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122日目(異世界)後編

「おい、痛い目にあいたくなければ、大人しくしていろ」

逃げ場が無いように4人が僕の進路と退路を塞ぐ。

残りの3人は、僕が逃げたとき用に配置されているのだろう。


すげぇな。

アンティさんの言った通りだ。

一発でひっかかった。

異世界ってこんなに治安が悪かったのか……

それともこのヴァイツって街の治安が悪いのか。


このまま僕が大人しくして、アジトまで連れていってもらえば、アジトごと潰せるな。

ここは大人しくしていたほうが良さそうだ。


「がはっ!」

ドサッ!

賊の一人が倒れる。


ぇ?

アジト突き止めるんじゃないの?


バキッ!

ドサッ!


「ぐっ!」

ドサッ!


ドゴッ!

ドサッ!


僕を囲んでいた四人が、倒れる。

アンティさんだな。


「ケンちゃん、ナイスゥ!」

「ぁ、いや、まだ3人様子見てるヤツが」

僕は【パーセプション】で確認した情報をアンティさんに知らせる。


「それならもう倒したぜ」

「ぇ?」

マジかよ。

速すぎるだろ。









とりあえず7人全てを拘束している。

これからアンティさんが尋問をするみたいだ。


「あの、殺すのはやめませんか?」

「ぁ、そっか。

ケンちゃん、そういうのダメなんだっけ?」


「はい……」

「ぇ〜……

とりあえず最低一人は殺さないと、まともな情報ゲットできないじゃん」


何人かは、アンティさんを見て、目が泳いでいる。


「なぁ……話すぞ……」

賊の一人が口を開く。

まだ何も尋問していないのだが……どういうこと?


「あんた、賊殺しのアンティだろ?

話せば命は助けてくれるのか?」

「いや〜微妙。

だってそれ、ホントかどうかわかんねぇじゃん。

いつもなら何人かはソッコー殺すんだけど……」

アンティさんが僕の方を見る。


「アンティさん、話すって言ってますし、とりあえず話を聞いてみるのはどうです?」

「ん〜……

とりあえず一人殺すのはどうよ?」


「いや、だから話を聞いてから考えましょうよ」

「ん〜……

とりあえず一人殺してから考えるのはどうよ?」


「ちょ……

ナイフ、ナイフ一旦離しましょうか」

アンティさんが今にも賊にナイフを突き刺しそうだったので、ナイフを遠ざける。


「今、2人【聖職者】を監禁してるんだ。

俺がその場所を教えれば、情報が本当だってわかるだろ?」

「それってお前ら全員知ってるんだろ?

てことは、6人は殺せるわけだよな?」


この人は、とりあえず殺すことしか考えていないのだろうか……







「あの建物だな」

「この前もそうでしたが、結構普通の建物なんですね……」

僕はなんとかアンティさんを説得し、賊をギルドへ連れていった。

その後、賊が言っていたアジトに拉致されている【聖職者】さんの救出に来た。


ギルドからは、他の冒険者と一緒に攻略することを勧められたが、アンティさんが当然のように断った。

どうやら、相当な実力者でない限りは、アンティさんの足手まといになってしまうらしい。

僕も、おとりだから一緒に行動しているが、実際戦ったら足手まといになってしまう可能性がある。

なんにせよ、アンティさんが強すぎるのだ。


それから僕はアジト周辺に【パーセプション】を発動させる。

建物の中に3人、地下に2人いるぞ。

おそらく地下にいるのが拉致されている【聖職者】なんだろう。

「いますね。

中に3人……地下に2人です……」

「ぉ、ケンちゃんも分かるの?」


ケンちゃんもってことは、アンティさんも把握しているということか。

しかし、アンティさんは【空間魔法】を使えるようには見えない。


「はい、強さまではわかりませんが、中に3人いますね。

僕は【空間魔法】で分かるんですが、アンティさんは?」

「あぁ、俺?

俺は【索敵】だね。

あらら、罠もあるみたいよ?」


「罠まで分かるんですか?」

「まぁね。

てか、やっぱりぶっ殺しておけばよかったな。

アイツら罠のこととか言わなかったし。

見せしめに殺せば罠のこともしゃべったかも」

いやいや、しゃべってもしゃべらなくてもアンティさんの【索敵】で罠はわかるんじゃないだろうか……


「どうします?

