108日目(異世界)
「今日は僕も戦いたいんだけど」
僕たちは、昨日に引き続き朝の走り込みのあと、竹林に来ている。
ただし、昨日とは違いリャンリュウさんがいない。
ショーン、クラール、フヨウ、僕だけだ。
修行の流れは理解できたので、僕たちだけでアーマータイガーを倒す修行をする。
「言うと思ったよ」
ショーンがジトッとした目でこちらを見てくる。
「ダメ?」
「いや、ダメとは言われてないね」
クラールがフォローしてくれる。
「だけどなぁ……
ケンはしつけぇからさ。
ケン、お前勝つかMP切れるまで続けるだろ」
「まぁ多分……」
「それじゃ日が暮れちまうだろ」
「それは困るな……」
フヨウも難色を示しだす。
「じゃぁこうしよう。
まずは昨日と同じように、ショーン、僕、フヨウの順にアーマータイガーを倒す。
そのあと、ケンが5分間だけアーマータイガーと戦って、そのあとは僕たちが仕留めればいい」
「まぁそれならいいぜ」
「問題ないな……」
「おぉ! ありがとう!」
よしよし、今日は戦うことができそうだ。
【昇仙拳】のコツをつかめるかもしれない。
昨日と同様に、ショーン、クラール、フヨウはアーマータイガーを倒していく。
ショーンはほぼ全ての打撃で【昇仙拳】を成功させる。
そして、クラールは【昇仙拳】を自在に操っているように見える。
この二人は、昨日よりさらに成長している……
フヨウについては昨日と同じだ。
完全に腕力のみで圧倒している。
「おい、ケン次いいぞ」
「そこそこ強いから、【補助魔法】かけておいたほうがいいよ」
「了解」
僕は【プロテクト】【バイタルエイド】【アジリティエイド】を使い、耐久、HP、俊敏を上げておく。
ザッ!
僕は踏み込み、拳を前に突き出す。
ポコッ!
「!!」
いってぇぇえぇ!!
なんだよコイツ。
ダメージが通るどころか、硬すぎてこっちの拳がダメージ受けるだろ。
【プロテクト】無かったら、折れてるんじゃないか?
「ウガァッ!」
僕の攻撃に気づいたアーマータイガーが反撃してくる。
バキッ!
「うぉ!」
ゴロゴロ……ドサッ!
僕は数メートルふっ飛ばされる。
「ガァッ!」
ドドドッ!
アーマータイガーがすぐさま追い打ちをかけにくる。
まずいな。
急いで回復だ。
【ハイヒール】を使いつつ、体勢を立て直す。
「おいケン、やばかったら手伝うぞ」
「大丈夫!」
さっきはあまりに硬くて驚いたが、冷静に動きを見れば対応できない速さではないはず。
「グルルルル……ガァッ!」
アーマータイガーが鋭い爪を振り下ろす。
ザッ!
僕は後ろに身を引き、ギリギリでかわす。
「おい、あいつちょっと速くなったか?」
「だね、多分【補助魔法】じゃない?」
現状はSP枯渇状態で、【ガード】すら使うことができない。
頑張ってかわすしかないんだ。
攻撃をかわした直後、アーマータイガーに隙ができる。
「ハッ!」
今度は、修行でやっていた型を意識して攻撃をする。
ポコッ!
痛い!
ダメだ。
マジで攻撃が通らない。
その後何度か攻撃をかわし、拳を痛めるパンチをする。
全くダメージを与えられないまま、5分経ってしまった。
「時間切れだ、ケン。 俺が殺る」
ザッ!
パツッ!
パツンッ!
パパパンッ!
