114日目(異世界)後編
僕とショーンは、二人だけでノゥヴ湿地へ来ている。
クラールは、ノゥヴ湿地は遠慮したいようだ。
「なんかさ、イヴォンさんにまんまとやられたような気がするよ」
「だろうな」
今の僕のジョブは【補助魔法士】だ。
本来なら【魔闘家】のジョブを強化したいのだが、デバフメインのジョブを習得するために、ジョブを【補助魔法士】にしておく必要がある。
そうでなければ、絶対にデバフメインのジョブを習得できないというわけではないが、可能性としては圧倒的に高くなるらしい。
「クラールにもあんなに頼まれちゃったし、こうするしか無いよね……」
「まぁな、あいつの嫌がり方は異常だったぜ」
ノゥヴ湿地は魔物が出る湿地帯だから、どんよりしているのかと思ったが、意外にも見晴らしが良い。
足場がベチャベチャとしているので、歩きにくいが……
「よし、さっさと奥へ行こうぜ。
どうやら魔物はそんなに強くないらしいからな。
耐性の強化と、ケンのジョブ習得が目的だ」
◇
湿地の奥へ行くと、徐々に沼地が紫色になっていく。
「おい、これ毒じゃないか?」
「そうなの?」
「そうなのってお前……そうか、毒喰らいだったな」
「ぁ〜……僕の【毒耐性】があるから、効かないってことか」
どうやら沼地自体に毒があるらしいが、僕は【毒耐性】があるため影響がないようだ。
「ショーン、どうする?
【アンチポイズン】やったほうがいい?」
「ん〜……ここは敵もそんなに強くないし、放っておいてもいいのかもな。
そうすりゃ俺も【毒耐性】が得られるってわけだろ?」
「了解、じゃ回復はしないでおくよ」
しかし、毒の沼地か……
これくらいの毒じゃもう【毒耐性】は上がらないな。
沼の毒を直に飲めば、あるいはもう少し耐性を上げられるかもしれないが、自分で作った毒薬があるからそっちで頑張ろう。
なにより、ここで沼の水を飲んだら、ショーンが絶対に引くだろうし。
「なるほど、クラールが嫌がるわけだな。
ケン、見てみろよ」
「ん?」
沼地の奥の方に、ちょうど人間と同じくらいの大きさの黄色いカエルがいる。
あれがここの魔物だろう。
「あれって?」
「リバースフロッグっていうらしいぜ。
クラールはカエルが嫌いなんだよ。
あと、沼地も嫌なんだろうな」
「なるほどね」
「んで、ケンは【補助魔法士】にして、とにかくあいつの攻撃をくらえばいいらしいぞ」
「そうか、それで耐性をつけるんだね」
「みたいだな、頃合いを見て俺が倒せばいいんじゃねぇか?」
「了解、それでいってみよう」
僕たちは徐々に距離を縮める。
奥にはさらに数匹、小さな群れで行動しているのだろうか。
「ゲゴッ!」
「でっけぇカエルってのも気持ちが悪ぃな……」
リバースフロッグは鳴き声を上げると、腹を大きく膨らます。
さらに、膨らみが徐々に上に上がっていき、顔が大きく膨らむ。
「なんか……すげぇ嫌な予感がするぞ……」
「ゲボォッ!」
ドシャァッ!
リバースフロッグは口から大量の嘔吐物を吐き出す。
「うぉ!」
「おっと」
速度はそれほどでもないので、反射的に避ける。
「なるほどな、リバースフロッグってのはこういうことか。
って、ちょっと待った!」
「今のをくらえばいいってことだよね?」
「ケン……頼む、俺も無理だわこれ……」
そりゃクラールは無理だろうな。
ショーンもこういうのは無理なんだろうか。
再びリバースフロッグの腹が膨らむ。
「来るぞ……」
ショーンが嫌そうな顔をして身構える。
「ゲボォッ!」
僕はすかさずリバースフロッグの嘔吐物に飛び込む。
「なっ!」
うぅっ!
きったねぇ〜……
うげぇ……
すっぱい臭いがする……
もらいリバースしそうだ……
しかもなんだよこれ、ネバネバして動きにくい。
「おい、あとは任せろ!」
ショーンがあっというまに辺りのリバースフロッグをやっつける。
やっぱり強さ的にはそんなでもないな。
僕でも【風魔法】があれば【魔影装】なしで普通に倒せそうだ。
「おい、大丈夫か?」
ショーンが駆け寄ってくる。
「うん、まぁ……」
「げっ!
