114日目(異世界)前編
痛い……
今日も朝から【オートヒール】の魔石生成に来ている。
ちなみに今日はクラールに【旋風撃ち】をしてもらい、【風耐性】を強化している。
カルディさんのMPの関係上、昨日の3分の1程度で終了する。
さらに、自室で魔石への魔法の補充をしたため、今日の教会の仕事はこれで終了だ。
「ぁ、そうだ。
カルディさん、これ買い取っていただけますか?」
僕は自室で生成しておいたポーションを【魔力庫】と【ストレージ】から取り出す。
「おぉ……これはポーションですね。
もちろん買取可能ですよ。
薬草に関しても、ポーションに関しても常に在庫は欲しいところですから。
ちなみに今狭間さんが生成できるのは、毒薬とポーションですか?」
「はい、あとは毒消しポーションも生成できます」
「なるほど。
毒草や薬草も生成可能でしょうか?」
「はい。
いつも【薬草生成】のあと、【ポーション生成】をしています。
あとは【毒草生成】のあと、【毒薬生成】か【毒消しポーション生成】をしていますね」
「ほぉ……
それはSPがもったいないですね。
薬草や毒草は割と安価で仕入れることができます。
それを使って【ポーション生成】や【毒消しポーション生成】をしたほうが金銭的には効率的ですよ」
「なるほど、そうなんですね。
やっぱり【毒薬】の需要はそれほど無いんでしょうか?」
「そうですねぇ。
毒を使って魔物を狩る場合、素材が売れなくなることが多いので、あまり好んで使う人はいなんですよ。
それにしても、よくこれだけのポーションを生成できましたね」
カルディさんは顎に手をあて、感心したように言う。
「……………………
狭間さん、もしかして【リカバリ】を習得しましたか?」
「はい、そうなんです。
【ハイリカバリ】も習得しました」
さすがカルディさん、一度ポーションを買い取ってもらうだけで理解してしまったようだ。
「なるほどなるほど。
それで、狭間さんの世界で無尽蔵に【薬師】のスキルを使いこなせるようになったわけですね」
「そうです。
だから【薬草生成】や【毒草生成】などの原料から生成することができるんですよ」
「それは素晴らしい……
【薬草生成】などの原料スキルと【ポーション生成】などの加工スキルを両方上げていけば、相当上質な回復薬ができますよ。
しばらく鍛えていけば、【上級ポーション生成】を習得できるでしょう」
「はい! 頑張ります!」
生産系スキルの強化も面白いな。
今後も自室で強化していこう。
「それで、今僕が生成できる中で需要が高いのは、ポーション、毒消しポーション、毒薬の順番で合っていますか?」
「えぇ、そうですね。
ただし、先程も言いましたが、毒薬の需要はほとんどありません。
毒消しポーションもポーションの10分の1くらいの需要でしょうかね」
「わかりました。
では、今後は10:1くらいの割合でポーションと毒消しポーションを生成しておきますね」
「ありがとうございます。
ポーションの需要はかなり高いですからね」
ちなみに毒薬の需要はほぼ無いが、【毒薬生成】は今後もしていく。
自分で飲む用だ。
【毒耐性】のスキルを上げておきたいし。
◇
教会へ戻ると、イヴォンさんがいつもの満面の笑みで待機していた。
ショーンも教会で僕とクラールを待っていたようだ。
とりあえず、先程生成した【オートヒール】の魔石と、日本で補充した【エリアヒール】を渡しておく。
「ほほほ、素晴らしいですよ狭間さん。
明日もよろしくお願いしますね」
「おぅ、それじゃ狩りに行こうぜ」
「そうだね」
昨日とは違い、今日は僕のMPがまだまだある。
それで3人で狩りに行く予定だ。
「なぁイヴォンさん、第五戦線ってどうなんだ?」
「第五ですか……
あそこは魔物が強力ですからね。
ポータルを使うにしても、特別な許可が必要です。
まぁ私が言えば、許可はもらえないことはないでしょう」
「ぉ、それじゃ頼むぜ。
早く【昇仙拳】を使いこなしたいし、どんどん実戦で鍛えたほうがいいだろ」
「いえ、ダメです」
ぇ……ダメなの?
「なんでダメなんだ?
【昇仙拳】を習得して、威力も上がったし、実質SPも大幅に上がったようなもんだ。
強敵なら望むところだぜ」
「デバフです」
「デバフ?」
デバフってなんだろう。
どっかで聞いたことがあるような、無いような……
「ケン、ステータス降下だよ。
ケンの使う【補助魔法】とは対照的にステータスが下げられる。
第五戦線はデバフを使うモンスターが出るって聞いたことがある。
どれだけ腕に自信があっても、ステータス降下で弱体化されれば戦いは不利になる」
「それって、ケンの【補助魔法】があってもやべぇのか?」
「狭間さんの【補助魔法】は上位のものもあり、MPも豊富ですからね。
なんとかなるかもしれません。
しかし、デバフ対策をしていないものに許可を出せば問題になるでしょう」
「ステータス降下ってなぁ……
なんつーか、思いっきり戦いてぇよ」
「その思いっきり戦うにしても、対策は必要ってことだね」
「そうですね。
3人にはノゥヴ湿地に行ってもらいましょうか」
「!!
無理です!!
僕は絶対に行きません!!」
クラールが過敏に反応する。
それほど危険な場所なんだろうか。
「ほほほ、それならば第五戦線には行けませんね」
イヴォンさんがニコリと微笑む。
悪い顔だ……
「私に一つ案があります。
それを採用すれば、あなたはノゥヴ湿地へ行かなくても良いかもしれませんよ?」
「……なんでしょうか」
「簡単なことです。
狭間さんに【呪術師】や【シャーマン】のジョブと各種デバフの魔法を習得していただければいいのですよ」
ぇ?
何?
僕?
「なるほど……ケン、頼んだ!」
クラールは僕の両肩に手を置き、一点の曇りもない目で見つめてくる。
はいはい、超絶イケメンですね。
「何々?
どういうこと?」
「【呪術師】や【シャーマン】っていうのは、デバフメインのジョブなんだ。
それをケンに習得してほしい。
ケンがジョブを習得して、デバフの魔法を覚えれば僕やショーンのデバフ耐性が上げられるんだ。
だからケン、ノゥヴ湿地で是非【呪術師】のジョブを習得してくれ!」
「ぇ、全然いいけど、それならクラールも一緒に行けばいいじゃん」
「それは絶対にできない。
絶対にできないんだ……」
「なんでもいいから早く行こうぜ?」
ショーンがあくびをしながら言う。
ノゥヴ湿地ってそんなにやばい場所なんだろうか……