111日目(異世界)後編
【魔闘家:Lv0(New)】
新しいジョブを獲得する。
それと同時に、頭の割れるような激しい頭痛が消えていく。
【魔影装:Lv0(New) 魔影脚:Lv0(New)】
さらに新スキルが2つ。
【魔影装】は既に発動している。
魔力、MPが身体にまとわりついている。
自分の周りに【パーセプション】を濃縮したようなものだ。
風の流れ……
人の呼吸……
石畳の下の小さな虫……
近い場所なら、全てが手にとるように分かる。
さらに身体能力も向上している。
MPを体内にも流し込み、身体の動きを補正する。
「スー……ハー……」
僕は目を閉じ、深く深呼吸をし、構える。
「チッ……
いいだろう……」
ウーリュウも構える。
僕は目で見るよりも、【魔影装】でその動きを認識する。
今までの戦いでウーリュウは、通常攻撃しかしていない。
SPを消費する技を一切使っていないし、【昇仙拳】ももちろん使っていない。
だが……
次は本気でくるだろう……
ザッ!
来る!
ウーリュウが踏み込み突進してくるのが、完全に認識できる。
ドガガガガッ!
恐ろしく速い連撃を全て防御する。
ドガガガガッ!
!?
攻撃の速度が上がっているのか!?
「そらそらそら!
まだまだいくぞ!」
ドガガガガッ!
僕はすべての攻撃を冷静に防御する。
「【昇仙連撃】!」
ドガガガガッ!
さらに攻撃速度が上がる。
さらに【昇仙拳】によって、通常よりも一撃一撃が強力なものになってくる。
が……
ドガガガガッ!
「バカな!!」
【魔影装】により、耐久を強化し、直撃は全て避けているためそれほど大きなダメージは受けない。
「ハッ!」
連撃の最後に強力な回し蹴りが来る。
ドガッ!
蹴りの直前に腕をはさみ防御するが、身体がふっ飛ばされる。
僕はふっ飛ばされながらも、空中で受け身をとり【クイックヒール】で回復をする。
ザッ!
体勢を崩すこと無く着地する。
【魔影連撃:Lv0(New)】
ウーリュウの【昇仙連撃】による影響だろう。
こちらも連撃を習得することができた。
【ヒットストライク:Lv0(New)】(技強化)
さらに新しい【補助魔法】を習得。
これは……こちらからいけってことだな……
「貴様……一体……」
「スー……ハー……」
新しく習得した【ヒットストライク】を使用する。
僕は再び目を閉じ、深く深呼吸をし、構える。
ザッ!
今度はこちらから仕掛ける。
踏み込みと同時に【魔影連撃】を発動させる。
ドガガガガッ!
互いの拳と拳、拳と脚、脚と脚がぶつかり合う。
凄まじい高揚感だ。
気分が高まり、神経が研ぎ澄まされる。
一秒でもこの時間を楽しみたい。
ウーリュウの【昇仙連撃】は蹴りが中心の連撃。
それに対し僕の【魔影連撃】は拳の突きと手刀が中心の連撃だ。
ガガガッメキッ!
ウーリュウの連撃は先程よりさらに速い!
威力、速さともにウーリュウの【昇仙連撃】のほうがやや上回る。
ドガガガッメキッ!
何発か直撃が入り、僕の骨が砕ける。
だが、何も問題はない。
痛みを全く感じない。
そして、すぐに【クイックヒール】で回復をする。
バッ!
連撃が終わり、互いに距離を取る。
「ん?」
ガクッ!
視界が突然低くなる。
「あれ?」
さっきまでの軽さが無くなり、立っていられないほどの重さがのしかかる。
「そこまでです!」
リャンリュウさんが試合を止める。
ちょっと待ってくれ!
いいところなんだ!
身体に力が入らないどころか、声すら出せない。
MP:0/741
ぇ?
MP切れ?
僕は意識を失った……
◇
うぅ……
ここは……どこだ?
自室、日本ではないな……
「ぉ、目が覚めたッスか。
師匠!
ケンが目を覚ましたッス!」
道場の一室だ。
いつも僕が【回復魔法】をしている部屋。
そうか……
僕はウーリュウとの対戦中にMPが切れて気を失ったんだ。
まだ多少のダメージがあるな。
どれくらい気を失っていたのだろうか。
少しだけMPが回復しているので、【ヒール】で全快しておく。
「狭間さん、目が覚めましたか……
素晴らしい試合でしたよ」
「凄かったッス!
悔しいけど、今対戦したら勝てそうも無いッス……」
「ありがとうございます!」
確かにいい試合をしたと思う。
だけど、途中で気を失ってしまったし、負けは間違いないだろうな。
「ウーリュウは?」
「ウーリュウなら大丈夫ですよ。
既に【昇仙気功】で回復していると思います。
ですね?」
げっ!
いつの間にか部屋の中にウーリュウがいる。
「フンッ!