できれば近寄るなよ……」
「なんだよそれ……」
「いや……わりぃ……
てかさ、なんでわざわざ頭から突っ込むわけ?
とりあえず手で触れるとかでも、耐性が得られるかもしれないだろ?」
「ぁ……確かに……」
「確かに……じゃねぇよ、お前やっぱおかしいぞ……」
「いや、だってさ、普通戦いでなんらかのスキルを習得するのって大変だよ。
下手したら命がけじゃん。
それをゲロかぶるだけで強くなれるなら、突っ込まない?」
「いやいや、そもそもそれ毒だろ?
それも命がけだろ」
「ぇ?
これ毒なの?」
「毒だよ」
マジか。
【毒耐性】が上がっているので、頭からかぶっても全く毒によるダメージは無い。
「んで、なにか変化はあるのか?」
「ぁ〜……
すっごい動きにくいよ。
感覚的には、俊敏、耐久、神聖が下げられてるかな」
「マジかよ。
黄色のリバースフロッグは防御系のデバフをしてくるって話だったが、神聖まで下がるのか?」
「そうみたいだね……
黄色のってことは、他の色は違うの?」
「らしいぞ。
クラールの話だと、赤は攻撃系のステータスを下げてきて、緑はHP、MP、SPを下げてくるって話だ」
「おぉ、てことはここで頑張れば、一通りの耐性をつけることができるってことだね!」
「そ……そうだな(こいつ、すげぇやる気だな)」
「えっと、僕は毒が効かないし、このままの状態でいればいいのかな?」
「そうだな……それ、しんどくないか?」
「でもまぁこれで耐性つくなら全然いけるよ!」
◇
暇だ。
あれからたまにリバースフロッグの嘔吐物をかぶり、あとはショーンが殲滅するのを見てるだけ。
ショーンは毒で若干のダメージを受けるため、たまに回復をする。
「おい、赤がいるぞ」
「ホントだ」
「とりあえず1匹残して、全部倒しちまっていいか?」
「そうだね」
僕はまたショーンが殲滅するのを見ている。
そして、数が減ってきた頃、一匹のリバースフロッグの腹が膨れ上がる。
「ゲボォッ!」
今だ!
ドシャァッ!
うぅ……
俊敏が下げられていて、動きが遅い……
が、こっちを狙ってきているので、やつの嘔吐物をかぶることができた。
「おい、やっちまっていいか?」
「う……ん……」
あれ?
やばい……
身体が動かない……
立っていられなくなり、沼地に倒れる。
ドシャッ!
ショーンが素早く敵の殲滅をするが、僕の方は全く身体が動かない。
これって……
「おいケン、大丈夫か?」
「………………」
僕は沼地にうつぶせになっている。
ちょ……
顔面が沼地に向くので苦しい。
「麻痺だな」
ショーンが槍の柄で僕をひっくり返す。
僕は身体を動かそうとするが、ピクピクするだけだ。
ショーンは槍の柄で僕をつんつんと突っつく。
「お前さ、これで【麻痺耐性】もゲットできる!とか思ってんだろ」
「………………」
もちろんだ!
狭間圏
【補助魔法士:Lv12(↑+12)】
HP:317/345【補助魔法士】:-28
MP:4/794【補助魔法士】:+32
SP:6/320(↑+1)
力:38【補助魔法士】:-18
耐久:101(↑+1)【補助魔法士】:-18
俊敏:57【補助魔法士】:-18
技:29【補助魔法士】:-18
器用:50
魔力:74
神聖:127
魔力操作:122【補助魔法士】:+16
【回復魔法:Lv81(↑+1) オートヒール:Lv39(↑+1)】
【耐久降下耐性:Lv0(New) 俊敏降下耐性:Lv0(New) 神聖降下耐性:Lv0(New)】
【麻痺耐性:Lv0(New)】
【風耐性:Lv4(↑+3)】
【etc.(68)】
※事故の後遺症の麻痺と、状態異常の麻痺は別物として扱っています。




