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106日目(異世界)

「はぁ……はぁ……」

やっとだ。

やっと午前中に道場に到着することができた。


だけど、他の門下生はとっくに到着している。

ショーン、クラール、フヨウともに門下生たちと同じペースで走ることができるようになっているらしい。

一時間以上前に到着しているだろう。


そして、まるで食欲は無い。

むしろ吐き気がする。

序盤よりはかなり落ち着いたが、それでも走った直後は吐き気がある。


僕は水分だけを補給し、型の訓練に入る。

昨日自室で見た動画を参考にしてみる。


僕は息を吸いながら腰を落とし両腕を引く。

そして、下っ腹に力を入れて息を吐くと同時に拳を前に突き出す。

「スー……ハッ!」

こうかな?


いや、何か違う気がする。

やっぱりもっと腰を落とすのかな?


先程よりも、やや腰を落とす。

脚がきつい。

「スー……ハッ!」

違う気がするな。


ん?

そうだ!

僕は【空間魔法】で自分を外から認識する。



「スー……ハッ!」

そうか。

拳を出すときに、動画に比べて身体が動いてしまったんだ。

軸がぶれているのか……


他の門下生についても【空間魔法】で確認をしていく。

彼らは、どこか一本軸が通っているかのように安定している。

なるほど……

基本姿勢から、突きを出すとき軸を意識しよう。


そしてついでにショーン、クラール、フヨウの型についても【空間魔法】を使って細かく動きを見てみる。

おぉ!

すげぇ!

みんな軸がほとんどブレていない。

やはり、【体術】ではないといえ、前衛としての基本が身についているんだろう。


そして、クラールについては、門下生よりもきれいに型がきまっていると思う。

軸が全くブレていない。

まるでお手本のようだ。

というより、お手本にしてしまおう。





「ほぉ……狭間さんも何かつかんだようですね……」

リャンリュウさんが言う。

この人は、見ただけでわかるのか……


「はい!

ですが、みんなに比べてまだまだです」

「仲間同士で切磋琢磨することはいいことですが、何も引け目を感じる事はありませんよ。

それぞれの得意分野があるわけですからね」


「はい!

ありがとうございます!」

まぁ型としては良くなっているんだろう。

だけど、それ以外何の手応えもない。


「これが気の流れってヤツか……?」

ショーンについては、昨日よりも【昇仙拳】を使いこなしているようだ。

拳の光が強くなっている。

「僕もなんだか拳に違和感が出てきたよ。

初日にショーンが言っていたことが、なんとなく分かる……」

マジかよ。

クラールも何かコツのようなものをつかんだらしい。


「……………………」

フヨウは険しい表情をしている。

僕と同じで何も感じていないのかもしれない。










夕食の後、こっそり道場に来てみた。

このままでは、ショーン、クラールにどんどん差をつけられてしまうからだ。


「ハッ……!」

ん?

誰かいるな……


フヨウだ。

フヨウが昼間と同じ型の訓練をしている。


「やぁ、フヨウも型の訓練?」

「む?

ケンか。

そうだな……

ハッ……」

フヨウは会話しながらも型の訓練を続ける。


「キミもか?」

「そうだね。

このままだとあの二人に差をつけられてしまうから」


「そうか……」


無言のまま型の訓練を続ける。

朝の走り込み、午後の型の訓練で正直身体はきつい。

だけど、動けないほどではない。

「スー……ハッ!」

【空間魔法】で自分の動きを観察し、突きを出す。


薄暗い道場の中、呼吸と突きの音だけが響き渡る。









限界だ……

立っていられない。

「フー……」


僕はその場にへたり込む。

フヨウは僕に目もくれず、訓練を続ける。

出会ったときからそうだが、彼女には余裕がない感じがする。

強くなるため、向上心があるのは悪くない。

だけど、時折思いつめたような表情を見せるんだ。


日本でのカミキさんは、よく笑う人だった。

日常のどうでもいいこと、そんな話をしただけでよく笑っていた。


フヨウとカミキさんの顔はよく似ている……というより、同じだ。

なのに表情が全く違う。


「どうしてそんなに強くなりたいの?」

僕は思ったままに聞いてみた。


「それをキミが言うのか?

私からすれば、魔法職のキミがこれほど訓練をしていることに違和感があるな」


「そうかな?」

「そうだな」


フヨウは相変わらず、無表情で型を続けながら話す。

僕の場合、日本で身体が動かないからな。

上位の【回復魔法】を習得するために強くなる必要がある。


あれ?

いやまてよ?

それなら、今の訓練は必要ないよな?

言われてみれば、魔法職の僕がこの訓練をしていることに違和感がある。


「なんだ?

言われて初めて気がついたのか?」

「……うん、そうみたい……」


「アハハッ!」

フヨウは型の訓練をやめ、その場に腰を下ろす。

笑った。

初めて彼女の笑顔を見た。

カミキさん……

カミキさんの笑顔と同じだ。


「そんなにおかしいかな?」

「いや、すまない。

ショーンが言う通り、キミはぶっ飛んだ人間のようだな」



「う〜ん……。

自分じゃよくわからないけど……」

「訓練で身体が限界なんだろう?

今日はこの辺にしておけばいい」


「いや、少し休んだらもうちょっとやるよ」

「そうか……」


その後、夜が更けるまで訓練を続けた。


狭間圏はざまけん

【修道士:Lv0】

HP:324/319【修道士】:+5

MP:720/715【修道士】:+5

SP:0/236(↑+8)【修道士】:-30

力:28【修道士】:+2

耐久:85【修道士】:+2

俊敏:46【修道士】:+2

技:20【修道士】:+2

器用:37【修道士】:-30

魔力:73

神聖:123(↑+1)【修道士】:+2

魔力操作:106

【回復魔法:Lv74(↑+1) ハイヒール:Lv38(↑+1)】

【etc.(54)】

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