奇襲をかけますか?」

「ぁ〜……」

アンティさんが半笑いで僕を見る。


「ケンちゃんさぁ、戦いたいんでしょ?

表情に出過ぎ」

「ぇ?

す、すみません……」

マズイな。

自覚は無いが、表情について言われるのはこれが初めてではない。


「なんとなくわかったわ。

ケンちゃん、殺すのは嫌とか言ってるけど、根っこの部分でヤバいのかも」

「そうなんですか?」


「そうなんだよ……

俺と同じってことだな!」

アンティさんは、また馴れ馴れしく肩を組んでくる。

ん〜……

イマイチ納得がいかないんだが……


「んじゃ、ケンちゃんが突入してみれば?」

「いいんですか?」

賊はアンティさんの獲物っぽかったけど、いいなら僕も戦ってみたい。


「そのかわり、逃げたやつは俺が殺しちゃうけどね。

殺すのが嫌なら、逃げられないようにちゃんと倒してな?」

「わかりました!」


「んで、罠は入り口に一箇所、地下の階段手前に一つだな。

わかる?」

僕は【パーセプション】を使ってアンティさんに言われた場所を確認する。

確かに、ボウガンのようなものがある。

扉を開けると発動するタイプのようだ。


「わかります。

矢が飛んでくる罠ですよね?」

「だな。

多分だけど、麻痺とか毒があんじゃね?」


「わかりました。

扉を無視して、壁を破壊します」

「おぉ、勢いでいくのね。

いいじゃんか」


僕は【魔影装】を発動させる。


【魔影脚】!!


バゴォーン!

勢いよく、壁を吹き飛ばす。


「「「!!」」」

3人は僕に気づくとすぐに構える。

動作が速いな。

この前のヤツらよりも明らかに強い……


だが、不意打ちのアドバンテージは大きい。


【魔影脚】!


ゴギッ!

ズガァーン!


一番近くにいた賊の振り向きざまに、右から【魔影脚】が入り、吹っ飛ぶ。

とっさに右腕を入れて防御したようだが、骨を砕いた感触がある。

すぐには動けないはずだ。


ザッ!

さらに正面にいた賊の懐にもぐりこむ。

「クソッ!

コイツ速いぞ!」

賊は武器を構えたまま防御体勢になる。


【魔影連撃】!


ズガガガッ!


「オルァ!」

右隣の賊がナイフで突きを繰り出してくる。


ザッ!


僕はナイフをかわすために、一旦後ろへ引く。


「何者だ……こいつ」

「クソが!」

僕に攻撃してきた賊が一番俊敏が高いだろう。

【魔影連撃】をくらわせた賊のほうは耐久が高いか?

ダメージはあるが、致命傷ではない。


ガタッ!

ガラガラ……

「いってぇな……

骨がイカれてやがる……」


さらに最初に【魔影脚】でふっ飛ばした賊まで起き上がってきた。


不意打ちの利が消えたな。

ここからは3対1で戦う必要がある。


全員が刃渡りの大きいナイフを構える。

賊は、魔物と戦うよりも対人戦を重視しているのだろう。

こいつら全員それなりの俊敏がある。

【魔影装】が無ければ、倒すことはできないレベルだ。


となれば、一番ダメージが大きい、最初に攻撃したやつにターゲットを絞る。


ザッ!

僕は踏み込み、接近戦を仕掛ける。


「させるかよ!」

当然、他の2人がこちらに接近をし、それを許さない。


……が。


ブシュッ!

ブシュッ!


残念。

そっちには【風魔法】の【エアブレード】が仕込んである。


「こいつ!

魔法まで!」


今までの戦闘で攻撃魔法については想定していなかったのだろう。

奴ら全員の反応が遅れている。


キタッ!

さらに新スキル習得だ。


魔影連脚(まえいれんきゃく)】!


ゴギッ!

バキッ!


僕は突進を左足で踏ん張り、右足をぐるりと回転させ、賊の左脇腹にかかとがめり込む。

さらに、そのままの回転力を活かし、左足のかかとが賊の肩にめり込む。


【辻風】!


狭い部屋の中に【風魔法】の【辻風】を打ち込む。

賊の一人を切り刻み、家具が辺り一面舞い上がる。


視界が悪くなるが、僕には関係ない。

【魔影装】でもう一人の賊に近づく。


【魔影連撃】!

ドガガガガッ!


