100日目(異世界)
今日も走る。
ひたすら走る。
ぉ?
おぉ!!
うっすらと山が見えてきた。
「あれッス!
あの山が昇仙山ッス!」
見えた!
いや……
喜んでいいのか?
すげぇ遠くにうっすら見える。
まだまだ先は長いな……
◇
「おいケン、その表情やめてくんねぇかな」
「ぇ?」
しまった!
また昨日のような気持ち悪い顔をしてしまっていたらしい。
「休憩するッス!」
その後なんどか休憩を入れつつ走り続けた。
◇
「今日はここで野営をするッス。
もう近くまで来たんで、明日には着くッスよ」
「……はぁ……はぁ……」
今日も限界まで走ったな。
昨日よりも走れるようになってる感覚はある。
だけど、やっぱりダントツで体力がない。
僕以外の三人だけだったら、もうたどり着いていただろうな。
「……はぁ……はぁ……申し訳ない……」
「いや、昨日よりだいぶ走れてたッスよ」
「まぁ気にすんなよ」
「そうだね、僕たちは急いでいるわけじゃないから」
ロウリュウ、ショーンにクラールがフォローしてくれる。
ありがたい。
「…………………………」
フヨウがこちらを睨みつけている。
「いや、本当に申し訳ない……」
「……急いでいない……か」
「なんだよアイツ、感じわりぃな……」
「なんか余裕ない感じだよね」
ショーンとクラールが小声で言う。
まぁ仕方ないか。
僕なりにできる限り走ったし、これ以上は厳しいな。
「おい、休憩したら昨日の訓練やるか?」
「頼むよ」
「自分も参加したいッス」
「フヨウさんも一緒にどう?」
僕は申し訳ないのもあるけど、ギスギスしたままだと気まずいので誘ってみた。
「その体力があるなら、もう少し走れるのでは?」
「あぁ〜……確かに、そうかも」
「いや、この先にはいい野営ポイントが無いッス。
この先から若干魔物が出始めるッス」
「そうか……ならば仕方ないな」
「僕は【雷耐性】は持ってないから、フヨウさんにも訓練に参加して欲しい」
もう一度誘ってみる。
どうにもカミキさんと全くの別人とは思えない。
「いや、結構だ」
「複数で修行するのは、効率が良いと思うよ」
すると、なぜか睨みつけられる。
やはり僕のせいで遅れてしまったことに怒っているのだろうか。
「キミは……武闘大会で彼に負けたんだろう?」
「そうだね」
確かに、僕は大会本戦の1回戦でロウリュウに負けてしまった。
「闘いで負けた相手と一緒に訓練か……
悔しくはないのか?」
「まぁ、試合で負けたことは悔しいよ」
「負けた相手とヘラヘラと修行とはな……」
「おい、何が言いてぇんだよ」
僕ではなく、ショーンが言う。
「そのままの意味だ。
負けた相手と一緒に楽しく修行など、よくもできたものだと。
私はそのような腑抜けが一番嫌いだ」
「……っんだと!」
ショーンが立ち上がる。
おでこに青筋が入っている。
やばいな、キレてそうだ。
「ショーン!
落ち着いて。
僕は気にしてないよ」
なるほど、彼女から見ると負けたくせにヘラヘラしている態度が気に入らなかったわけか。
でもそれは仕方ないよな。
負けたのは悔しかったけど、実際勝ち負けにはそれほどこだわってないし。
こういう考えが表に出てしまったのだろう。
「フッ……
気にしていない……か……
どうやら本当に腑抜けのようだな」
ん〜……
どうしようか……
実際、あんまり頭にこない。
僕は腑抜けなだろうか……
「運良く大会で優勝して、いい気になってやがんな」
「運がいい?
それは私のことか?」
おいおい、マジでやばいな。
僕はロウリュウの方を見る。
ロウリュウは僕と同じでどうしたものかと困っている。
「クラール、止めてよ」
僕はクラールに助けを求める。
クラールは……
小さく笑ってる?
ぁ!
こいつ楽しんでるな……
なんてヤツだ!
こういうときに止めてくれる人だと思ったのに。
「いや、このままでいいと思うな。
止めたって何も解決しないよ」
クラールは止める気がまったくないようだ。
「そうだな。
運がいいだけだろ。
少なくとも俺が出場していたら、お前は優勝できてねぇよ」
「ほぅ……
ならば是非手合わせ願いたい」
おいおい、マジかよ。
このまま戦ってしまったら、どっちが勝っても険悪になるだろ。
これから一緒に修行するっていうのに、それはちょっときついよ。
「いいぜ……
ぶちのめしてやるよ」
「駄目だショーン」
ヒュン!
