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102日目(異世界)

「おはようございます」

「「「「おはようございます!」」」」


僕たちは朝から道場の外へ来ている。

他の門下生たちも同様に集められているようだ。

30人くらいいるだろうか。

リャンリュウさんと僕、ショーン、クラール、フヨウが門下生たちの前にいる。


「皆さん、新しい門下生です。

今日から一緒に修行をしてもらいます。

とりあえず今日は一緒に走ってもらいましょう」

僕たちは前でお辞儀をする。

「よろしくお願いします」


自己紹介などは必要ないのだろうか。

門下生たちは僕たちにはそれほほど興味が無さそうだ。

ただ一人、ウーリュウを除いて……

ウーリュウだけは僕たちを睨みつけている。


「では私が新人の指導をしますので、皆はいつものように中腹へ行ってきてください」

「「「「はい!」」」」


門下生たちは、元気よく返事をすると、外へ走りに行ってしまった。

「自己紹介などは必要無かったのですか?」

クラールが僕が疑問に思っていたことを聞いてくれる。


「えぇ、新人の殆どは一週間ともたずに辞めていきますからね。

しばらくして、他の門下生と同じ修行ができるようになってからで構いませんよ」

「なるほど……」


マジか。

どうせすぐに辞めるだろうということで、門下生の殆どがこちらに興味が無かったんだな。


「では、今日から本格的に修業に入りましょう。

皆さん、SPを確認してみてください」

「マジかよ!」

「これは……」

「……?」


みんな驚いている。

どういうことだ?

確かに、SPの回復はしていない。

でもそれは昨日リャンリュウさんから聞いていた。

僕にはそれ以外特に変化は無いけれど……


「えっと、どういうこと?」

「最大SPを見てみろよ!

お前何も変わって無いのか?」


最大SPを見てみる。

SP:2/186

特に変化は無い。

日本でSPを消費しきっていたので、最大SPは昨日から3上がっている。

それから、使い切って完全に眠るまでに2だけ回復したのだろう。

異世界に来て、SPの自然回復が止まり、2のままになっている。


「うん……特に変化はないね」

「僕は寝ている間に最大SPが6も上がっていたよ……」


クラールが説明してくれる。

マジかよ!

寝てるだけで最大SPが増えるってどういうことだ!?


「……………………狭間さん」

「はい?」

リャンリュウさんが顎に手を当て話しかけてくる。

なにか思い当たるのだろうか。


「SPは完全に0ですか?」

「いえ、2だけあります」


「昨日寝る前に完全に0にしましたか?」

「はい……」


まずいな……

日本ではSPが回復する。

僕だけ特殊な環境であることがバレてしまうかも……

軽く説明したほうが良さそうだ。


「あの、僕ちょっと特殊で、寝ている間にMPが全快するんです。

もしかしたら、SPもそれに近いのかもしれません」

「なるほど……」


リャンリュウさんは目を細める。

「それは【昇仙拳(しょうせんけん)】を習得するのにやや不利かもしれませんね」

「ぇ……」


「【昇仙拳】の習得にはSPの枯渇が必要です。

ですからこの昇仙山が修行には最適なのです。

ですが、どのような状況でも寝るだけで回復してしまうのは、習得の修行には不利に働く可能性があります」

「そうなんですか……」


マジかよ……


「しかし、実際に修行するまではわかりません。

なにより、まず修行について来れるかわかりませんからね」

リャンリュウさんが爽やかに笑い飛ばす。


「はい!頑張ります!」

習得に不利なら、ひたすら修行をしてカバーすればいいだけだ。

やってやるぜ!


「では狭間さん、完全にSPを0にしてください」

「わかりました!」


僕は2だけあったSPを【ストレージ】で完全に使い切る。


「では、こちらに来てください。

他の門下生は、すでに出発をしています」


僕たちはリャンリュウさんの後についていく。

あれ?

道場から出ていくようだ。


道場の入り口まで出てきた。

見晴らしが良い。

切り立った山がほかにもあり、空気がとても澄んでいる。

それから上にも下にも石の階段。

昨日これを登ってくるのにかなり苦労をした。


「この道場のさらに上、山頂に小さな社があります。

みなさんにはそこまで来てもらいます。

では、私は先に行っていますよ」

「ぇ?」


走れってこと?