最初の数発こそガードされたが、そこからは滅多打ちだ。


ドガガガガッ!


数カ所骨が砕ける感触がある。

これ以上はヤバいな。

殺してしまう。


ザッ!


「ハァハァ……」


最後の1人は【辻風】の発動が終わると、血だらけで、立っているのがやっとのようだ。


「クソッ!」


ザッ!


逃げようとするが、僕が背後から【ウィンドスマッシュ】を使う。


バゴッ!


さらに自分の発動した【ウィンドスマッシュ】のあとを追うように突進し、【魔影脚】をぶちかます。


ズゴォーン!


「ふぅ……」


ダメージこそ受けなかったが、結構てこずったな。


「やるねぇ、ケンちゃん。

この前雑魚に捕まってたとは思えねぇなぁ」

「なんとか逃げられずに倒せましたね。

とりあえず拘束しましょう」


僕とアンティさんは賊を拘束する。


「……ケンちゃん。

わりぃ、約束守れそうもないわ」

アンティさんの様子がおかしい。

声がいつものトーンではない。

「え?

どういうことです?」


「コイツ……ギルドで見たことあんだわ」

「冒険者ってことですか?」


「そうだな。

冒険者が冒険者売ってたってことだ。

ギルドの情報が漏れるわけだよな……」


アンティさんには、いつもの軽い感じの笑みがない。

無表情だ……


「こういうヤツは絶対に許しちゃいかんのよ……

絶対にな……」

「……………………」


ヤバい……

無表情のアンティさん怖すぎる……


「……………………」

「……………………」


アンティさんは過去に何かあったのだろうか……

殺しは嫌だが、とても止められるような雰囲気ではない。

軽々しく、やめるべきだなんて言えない状況だ。


「ケンちゃん、ゴメンな……

嫌なものは見ないほうがいい。

ケンちゃんはさ、下に捕まってる【聖職者】2人をギルドへ連れてってやってくれよ」

「はい……アンティさんは……?」


「それさ、ケンちゃんは聞かないほうがいいよ……

それなりのことはするから……」

「……はい」


僕は罠を解除し、地下から2人の【聖職者】を助け出す。


「ケンちゃん、ありがとな。

こっからは、俺一人でやるわ。

組織的っぽいから、それ潰すまではギルドにも顔は出さないと思う。

ここまでの報酬はケンちゃんが持ってっていいぜ」

「いいんですか!?」


「ハハハッ!

そこは貰うんだな!」

「はい、今お金結構ほしいんで……」


「じゃ、ギルドへの報告頼んだ!」

「はい!

任せてください!」


僕はその場を後にした。

やっぱり殺しちゃうんだろうな……

もっと酷いこともするのだろうか……


狭間圏はざまけん

【魔闘家:Lv12(↑+8)】

HP:364/348【魔闘家】:+16

MP:7/873(↑+1)【魔闘家】:+16

SP:3/393(↑+2)【魔闘家】:-28

力:42(↑+2)【魔闘家】:+7

耐久:105【魔闘家】:+7

俊敏:60(↑+1)【魔闘家】:+56

技:34(↑+3)【魔闘家】:+36

器用:77【魔闘家】:-28

魔力:78(↑+1)【魔闘家】:+7

神聖:131

魔力操作:132(↑+1)【魔闘家】:+36

【補助魔法】Lv76【ハイアジリティエイド】Lv1(↑+1)

【空間魔法】Lv66(↑+1)【パーセプション】Lv82【遠方認知】Lv8【文書】Lv44(↑+1)

【体術】Lv12(↑+2)

【魔影装】Lv22【魔影脚】Lv2(↑+1)【魔影連脚】Lv1(New↑+1)【魔影連撃】Lv2(↑+1)

【睡眠耐性】Lv12(↑+1)

【etc.90】


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― 新着の感想 ―
[一言] 殺しのハードルが下がると狂戦士になりやすくなるとかあるかもしれないしなるべく不殺主義で行動したほうがいいんじゃない あれ人がいるところで発動したら大虐殺事件起こってしまうし
[良い点] アンティさんかっこいい! やったれやったれー! 服装も好き!
[一言] 「僕はなんとかアンティさんを説得し、賊をギルドへ連れて行った」 いつまで、綺麗事を言い続けることができるのか楽しみですが、その綺麗事の為に他の人が迷惑を被らないように願います。
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