ショーンの足元に矢が刺さり、光の粒となり消える。
クラールが撃った矢だ。
ついさっきまで、まるで止める気がなかったのに……
止める気になってくれたのか?
「おい!
止めんなよ!」
「僕にいい考えがある」
クラールはフヨウに向き直る。
「フヨウさん、と言ったね?」
「あぁそうだ……」
フヨウはすでに双剣を抜いている。
「いや、フヨウさん、あなたはショーンと闘う資格がない」
「資格だと?」
「そうだね。
まずは、あなたがバカにしたケンに『まいった』と言わせてみてよ。
それからショーンと闘えばいい」
「彼の闘いは大会で見た。
私の相手ではない」
「どうかな?」
「いいだろう。
すぐに倒して見せよう」
「ショーンもそれでいいね?」
「なるほどな……構わねぇよ」
ぇ?
てことは?
「おいケン!
ボサっとしてねぇで構えろよ!」
「マジかよ……」
僕は盾を構える。
「ではいくぞ!」
フヨウが双剣を持ち、突っ込んでくる。
属性は付けてない。
やばい!
【ガード】だ!
ガギンッ!
うぉ!
速いが、【ガード】できない程ではない。
が、威力が凄まじい。
【ガード】を発動しても、体勢を崩される。
「ハッ!」
崩れた体勢の状態から、さらに攻撃をもらってしまう。
バキッ!
ズザァー!
僕は吹っ飛び地面を転がる。
威力が凄いな。
すぐに回復だ。
「さぁ終わったぞ。
次はキミだな」
ジャキッ!
フヨウは右手の双剣をショーンに向ける。
「いや、僕はケンに『まいった』と言わせたら、と言ったんだ」
クラールが割って入る。
「何?」
「ケン、どうだい?
まいったかな?」
なるほど!
そういうことか!
やった!
修行のチャンスだ!
双剣の動きをよく見よう。
「いや全然!
フヨウさん!
お願いします!」
「ほぉ……」
◇
バキッ!
ズザァーッ!
あれから何度も吹っ飛ばされる。
フヨウは一度も属性攻撃を使ってこない。
僕なんか通常攻撃で充分だって感じなんだろうか。
「お願いします!」
「ッ!」
「このっ!」
バキッ!
ドゴッ!
ザシュッ!
ガギンッ!
三連撃のあと、また吹っ飛ばされる。
ズザァーッ!
すぐさま回復、立ち上がる。
「お願いします!」
「……なるほどな。
私が悪かった」
「ぇ?」
「キミを腑抜けと言ったことだ。
ケンと言ったか?」
「うん、そうだよ」
「ケン、キミを侮辱した非礼を詫びよう」
フヨウは頭を下げる。
「いやいや、いいよ。
全然気にしてないし。
頭を上げてよ、フヨウさん」
「フヨウで構わない。
それから、ショーンとクラールと言ったか。
私の見る目が無かったようだ。
不快な思いをさせて申し訳ない」
「おぉ、結構素直じゃねぇか。
もっとケンをボコボコにすると思ったぜ」
「わかってくれたね」
「とにかく丸く収まって良かったッス……」
ん?
終わり?
いやいや、ちょっと待った。
「フヨウ!
お願いします!」
「いや、ケン、キミが腑抜けでないことはもう分かった。
悪かったよ」
「いや、そんなことはどうでもいいよ。
できれば【雷属性】で攻撃してきて欲しい」
「む?」
「おい、ケンはそっからがしつけぇぞ……」
「お願いします!」
狭間圏
【盾戦士:Lv★】
HP:444/314(↑+5)【盾戦士】:+130
MP:22/674【盾戦士】:-10
SP:3/174(↑+3)
力:28
耐久:85(↑+2)【盾戦士】:+65
俊敏:46(↑+1)【盾戦士】:-15
技:20
器用:30(↑+1)【盾戦士】:-20
魔力:70【盾戦士】:-5
神聖:118(↑+1)【盾戦士】:-5
魔力操作:94【盾戦士】:-15
【回復魔法:Lv67 ハイヒール:Lv30(↑+1)】
【盾:Lv24(↑+1) ガード:Lv15(↑+1)】
【雷耐性:Lv0(New)】
【ストレージ:Lv46(↑+1)】
【毒薬生成:Lv18(↑+1) ポーション生成:Lv17(↑+1)】
【etc.(48)】