103日目(異世界)
「「「「おはようございます!」」」」
僕たちは今日も門下生の前に立たされている。
「今回の入門者は非常に有望です。
初日から全員が山頂までたどり着くことができました。
また、4人のうち3人は昼までにたどり着くことができています」
僕以外の3人はみんな午前中に走り終えたんだ。
ってことは皆は次の修行に行くってことか?
「では、自己紹介の方をしておきましょうか」
リャンリュウさんから自己紹介を促される。
昨日山頂まで走りきったから、自己紹介ができるということだ。
大半の門下生は、走り切ることができずに辞めてしまうらしい。
昨日は確かに相当きつかった。
なにしろ体が重いんだ。
ステータス補正が無くなり、日本で走っているかのようだった。
第三戦線での狩りが無ければ、山頂までたどり着けるようになるまで何日かはかかっていただろう。
「クラールと申します。
よろしくお願いします」
華麗な自己紹介だ。
門下生の殆どは男性だが、もし女性がいたらイチコロだろう。
「ショーンだ!
よろしく!」
ショーンも爽やかに挨拶をする。
なんだかこの体育会系の雰囲気には一番合っている感じだな。
「フヨウだ。
よろしく頼む」
フヨウは相変わらず無愛想だな。
ウーリュウがフヨウを睨みつけている。
武闘大会でロウリュウが負けた相手ということで敵視しているんだ。
「ケンです!
よろしくお願いします!」
「では皆さん、今日も走り込みから始めましょう」
「「「「はい!」」」」
先輩たちは、昨日と同じように外へ走り出す。
「それでは、皆さんにも昨日と同じように走ってもらいたいのですが、その前に確認があります。
【体術】適性のあるジョブは得ていますか?」
【体術】適性のジョブ?
いや、僕は多分持ってないな。
「俺は【武闘家】があるな」
「私も【武闘家】だ」
「僕は【モンク】があるね」
「僕は持ってないです」
ぐぬぬ……
またここでも差が出てしまっている。
ショーンとフヨウはわかるが、クラールまで前衛ジョブを持っているとは……
「ではこれからは基本的にジョブは【武闘家】や【モンク】にしておいてください。
狭間さん、大丈夫ですよ。
ここにいればすぐに習得できます」
「はい!
ありがとうございます!」
やっぱり【体術】適性のあるジョブのほうが【昇仙拳】を習得しやすいのだろうか。
「では、ジョブを変更したら昨日と同じように山頂まで行ってください」
「「「「はい」」」」
♢
「……はぁ……はぁ……」
地獄の走り込みだ。
昨日よりは若干早く戻ることができたか?
それでも僕だけがダントツで遅いことには変わりないが……
道場の中から活気のある声が聞こえる。
よかった。
今日は皆の修行が終わる前に到着できたんだ。
「よぉケン、昨日より早いじゃんか」
ショーンが声をかけてくる。
ショーンとクラール、フヨウは道場の入口付近にいた。
腰を落とし、両腕を後ろに引き、右の拳を前に突き出す。
もう一度両腕を後ろに引き、左手の拳を前に突き出す。
正拳突きか?
道場は中華っぽいけど、動作は空手のようだな。
「それは次の修行?」
「おぅ、これをひたすら続けるんだとさ」
走った後は、ひたすら型の練習か。
部活動に違いない。
バゴォォーーン!
!!
突然大きな音とともに、人が吹っ飛んできた。
「ゲホッ!ゲホッ!」
「ロウリュウ!?」
ロウリュウだ。
初日と同じように怪我をしている。
「雑魚が!
そんなんだから小娘にやられるんだ!」
ウーリュウだ。
またこいつか。
「くっ……
まだまだッス……」
「ちょ……今【回復魔法】を……
って……行っちゃったよ」
ロウリュウはすぐにウーリュウのほうへ行く。
「さっきからずっとあんな感じだぜ?」
「そうだね、なにか恨みでもあるんだろうかってくらい攻撃されてるよ」
あたりを見渡すと、僕たち以外は実践訓練をしているようだ。
昨日と同じようにあちこちに怪我人がいる。
リャンリュウさんが僕に気が付きやってくる。
「やぁ狭間さん。
今日も治療のほうをお願いしますね」
「はい!」
うぉぅ。
今日もぞろぞろと怪我人がやってくるな。
♢
一通り【回復魔法】を使っていく。
「か……回復をお願いするッス……」
ロウリュウがボロボロになってやってくる。
「わかった、すぐに回復するよ。
【ハイヒール】!」
僕は何度も【ハイヒール】をかけていく。
かなりHPが減っているな。
全快するまでに結構な時間がかかる。
「今日はここまでです!
食事にしましょう」
リャンリュウさんが声を出すと、門下生たちの動きが止まる。
これからそれぞれ着替えをし、食事の準備をする。
僕の場合は、全員を回復してから食堂に向かうことになる。
♢
「この肉うめぇな!」
「アーマータイガーの肉らしいよ。
街で購入すれば、結構な値段だよね」
「……………………」
僕たちは今日も肉を食べる。
フヨウだけは無言でもりもり食べている。
「次の修行って、さっきの型をひたすら続けるんだよね?」
「そうだね、最初はいいんだけど、何時間も続けると腕が上がらなくなるよ」
クラールが応えてくれる。
「この昇仙山の環境でひたすら続けると、SP、すなわち気の扱いがわかってくるらしいんだ。
抽象的だよね」
「気の扱いか……
難しそうだ」
「そうだね、まだここへ来て二日目だし、あんまりピンとこないな。
ショーンはどう?」
「なんつーかさ、なんとも言えない違和感みたいなのはあるな。
どう扱えばいいかわかんねぇんだけど、なんかあるんだよ」
「なにそれ?
何一つ意味の変わらない説明だね」
僕は思ったままの感想を言った。
「そりゃそうだろ。
俺にもよくわからん」
「何にしても、もう何かを掴んだってことだよね?
それは凄いな……」
クラールは感心している。
やばいなぁ。
前衛としてどんどん差が開いてしまうぞ。
狭間圏
【上級聖職者:Lv38】
HP:316/316
MP:11/686【上級聖職者】:+126
SP:0/210(↑+10)
力:28
耐久:85
俊敏:46
技:20
器用:34(↑+1)
魔力:71【上級聖職者】:+68
神聖:120(↑+1)【上級聖職者】:+126
魔力操作:100
【回復魔法:Lv69(↑+1) ハイヒール:Lv33(↑+2)】
【etc.(54)】




