121日目(異世界)
「にわかには信じられない話ですね……」
「しかし、これまでのケンの行動を考えるとすべて納得がいきます」
イヴォンさん、クラールが言う。
今日は朝食後、応接室に、カルディさん、イヴォンさん、ショーン、クラール、フヨウと僕がいる。
僕が毎日異世界と往復しており、日本では寝たきり、MPが常に全快状態だということを話した。
「……てことは、その日本とかいう国の人間は、みんな平気でゲロをかぶるのか?」
「……いや、それは関係ないよ。
多分、僕だけだと思う」
僕のせいで日本人の間違った印象を持たれても困る。
きちんと否定しておこう。
「毒を食べる習慣はあるのか?」
「いや、それもない。
ていうか、そこ気にする?」
ショーンは変な方向に話を進めてくる。
ちょっと困るんだが……
ぁ、そうだ。
僕は【魔力庫】からペットボトルを出す。
「これ、日本から持ってきました。
こっちの世界で需要があるかもしれません」
「おぉ……!
なんですかコレは!!
ガラスではありませんね?」
いつも物腰が柔らかいカルディさんが珍しく興奮気味に話す。
「はい、日本では飲み物を入れる容器として使っています。
軽くて、軽い衝撃なら割れることもありません。
ポーションも入れておくことが可能だと思います」
僕はいくつかペットボトルを出す。
もともとゴミ捨て場にあったものなので、一応【水魔法】で洗浄し、キャップをしめて、みんなに見せる。
「ほほぉ……これは素晴らしい」
「イヴォン、これは道具屋である私の仕事ですよ?」
イヴォンさんがお金になると思ったのだろうか。
カルディさんが予め自分の仕事領域だと話している。
「たしかに、こんなものは見たことがないね……
だとすると、やっぱりケンの言っていることは事実なんだろう」
みんながペットボトルを見て納得する。
「確認したいのですが、その日本というところではMPが常時最大の状態であり、かつ狭間さんの場合は魔法が使えるということですね?」
「はい、それで魔法のスキルレベルを上げています」
イヴォンさんが確認をする。
「では、こちらから空の魔石を持っていけば魔法の補充はいくらでもできると?」
「はい、昨日はとりあえず【ヒール】100回分と【ハイヒール】150回分を補充しました」
イヴォンさんはニコリと微笑む。
あれだ……
お金の匂いを嗅ぎつけたんだろう。
「なるほど……
では、貴族の方々に【呪術】を使ってもらうのも、今日が最後で良さそうですね」
「どういうことです?」
「今日から大量の魔石を狭間さんに貸し出しますので、日本とやらで魔石の補充をお願いします」
「あぁ、なるほど。
そういうことですか。
でもいいんですか?」
「はい、信頼していますよ」
イヴォンさんは、またニコリと微笑む。
確かに、それでお金が稼げるなら異世界でのMP消費を抑えられるな。
◇
カルディさんにはペットボトルを買い取ってもらい、イヴォンさんからは大量の魔石を預かった。
これからは、教会の仕事である魔石への魔法の補充は、日本でできることになった。
みんな思ったよりも、異世界のことはすんなり受け入れてくれた。
どちらかというと、今までの僕のMPが不自然だったわけだし、ペットボトルの効果もあるな。
ということで、今日はまた暇になったわけだ。
ショーンたちと狩りに行ってもいいが、ちょっと試したいことがあるので、街から少し離れた森に来ている。
あまり魔物も出ない、かつ人もいない場所で、ゲロ風呂に入ったところだ。
あれでいいかな?
大きめの木を見つける。
よし、やってみよう!
僕は【魔影装】を発動させる。
【魔影装】による身体能力向上は、全身にいきわたり、それから、周囲の環境が手にとるようにわかる。
さらに【魔影装】のレベルが上がり、若干ではあるが、身体能力向上の操作ができるようになったのだ。
僕は右の拳を中心に、力と耐久を上げる。
この状態で【フレアバースト】をやってみる。
【魔影装】と同時に発動すれば、威力がさらに上がり、かつ無傷ですむ可能性もある。
「スー……ハー……」
僕は大きく深呼吸をし、目を閉じる。
【フレアバー……
ぁ……
これはマズイ……
失敗する……
しかし、発動する【フレアバースト】を止めることができない。
ドッゴオオォォォォォオオオン!!!
凄まじい爆風により、身体が吹っ飛ぶ。
ゴロゴロッ
ドガッ!
地面を転がり、地面の凹凸により飛び上がる。
ゴロゴロゴロッ
それでもまだ止まらない。
ドガッ!
バキッ!
地面からさらに吹っ飛び、木に背中をぶつけ、ようやく止まる。
「がはっ!」
僕は血反吐を吐く。
やばいな、既に【オートヒール】が発動している。
吹っ飛ばされたことにより、いくつかの骨が損傷している。
最も酷い負傷はやはり右手だ。
僕は【ハイヒール】を連発する。
危なかった……
もう少しでも出力を上げていたら、右手が吹っ飛んでいただろう。
これじゃスキルとして使い物にはならないな……
えっと。
僕が攻撃した木はどうなった?
回復が終わると、僕はさっきの場所までトボトボと歩いていく。
!!
なんだこれは……
木は跡形もない。
折れた、とかえぐれた、ではない。
粉々に吹っ飛んだのだろう。
さらに地面も大きくえぐれ、周りの木々までひしゃげている。
……とんでもない威力だ。
しかし、あの感覚……
とても制御できるようなものではない。
【魔影装】のスキルを上げていけば、もっと身体能力向上の操作ができるようになるだろう。
あとは、考えられるとすれば技だな……
今の僕のステータスは技が極端に低い。
技を上げれば、あるいは使えるようになるのだろうか……
狭間圏
【魔闘家:Lv4】(先日の賊を倒したことで上がっています)
HP:360/348(↑+1)【魔闘家】:+12
MP:7/862【魔闘家】:+12
SP:9/386(↑+2)【魔闘家】:-30
力:40【魔闘家】:+5
耐久:105(↑+1)【魔闘家】:+5
俊敏:59【魔闘家】:+52
技:31(↑+1)【魔闘家】:+30
器用:74【魔闘家】:-30
魔力:77【魔闘家】:+5
神聖:131
魔力操作:131【魔闘家】:+30
【ハイヒール】Lv45(↑+1)
【魔力庫】Lv77(↑+1)
【睡眠耐性】Lv11(↑+1)
【炎耐性】Lv34(↑+1)
【痛覚耐性】Lv7(↑+1)
【ストレージ】Lv60(↑+1)
【etc.(95)】