ショーンが踏み込むと、【昇仙拳】が連撃ではいる。
「どうだった、ケン。
何かつかめそう?」
「いや……全く……」
◇
結局何もコツをつかめないまま、アーマータイガー討伐の修行が終わってしまった。
夜は、道場で型の修行だ。
フヨウも僕と同様で、コツのようなものは何もつかめなかったようだ。
黙々と型の修行をしている。
今日も蹴りだ。
日本でみっちり動画を見てきた。
そして今は、【空間魔法】の【パーセプション】で俯瞰して自分の蹴りを観察し、違和感のあるところを補正していく。
「先客がいたみたいッスね……」
誰かが道場に入ってくる。
ロウリュウだ。
「ロウリュウも修行?」
「そうッス。
このままじゃいつまで経っても、ウーリュウには勝てないッス……」
そういえば、ロウリュウは毎日のようにウーリュウにボコボコにされている。
「ロウリュウ……
【昇仙拳】の習得について教えてくれ」
フヨウが型の修行を止め、ロウリュウに聞く。
「んー……
そう言われても、師匠のほうが教え方うまいッスよ」
「私は……私はまだなんの違和感もない。
習得できる兆しが全く無いのだ」
「それは僕もだね……」
今日なんて、かなり頑張ったと思う。
だけど、全くもって手応えがない。
「そりゃ、まだ二人共ここに来たばっかりじゃないッスか。
しばらくは修行が必要ッスよ」
「そうか……そうだな……」
フヨウは自分を納得させるように言う。
「無理だな……」
「なっ!」
突然現れたのはウーリュウだ。
「それはどういう意味だ?」
フヨウがウーリュウを睨みつける。
「そのままの意味だ。
てめぇらには才能が無い」
ウーリュウはあたりを見回す。
「おい、あのツンツン頭はいないのか?」
ショーンを探しているのか。
「僕たちだけだ」
「フン……ハズレだな」
ウーリュウはロウリュウの方に向き直す。
「しばらく修行が必要?
甘ったれたこと言いやがって!」
ドガッ!
ウーリュウはロウリュウを蹴り飛ばす。
「がはっ!」
「ちょ……今回復を!」
僕はロウリュウに駆け寄り【ハイヒール】をする。
「ロウリュウ、てめぇのそういう甘ったれたところがイラつくんだよ。
俺との差を感じても、まだそんなこと言ってんのか?」
ウーリュウはイライラしているようだ。
「回復ありがとうッス。 もう大丈夫ッス」
「才能が無いってどういうこと?
やっぱり【昇仙拳】は才能が無いと習得できないの?」
僕は気になったことを聞いてみる。
「ハッ!
てめぇは前衛の後ろで回復してりゃいいんだよ。
いいか、師匠は優しいから言わなかったと思うが、後衛職メインで【昇仙拳】を習得できたヤツなんざ今までいねぇ……
その意味が分かるか?」
「なっ!」
そうなのか?
やっぱりMPがSPの枯渇を補正しようとしてしまうんだろうか。
「おい、私は後衛職ではないぞ」
フヨウがウーリュウに言う。
「フン……小娘か。
てめぇは力がありすぎだ。
なんでも腕力で解決してきたツケが回ってきたな。
そんなんじゃ【昇仙拳】は習得できねぇし、俺に攻撃を当てることもできないだろうな」
「……ッ!」
フヨウは無言で自分の拳を見つめている。
ウーリュウの動きを見て、実際に攻撃を当てることが難しいのを理解してしまったんだろう。
「やっぱりアイツだな。
あのツンツン頭、あいつをブチのめしてこそ、俺は強くなれる……」
ショーンのことだ。
どうやらウーリュウにとって僕たちは眼中にないようだ……
狭間圏
【修道士:Lv48 (↑+16)】
HP:351/322(↑+1)【修道士】:+29
MP:4/729【修道士】:+29
SP:0/252(↑+6)【修道士】:-26
力:30(↑+2)【修道士】:+29
耐久:85【修道士】:+29
俊敏:47(↑+1)【修道士】:+29
技:21(↑+1)【修道士】:+29
器用:39【修道士】:-26
魔力:73
神聖:125(↑+1)【修道士】:+29
魔力操作:108
【回復魔法:Lv77(↑+1) ハイヒール:Lv39(↑+1)】
【体術:Lv5(↑+1)】
【etc.(55)】




