113日目(異世界)
朝一にイヴォンさんに呼び出されている。
部屋には僕とクラールがいる。
やってしまった……
教会での仕事を完全に忘れていた……
いくらフリーの職員だからといって、これだけの日数を空けるのはよろしくなかっただろう。
そんな考えの表情を読み取られてしまったのだろうか。
クラールが話しかけてくる。
「ケン、フリーの職員が一人いなくなっても全く問題ないよ。
父上は常にそういう可能性も考えながら経営しているはず」
「だといいんだけどね。
さすがに仕事を放り出して修行に行くってのは良くないよね……
あと、家賃払わないといけないんだった」
しばらく修行しかしていなかったので、大したお金も持っていないし、今日からきちんと教会で働こう……
ガチャ
部屋にイヴォンさんが入ってくる。
ぉ、カルディさんも一緒だ。
「みなさんお揃いでしたか」
いつもの笑顔対応だ。
なんか笑顔が怖いんだけど、気のせいだろうか……
「では、早速騎士訓練所のほうへ行きましょう。
既に予約はとってありますよ」
「はい、では魔石の生成ですね?」
クラールが確認する。
カルディさんが一緒ということは、そういうことだろう。
「そうです。
しばらく空いてしまった分、魔石を大量に購入しておきました」
「す、すみません。
長い期間空けてしまって」
「いえいえ、フリーの職員はもとより自由です。
それに修行をしてきたということは、何か成果があったのでしょう?」
「はい! いろいろとスキルを習得しました」
イヴォンさんの目がカッと開く。
「ほぉぉぉ……それは素晴らしい!
ではでは、魔石の生成のあとに詳しくお話を聞かせてください」
やっぱりちょっと怖いんだけど……
◇
魔石の生成は以前と同じ流れだ。
僕が【オートヒール】を習得しているので、イヴォンさんが大量の魔石を入手したらしい。
今日はクラールと一緒に来ているので、まずはクラールの【ホーリーアロー】で光属性の攻撃を受ける。
ドドドッ!
「ぐっ!」
うん、やっぱり以前よりも威力が上がってるよね。
【昇仙拳】の影響だろう。
「うーん……
まだ弓で【昇仙拳】を使うことには完全に慣れないな。
SP消費は少しだけ減っているみたいだけど……」
「いやいや、前より威力上がってるよ。
それにこれを機会に僕に攻撃することで【昇仙拳】を慣れるといいんじゃないかな」
「そう言ってもらえると助かるよ」
フフフ……
そして僕は【光耐性】を強化することができる。
ドドドッ!
いくつもの光の矢が盾に突き刺さり、僕にダメージが入っていく。
いい感じにHPが減ってきた。
「それではカルディ、そろそろ【魔導命令】を使ってください」
「えぇ、わかっていますよ」
ドサッ!
イヴォンさんが、【ストレージ】から大量の魔石を出す。
「ちょ……」
マジか!?
こんな大量の魔石を使うのか。
「イヴォン……狭間さんが帰ってくるとはいえ、少々がっつき過ぎでは?」
「ほほほ……少し張り切ってしまいましてね。
カルディ、MPは持ちますか?」
「この量だとちょっと怪しいですね……
できるところまではやりますが……」
「ではお願いします」
カルディさんが10cmくらいの魔石を手に取ると、淡い光を放つ。
僕はそれを持ったまま、さらにクラールの【ホーリーアロー】を受け、【オートヒール】が発動する。
ぐぬぬ……
お金になるし、【光耐性】と【オートヒール】のスキルを上げることができるからいいんだけど、【オートヒール】は痛いんだ。
結構なダメージをもらわないと発動しないし、HPが減った状態を維持しなければならないので、回復ができない。
てことで、魔石生成中はずっと痛い。
【オートヒール】が約10回分ほど発動したタイミングで、魔石の生成が終了する。
「続けてもう一つできますか?」
マジか。
「えぇ、いけます……」
このまま回復せずに、2個目の【オートヒール】の魔石の生成だ。
カルディさんから、再び魔石を渡される。
◇
「終わりです。
私のMPが切れました」
カルディさんが言う。
【オートヒール】の魔石5個、【エリアヒール】の魔石を5個を生成した。
「では今日は終わりにしましょう。
狭間さん、カルディ、明日もまたお願いできますか?」
