオンが、3体、それも別方向に離れて出現している。
「ケン、一番近いヤツの方向を教えて!」
「あっちだ!」
僕はクラールに方向を教える。
「新スキル習得だ!」
ギギギッ!
クラールは魔弓を引き、力をためている。
ギギギッ!
「【天使の咆哮】!」
ビュッ!
ドガガガッ!
クラールの矢が放たれると同時に、デススコーピオンが錐揉み状に吹っ飛ぶ。
サイズの小さなデススコーピオンにも命中し、仕留める。
「いいぞ!」
「すげぇ……」
今のだけで、5,6匹は倒せただろうか。
「よし、ケン! 次だ!」
「あっちだ、さっきより少し遠く!」
僕は再び、デバフを使うデススコーピオンの位置をクラールに教える。
「あれ!? マズイ!! 使えない!!」
「おい!どういうことだ!?」
「わからない!再発動まで時間がかかるのかも!」
マジか。
クラールのさっきの技で一時的に敵の数が減ったものの、どんどん敵が増えている。
さらにデバフがかかったままだ。
「とにかく耐えるしかない! 防御に徹しよう!」
◇
もう何匹倒したのだろうか。
「はぁ……はぁ……」
「くっ……」
回復が追いつかないため、フヨウ、ショーンにダメージが蓄積されていく。
「クラール、まだか!?」
「ダメだ……一向に使える気配がない」
「ケン、すまないSP切れだ」
「了解!」
【昇仙拳】を使っているとはいえ、SPの消費も激しい。
僕はフヨウに【ハイリカバリ】を使い、SPの回復もしていく。
ドガッ!
フヨウが吹っ飛ぶ。
さらに、僕の方にもデススコーピオンの尻尾がくる。
ブンッ!
ドガッ!
「マズイ! 壁が崩れた!」
僕とクラールの壁となっていたフヨウが吹っ飛ばされたことで、デススコーピオンがなだれ込んでくる。
「ちょ!!」
僕が叫ぶと同時に、僕たちの周りが淡く光りだす。
……………………
「あれ?」
「【転移】だ」
どうやら、僕たち四人はまた【転移】で飛ばされたようだ。
「ふむ、まぁこんなものか……」
目の前には、優雅に紅茶を飲んでいるサワナ様がいる。
「はぁ……はぁ……」
いまいち状況が理解できていないが、僕はショーンとフヨウに【ハイヒール】を使っていく。
「なかなかの数がいるな」
さっきまで戦っていたところだろうか。
大量のデススコーピオンがいる。
「どれ……」
サワナ様は大きな杖を掲げる。
キュィーン……
杖の先に光が集る。
あれは……?
凄まじい魔力だ。
なんだこの鳥肌は……
「【インペリアルフレイム】」
ゴオォォ!!
杖の光が消えると同時に、デススコーピオンの群れが燃え上がる。
凄まじい爆炎だ。
カチャリ……
ぇ?
このタイミングで新しいジョブ?
「ギュエェェッ!」
デススコーピオンの断末魔の悲鳴が聞こえる。
メキメキッ!
甲殻が焼かれる音だろうか……
まさかあの大群を魔法一撃で終わらせたのか?
うぉ……
時間差で熱風がここまでくる。
「…………………………」
僕たち四人は黙ってそれを見ている。
デススコーピオンの群れがあった場所は、焼け野原だ。
サワナ様が杖を掲げる。
「【集魔石】」
ザァァァァ!!
サワナ様がそう言うと、大量の魔石が杖の先に集まってくる。
なんてことだ……
あの魔石の分だけ、デススコーピオンを倒したってことだ……
僕たちはその日、過去最高のジョブ経験値を手に入れた。
狭間圏
【司祭:Lv21(New ↑+21)】
HP:349/349(↑+1)
MP:9/883【司祭】:+142
SP:7/399(↑+2)
力:43(↑+1)
耐久:105
俊敏:60
技:35(↑+1)
器用:79
魔力:79(↑+1)【司祭】:+71
神聖:132(↑+1)【司祭】:+142
魔力操作:134(↑+1)【司祭】:+21
【ハイヒール】Lv47(↑+1)【ハイリカバリ】Lv46(↑+1)【グレイトヒール(New)】Lv0
【ハイアジリティエイド】Lv2(↑+1)
【魔影装】Lv25(↑+1)【魔影脚】Lv3(↑+1)
【降下耐性(計+9)】
【上級聖職者】はカンストです。