119日目(異世界)後編
ここはどこだろうか……
積荷に乗せられ、しばらくすると、目隠しを外される。
小さな部屋だ。
窓が一つもなく、周りは土壁。
地下の可能性もあるな。
部屋にはさっきの男たちだろう5人と、僕と同じように手錠と足かせを付けられた人が一人いる。
扉を塞ぐように人が立っているので、逃げることはできないだろう。
「おい、座れ」
部屋の中央に木製テーブルが置いてあり、それをはさんで向かい合った木製の椅子が置いてある。
「………………」
僕は言われたとおり、部屋の奥側の椅子に座る。
完全に逃げ出せない配置だ。
「おい、この【魔闘家】ってのはなんだ?
お前回復職じゃないのか?」
これから尋問がはじまるのか?
僕を拉致した一人の男が、僕のギルドプレートを見ながら聞いてくる。
「金銭が目的ではないんですか?」
金が目的なら、とりあえず渡すのでさっさと解放してほしい。
バギッ!
突然顔面を殴られる。
「おい、質問してんのは俺だ。
お前は質問にだけ答えろ……」
正面の男の力はそこそこだな。
痛いのは痛いけど、それほどのダメージは無い。
【魔影装】が無くても普通に戦えるレベルだ。
武闘大会の2回戦くらいだろうか。
【補助魔法】と【風魔法】、【フレアバースト】があれば普通に倒せるだろう。
そうなると、扉の前のヤツがボスか?
さっき街で僕を囲んだ4人ではなく、最後に僕の前に出てきたヤツだ。
多分だけど、アイツはちょっと強い。
しかしこの状況は非常にマズイな……
大人しく質問に答えておくか。
「【魔闘家】は最近習得したジョブでよくわかりません。
パーティーを組むときは【聖職者】のジョブを使うことが多いです。」
「ほぉ……お前MP特化だな。
こいつは大当たりだ。
ジョブは【司祭】か?」
大当たり、か。
以前カルディさんが、MPを狙ってくる輩がいると言っていたが、恐らく彼らがそれだろう。
【聖職者】などの回復職のMPを利用しようというわけか。
僕の後ろにいる、手錠と足かせをされている一人も拉致された回復職の可能性が高い。
「いえ、回復職は【上級聖職者】までしか習得していません」
バキッ!
また顔面を殴られる。
ボタ……ボタッ……
同じ場所に2発の攻撃を受けて鼻血がでる。
「おい、このMPで【上級聖職者】なわけねぇだろ。
【司祭】のジョブがあんだろ?
隠すとためにならんぞ……」
「いえ、本当にありませ……」
バキッ!
おいおい……
耐久が……上がっちゃうじゃないか……
「な……なんだコイツ……」
「笑ってやがる……」
ぁ、しまった……
僕はすぐに表情をもとに戻す。
「てめぇ、自分の状況がわかってんのか?」
「すみません……
【司祭】のジョブはありませんが、【補助魔法士】と【呪術師】があります」
僕を尋問している男が、振り返り、扉の前のボスであろう男を見る。
「そうだな。
恐らく本当のことだろう。
【補助魔法士】や【呪術師】のジョブまで上げているとなると、【司祭】を習得していない可能性も十分にある」
ボスっぽい男が話す。
「おい、お前も明日からここでそいつと仕事をしろ。
仕事内容については、後ろのやつから聞いておけ」
男は手錠ごと僕の腕を引っ張る。
そして僕の左小指を掴む。
「おい、わかってると思うがくれぐれも逃げようとすんなよ」
ボキッ!
小指を思いっきりひねられ、折れてしまう。
僕が逃げないように、念押しをしたかったようだ。
だから……
耐久が……上がっちゃうだろ……?
「また笑ってやがる……」
「あの、できれば属性攻撃でお願いできませんか?」
「おい、ふざけんなよ!」
ボキッ!
今度は薬指を折られる。
残念……属性攻撃は使えないのだろうか。
「クソ気持ちの悪い野郎だな……」
「ステータス特化はイカレた野郎が多いんだよ。
こういうヤツは痛めつけても無駄だな」
「チッ……おい、こいつに説明しとけよ」
「はい……」
そういうと、男たちは部屋から出る。
ギィー……ガチャン!
重そうな扉が閉まる。
金属製の分厚い扉だ。
僕たちが逃げないように、外から鍵がかけられたようだ。
「君も災難だったね……【ヒール】」
僕以外に捕まっていた青年だ。
さっき折られた指と顔面を回復してくれる。
「ありがとうございます」
「僕も君と同じように拉致されてね。
ここでこき使われているよ」
「彼らの目的はやっぱりMPなんですか?」
「そうだね。
毎日空になった魔石をいくつか持ってくるんだ。
ほら、そこに置いてあるだろう?」
部屋にはいくつかの箱が置いてあり、そこに魔石が入っている。
「毎日できるだけあそこに【ヒール】と【ハイヒール】をするんだ」
「なるほど、それで彼らは利益を得ているわけですね」
「そうだね……
僕たち回復職は、神聖とMP以外のステータスが低い。
だから、一度拉致されてしまうとどうにもならないよ……」
「確かに、ステータス的には厳しいですよね」
でもおかしいな……
「彼らは僕のステータスを知っていて襲ってきたんでしょうか?」
「そうだと思うよ。
街でギルドカードを提示するときが無かった?」
「ぁ、ありました。
ポータルを使ったときと、ギルドへ納品したときです」
「恐らくそのときに、見られたんだよ。
力や魔力がそれほど高くなくて、神聖とMPが高い人間なら対人は弱いからね。
ステータスからターゲットにされたんだと思う」
「なるほど……」
「でもきっと大丈夫だよ。
ギルドが動いてくれている。
魔石の販売ルートだって限られているし、しばらくすれば助けが来るはず……」
「そうですね。
多分明日になれば、大丈夫だと思いますよ」
「ぇ……?」
明日になればMPが全快する。
あの程度なら、【魔影装】があれば問題なく殲滅できるはずだ。
しかし、MPが切れた状態でフラフラするのは危険なんだな……
異世界に来て、これまで犯罪者には一度も会わなかった。
文明のわりに、治安がいいと思って油断していた。
反省しなくては……
狭間圏
【魔闘家:Lv0】
HP:357/347(↑+2)【魔闘家】:+10
MP:7/841【魔闘家】:+10
SP:12/373(↑+1)【魔闘家】:-30
力:38【魔闘家】:+5
耐久:104(↑+1)【魔闘家】:+5
俊敏:58【魔闘家】:+50
技:29【魔闘家】:+30
器用:69(↑+1)【魔闘家】:-30
魔力:77【魔闘家】:+5
神聖:131
魔力操作:128【魔闘家】:+30
【回復魔法:Lv88(↑+1) エリアヒール:Lv32(↑+2)オートヒール:Lv47(↑+3)】
【呪術:Lv4(↑+1) バイタルブレイク:Lv3(↑+1)マナブレイク:Lv0(New) スキルブレイク:Lv0(New) パワーブレイク:Lv4(↑+1) アーマーブレイク:Lv4(↑+1) スロウ:Lv4(↑+1) ヒットブレイク:Lv0(New)マジックブレイク:Lv0(New) ホーリーブレイク:Lv3(↑+1)】
【自己強化:Lv9 不屈:Lv0(New)】
【睡眠薬生成:Lv13(↑+1)】
【etc.(85)】