「えぇ、しかし今日MPを使い切ってしまいましたので、明日は3個程度しか生成することはできませんよ」
「わかっています。
狭間さん、まだMPはありますか?」
「はい、まだ少しだけ残っています」
かなりのMPを消費したな。
【オートヒール】の魔石を5個生成する際に、一つの魔石につき10回、50回ほど【オートヒール】を使った。
【エリアヒール】についても同じだ。
「今日は、魔石の生成以外に、補充もやっていただきたいのですが、よろしいですか?」
「はい、もちろんです」
さらに空の【エリアヒール】の魔石に補充をしていく。
やばいな、さすがにMP切れだ。
「MPが無くなりました」
「ありがとうございます。
では、魔石については以上ですね。
それから昼食後、応接室の方へ来てください。
修行の話も聞きたいですしね。
クラールも同席しなさい」
「「はい、わかりました」」
◇
僕とクラールはイヴォンさんに言われた通り、昼食後に応接室へ来た。
ちなみにショーンもいる。
「しかし、父上の気合の入りようは凄かったね。
まさかあれほどの量の魔石を用意しているとは……」
「そうだね。
午前中にMPが切れたのは久しぶりだよ」
「んで、なんで俺まで呼ばれてるわけ?」
ショーンがぼやく。
「父上は修行の成果が聞きたいようだから、一緒に修行したショーンにも話を聞きたいんじゃないかな」
「それだけならいいけどな。
また親父に変なこと言われてんじゃねぇかな……」
ガチャ
話をしているとイヴォンさんが入ってきた。
「全員揃っていますね。
では、早速昇仙山で習得したスキルなどを教えていただきましょう」
イヴォンさんはいつも以上に満面の笑みだ。
クラールとショーンがそれぞれ習得した【昇仙拳】について話をする。
「ほほぉ……
短期間で【昇仙拳】を習得してくるとは素晴らしい」
「でも魔石の補充や生成には関係ないぜ?
本命はケンの魔法だろう?」
「そんなことはありません。
息子とその友人の成長は、とても嬉しいものですよ」
「……(こういうときのイヴォンさんは、うさんくせぇな)」
「……(こういうときの父上は、うさんくさいな)」
「こほん……
ではでは、狭間さんも詳細を教えて下さい」
「はい……」
こういうときのイヴォンさんは、うさんくさいな……
僕は自分が習得した魔法とスキルについて説明をする。
「それは素晴らしい!!」
「でも、【魔影装】や【魔影脚】は魔石にはできませんよね?」
イヴォンさんが予想以上にくいつく。
やっぱりクラールとショーンのときよりもテンションが上っているような気がするけど……
「私が気になっているのは、【補助魔法】です。
特に上位の【補助魔法】は需要が高いですからね。
さらにこれからの狭間さんの成長を考えれば、【空間魔法】をさらに習得する可能性だってあります。
【転移】の魔石は最上級の価値がありますからね!
さぁ決まりです!
次は狭間さんの【補助魔法士】のジョブレベルを上げましょう!」
えぇ〜……
「父上、ケンはきっと【魔闘家】のジョブを鍛えたいと思いますよ……」
おぉ、クラール!
よく言ってくれた!
その通りなんだ。
【魔闘家】はかなり強力なジョブだ。
僕としては最優先で鍛えたい。
「あのさ、んで結局なんで俺も呼ばれたわけ?
教会の魔石生成には役に立てそうもないぜ?」
ショーンがめんどくさそうに話す。
「おっと、そうでしたね……
実は近々賢者様が戦線に来られるようなのです。
ですから、賢者様が来られる前に、できるだけ修行をしておきなさい。
賢者様のパーティに入れてもらえるチャンスですよ」
おぉ……
賢者様ですか。
「ですが狭間さん、あなたは魔石の生成と補充を優先してくださいね?」
「「「………………」」」
狭間圏
【上級聖職者:Lv38】
HP:345/345(↑+3)
MP:4/782【上級聖職者】:+126
SP:3/312
力:38
耐久:100(↑+1)
俊敏:57
技:29
器用:48
魔力:74【上級聖職者】:+68
神聖:127【上級聖職者】:+126
魔力操作:121
【回復魔法:Lv79(↑+1) エリアヒール:Lv16(↑+2)オートヒール:Lv38(↑+2)】
【光耐性:Lv7(↑+3)】
【痛覚耐性:Lv6(↑+1)】
【etc.(65)】