あの程度の攻撃で損傷を受けることはない……」
マジかよ。
【昇仙気功】って回復できるんだろうか。
あれだけ頑張ったのに、ダメージは残らないんだな。
「おい、狭間とかいったな。
お前、悪くなかったぞ。
いつでも再戦してやろう」
「おぉ! 是非! お願いします!」
「ダメです。
狭間さん、こんなことを続けていては死にます」
リャンリュウさんは、ウーリュウと僕を睨みつける。
「……まぁいい」
ザッ!
あれ?
ウーリュウが消えた?
ポン……
肩に手が置かれ、振り返る。
ウーリュウだ。
いつの間にか背後に移動していたようだ。
「おい、あれが俺の本気だとは思わないことだな……」
ザッ!
再びウーリュウが消える。
試合の時よりもスピードが上がっている。
あの感じだと【魔影装】を発動させていたとしても、攻撃が当たるか微妙だ……
本当に本気ではなかったのだろう。
「自分が本気じゃなかったってことをわざわざ言いに来たんスね……
ウーリュウは相変わらず大人気ないッス」
「そうでもありませんよ、ロウリュウ。
ウーリュウは狭間さんの具合を見に来たんです。
見つからないように気配を消し、何度も様子を見に来ていましたからね」
「本当ッスか!?」
リャンリュウさんが僕の方へ向き直る。
「狭間さん、少しお話を聞いてもらいます」
「はい、なんでしょう」
なんだろう。
真剣な表情だ。
いつもの気の抜けた感じが無い。
「あなたは特殊な成長タイプのようです」
「特殊、ですか?」
「そうです。
修行による成長タイプは様々です。
ロウリュウのように、バランス良くステータスが上がるタイプ。
それに対し、フヨウさんのように力など単一のステータスが特化して上がるタイプ。
ショーンくん、クラールくんのような技の習得、ステータス上昇が早い天才タイプ。
あなたはそのどれにも当てはまりません」
「はぁ……」
まぁ確かに、彼らとは違うとは思う。
それから自室でのMP回復があるからな。
後衛職のステータスに関しては、完全に特殊だろう。
「狭間さん、あなたは追い詰められると急激に成長するタイプなんでしょう。
これまでもそういった経験はありませんでしたか?」
「確かに……
死にかけて強くなったことが何度もあります。
でもそれって、みんなそうなんじゃないですか?」
以前、イヴォンさんがショーンとクラールに死にかけた経験が少ないから弱い、と言っていた。
だから、強敵と戦えば成長が促進されるものだと思っていたが……
「ある程度はその傾向にあります。
しかし、あなたの試合中の成長は異常です。
先代……私の前の【昇仙拳】の師範もあなたと同じタイプでした」
「おぉ、そうなんですね。
先代の師範はやっぱり強いんですか?」
先代の師範ってことは、かなり強いよな。
僕も今後の成長に期待して良いってことだろうか。
「えぇ、強いですよ。
私など足元にも及ばないほどに……
正確には、強かったというべきでしょう」
「……………………」
死んでるってことだよな……
「先代は強者と戦うとき、何よりも嬉しそうでした。
ちょうど、ウーリュウと戦うあなたのように。
そして、強敵と戦い続け、無謀な戦いをし、死んでいったんです」
「……………………」
「先代の最期の言葉は、『最高だ』です。
強敵と限界まで戦い続け、笑いながら死んでいきました。
狭間さん、あなたを見ていると、先代と同じ危うさを感じます」
「それは……
死んでしまったら意味がないですね……」
「そうです。
ですから、くれぐれも先代のようにならないでください」
「わかりました……」
「なぁ話は終わったか?」
ショーンがやってくる。
クラールも一緒だ。
「ケン、一度帰ろう。父上がお呼びだ」
狭間圏
【魔闘家:Lv0(New)】
HP:350/340(↑+14)【魔闘家】:+10
MP:2/747【魔闘家】:+10
SP:0/268(↑+4)【魔闘家】:-30
力:38(↑+6)【魔闘家】:+5
耐久:99(↑+12)【魔闘家】:+5
俊敏:57(↑+8)【魔闘家】:+50
技:29(↑+6)【魔闘家】:+30
器用:42【魔闘家】:-30
魔力:74(↑+1)【魔闘家】:+5
神聖:127(↑+1)
魔力操作:115(↑+4)【魔闘家】:+30
【回復魔法:Lv78(↑+1) ハイヒール:Lv42(↑+1) オートヒール:Lv36(↑+2) クイックヒール:Lv12(↑+2) リヒール:Lv44(↑+1) ハイリカバリ:Lv0(New)】
【補助魔法:Lv66(↑+1) ハイプロテクト:Lv0(New) ハイバイタルエイド:Lv0(New) アジリティエイド:Lv9 ハイアジリティエイド:Lv0(New) ヒットストライク:Lv0(New) 】
【空間魔法:Lv57(↑+1) パーセプション:Lv70(↑+1)】
【体術:Lv9(↑+3)】
【魔影装:Lv1(New↑+1) 魔影脚:Lv0(New) 魔影連撃:Lv0(New)】
【マルチタスク:Lv83(↑+1)】
【自己強化:Lv0(New) 鉄壁:Lv0(New)】
【痛覚耐性:Lv5(↑+1)】
【etc.(48)】
4章終わりです。
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