うぉ、速ッ!

いったい何段飛ばしで階段を上がっているのだろう。


「もう行っちゃったね」

「まぁとにかく走れってことだろ」


ショーンは屈伸しながら言う。

フヨウも無言で準備運動をしているようだ。

僕も軽く準備運動をしておこう。


「よし、行くか」

「うん!」


なんだか朝練のようだな。











くそ……

一体どれだけ階段を走ったんだろう。


「ぜぇぜぇ……」

これじゃ昨日と全く一緒だ。


「おいケン、大丈夫か?」

「ぜぇぜぇ……」


「すまないが、私は先に行くぞ」

フヨウが先に行ってしまう。


「ぜぇぜぇ……ごめん……先に……行ってて」

「おぅ、わりぃな先行くぜ」

「ケン、頑張ってね」


「ぜぇぜぇ……」











ひたすらに階段を上る。

もう3時間は経っただろう。


すると、上から道着を着た集団がやってくる。

朝僕たちよりも先に出発した門下生たちだろう。


僕には目もくれず、階段を降りていく人たち。

ちらっとこちらを見て笑う人たち。


「新入り、頑張れよ!」

バンッと背中を叩かれる。

「はぁはぁ……はい!

ありがとう……ございます!」


完全に部活動だろこれ。

さっきの門下生なんて、部活の先輩にしか見えない。


しかし、さすが先輩たちだ。

あんまり疲れているようには見えない。











ほどなくして、一人やってくる。

ショーンか。

「おぅケン!

あと山頂まであと半分くらいだぞ!

頑張れ!」

「はぁはぁ……

はぁ!?

は、半分……」


マジかよ。

このペースだと確実に昼過ぎになるぞ……


くそ!

やってやる!










さらに30分くらい経っただろうか。

フヨウがやって来た。


「はぁはぁ……」


すれ違いざまに目があい、こちらに軽く手を挙げる。

僕もなんとか手を上げて無言で挨拶を交わす。


お互い疲れていて、会話をする余裕がない。


というより、あれ?

フラついてしまう。


ガッ!

なんとか脚を踏ん張る。


「はぁ……はぁ……どうした?」

「いや……大丈夫……はぁ……はぁ……」


「だろうな……先に行って待っているぞ」




そして更に30分くらい階段を上る。

クラールだ。


「やぁケン、もう少しで山頂だよ」

「はぁ……はぁ……はぁ……そう……なんだ」


「ケン、SPを確認してごらん。

やる気が出るよ」


そう言うと、クラールは爽やかに走り去ってしまう。

SP?


SP:0/191(↑+5)


おぉぉ!

上がってる!

5も上がってる!


「はぁ……はぁ!

はぁ……がってる!

はがってるうぅぅ!!」

僕は歓喜の叫びを上げる。


ぃっよっしゃー!

SPが上がってるぞ!

走るだけで上がってる。

昇仙山すげぇ!

やってやるぜぇ!










あれは……?

山頂か?


ようやく山頂が見え始めた。

足元がおぼつかない。


もはや走っている余裕もなく。

歩いて石段を1つずつ上っている。


「はぁ……はぁ……」


うおぉぉぉ!

何を歩いているんだ!

行くぞ!

根性だ!


僕は根性で走り出す。


「はぁ……はぁ……」


なんとか山頂までたどり着く。

ドサッ!


同時に僕は倒れ込んでしまう。


「やぁ狭間さん、お疲れ様です」

「はぁ……はぁ……はい……」

リャンリュウさんが山頂で待っていてくれたようだ。


「これはマズイですね。

水分を摂ってください」

「はぁ……はぁ……はい……」


僕は【水魔法】を使って水をグビグビと飲む。


うっ!


「ゲボっ……ゲボっ!」


苦しい。

一気に飲みすぎたか。

「はぁ……はぁ……」


僕はへたり込んだまま、しばらく呼吸を整える。

「はぁ……はぁ……」










「しかし驚きましたね。

昼を越えたとは言え、日が暮れる前に全員が山頂にたどり着くとは」

「そうなんですか」


「えぇ、この山の環境に不慣れな状態だと上るのがかなりきついんです」

「なるほど」


「では狭間さん、こちらに来てください」

「はい」


山頂の社には2mくらいの岩があった。

表面が切り落とされたように、地面に垂直になっている。


「この岩に手を当て、通常の魔石を使うようにMPを使ってみてください」

「はい、こうですか?」


僕は岩に手を当て、ほんの少しMPを消費する。

すると、岩に当てた手の周りがほんのり光る。


「それで大丈夫です。

あなたがここに来た、という証明になります。

明日からも、毎日ここに来て手を当ててください。

何度も繰り返すことで、この山の環境に慣れてもらいます」

「わかりました!」


「それから、昼までに往復できるようになったら次の修業に入ります。

では、私は先に道場へ帰っていますね」

「了解です!」


そうだ。

帰りもあるんだ。

昼までに往復か……

まだまだ厳しいな。

少し休んだら、すぐに出発しよう!












道場に着くころには夕方になっていた。


「はぁ……はぁ……」


脚が限界だな。

小刻みに脚が震えている。


僕はヨロヨロと道場に入る。

「ぉ、やっと来たな」


中には門下生たちと、みんながいた。

一通りの修行が終わった後だろうか。

門下生たちは道場を掃除している。


「いいところに来ましたね」

「はい?」


「修行で負傷したものはこちらに来なさい!」

リャンリュウさんがよく通る声で門下生たちに呼びかける。


すると、怪我をしている門下生たちがぞろぞろとやってくる。

「では狭間さん、治療の方をお願いします」

「わかりました」


道場に帰ってすぐだが、実に都合がいい。

これでMPや神聖の強化ができるし、道場でかかる費用についても免除してくれるようだ。


「よろしくな!新入り!」

「よろしくお願いします!」


僕は返事をすると、すぐに【ハイヒール】を使っていく。

道場で実践の修行でもするんだろうか。

怪我人が結構いる。


ん?

しかも【ハイヒール】を何度かかけないと全快しない。

この人結構HPがあるな。


「できました」

「おぉ!すげぇ!ポーションより全然いいぞ!」


先輩は肩をぐるぐると回しながら上機嫌で言う。

「次俺頼む」

「わかりました!」


おぉ!

この人も結構HPあるな。


「おい、お前は頼むから修行を続けてくれよ。

回復使えるヤツはすぐに辞めちまうからな」

「はい!頑張ります!」


そうなんだ。

やっぱり回復職の人間は不足しているんだろう。

教会や治療所で【回復魔法】を使っていれば食べるのに困らないし、やっぱりここまで来ないんだろうな。










門下生の治療を一通り終えた。


「では、狭間さんにも食事を摂ってもらいましょう」

リャンリュウさんが言う。

そういえば、何も食べていない。

水分しか摂っていないのだ。


やっとお腹が空いてきた。

というのは、道場に帰ったばかりのときは食欲が全くなかった。

それどころか治療中もしばらく吐き気がしたな。


「そう言えば、何も食べてませんね」

「無理にでも食べてもらいますよ。

他の皆はもう食事をすませてあります」


その後食事をして就寝した。

食事中に猛烈な眠気が来て、後半はよく覚えていなかった。



狭間圏はざまけん

【上級聖職者:Lv38】

HP:316/316

MP:815/689【上級聖職者】:+126

SP:0/197(↑+11)

力:28

耐久:85

俊敏:46

技:20

器用:32

魔力:71(↑+1)【上級聖職者】:+68

神聖:119(↑+1)【上級聖職者】:+126

魔力操作:98

【回復魔法:Lv68 ハイヒール:Lv31(↑+1)】

【etc.(54)】


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― 新着の感想 ―
[気になる点] あと主人公がいきなり教会にも道具屋さんにも何の断りもなく秘境に修行に来ていて良いの?という気になりました。
2022/11/02 21:11 退会済み
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