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99日目(異世界)

朝僕たちはポータルへ来た。

結構早く来たつもりだが、すでにフヨウがいた。


程なくして、ロウリュウとリャンリュウさんがやってきた。

「きっと来るだろうと思っていましたよ」


僕たちは、リャンリュウさんに軽くお辞儀をする。


リャンリュウさんがニコリと微笑む。

「厳しい修行になりますが、みなさんなら耐えられるかもしれませんね」


「では、ポータルから行くのはトイトイという町です。

そこから徒歩で昇仙山(しょうせんざん)へ向かいます。

私は門下生の指導がありますから、先に行きます。

ロウリュウ、みなさんを案内して差し上げなさい」

「わかったッス!」


僕たちはポータルを通ると、トイトイという町に飛ぶ。


おぉ!

一気に中華っぽい町になったな。

なんというか、文明もちょっと前の時代というか。

魔石は共通で使われているんだろうか。

魔石が使われていれば、生活のレベルや様式自体は変わらないだろう。


「では、私は先に行ってきますね」


そう言うと、リャンリュウさんはスタスタと走り出してしまった。


なんだあれは……

猛烈に速い。

もう小さくなっている。


「おぉ……めちゃくちゃ速いね」

「師匠はあぁ見えてせっかちッス」

「……ありゃ相当つえぇぞ」


ショーンは走りを見ただけで強さがわかるのか……

まぁあの速さは尋常じゃないからな。


「それじゃ俺達も向かうッス。

最初は軽く走るんで、付いてきて欲しいッス」


僕たちはトイトイの町を背に走り出す。











どれだけ走っただろうか。

町を出てからずっと同じ景色、荒野だ。

昇仙山というくらいだから、おそらく山に向かっているんだろう。

山なんて見当たらないんですが……


「……ぜぇぜぇ」

僕だけが疲れてきた。


「ケン、大丈夫かい?」

クラールが声をかけてくれる。


「そろそろ休憩をいれるッスか?」

「いや……もう少し大丈夫……」


異世界に来て、日本で普通に生活していたときよりはかなりステータスが上がっている。

今だって3時間くらい走りっぱなしだ。

1時間くらいしか走らないマラソン大会に比べれば、相当走れるようにはなっている。

ただ、この中ではダントツで体力が無いらしい。


「それじゃもう少し走るッス。

今日はできれば野営ポイントまで行きたいッス」











「とりあえずこの辺りで休憩するッス」

「……ぜぇぜぇ……」


返事をしたいが、返事ができないほどに息切れしている。


「まぁケンは本来後衛だからな。

頑張って付いてきてるほうだろ」

「……ぜぇ……ぜぇ……ほんとに……申し訳ない……」


僕はなんとか呼吸を整える。


「それッス!

本来後衛って本当のことッスか?」

「そうだよ。

君も彼が治療室で回復をしているのを見ただろう?」


僕が息切れしているので、クラールが代わりに答えてくれる。


「いや、あり得ないッスよ。

だって手、爆発してたッスよ?」

「ぶっ飛んだ野郎だからな」


「はぁ……はぁ……ちょっと……水……飲むね……」


やっと少し話せるようになってきた。

僕は手から【水魔法】で飲水を出す。


「ゴクゴクゴクッ!」


かぁ〜!

染み渡るな。


「ふぅ……みんなも水が必要だったら言ってね」

「頼むよ」


僕はクラールたちに【水魔法】を使う。

ショーン、クラール、ロウリュウに水を与える。

フヨウはこちらを少し見ると、無言で振り返る。

喉は渇いてないんだろうか。


「キミは?」

「……結構だ」


なんだろう。

ちょっと棘があるよな。

嫌われてしまったんだろうか。










それからさらに走り続ける。

キツイ……

部活動を思い出す。

でも、これから厳しい修行が待っていると思うと、いくらでも走れる気がする。


きついのに楽しみだ。

そのことが表情に出てしまったんだろうか。


「おい、ロウリュウ、ちょっと待ってくれ。

ケンが限界だ」

「……ぇ?」


「……ぜぇぜぇ、僕なら……まだいけるよ?」

「なるほど、こりゃ限界ッスね」


何を言ってるんだ?

まだまだ走れる!

行けるぞ!


「大丈夫、大丈夫!

さぁ!

走ろう!」

「お前、自分の顔見てみろよ」

「ケン、ほら鏡」


クラールが鏡を見せてくれる。

いつも【ストレージ】に鏡を入れているんだろうか。


クラールの手にある鏡を覗き込む。

!!


僕か?

目の焦点が合わず、よだれを垂れ流している。

さらにニヤニヤと笑っている。

完全に薬をやっている人の表情だ。


「えぇ!?」

自分の表情に気がつくと、ぱっと元の表情に戻る。


「それさ、どういう感情なわけ?」

ショーンが呆れて聞いてくる。


「いや、苦しいんだけど、これから修行が待っていると思うと……」

「ははは……」

クラールが苦笑いしている。










日が暮れる頃になんとか野営地に到着する。


「今日はここで野営をするッス。

このまま行けば、明後日には到着するッスよ」

「……はぁ……はぁ、申し訳ない」


僕が遅いので、今日はここで野営だ。


フヨウからの視線が痛い。

明らかに不満そうだ。

もっと進みたかったのだろう。


身体の節々が痛いので、【ハイヒール】を使っておく。

魔法は発動しているので、多少は効いているようだが、疲労は回復できないらしい。

疲労を回復する【回復魔法】ってのは無いんだろうか。


「クラールって後衛だよね?」

「う〜ん。

後衛っていうよりは中衛かな。

前衛ってわけじゃないけど」


「なんでそんなに体力あるの?

息切れしてないよね」

「息切れが美しくないからかな」


なんだそれ。

答えになってないし。


「ぁ、もしかして服に息切れ防止の魔石があるとか?」

「いや、そんな魔石は無いよ。

あったら大金を使ってでも欲しいね」


単純に体力があるということか。

ステータス的には耐久が影響していると思うんだけど。


肉体の疲労はあるけど、HPやMPが残ってるんだよな。

もったいないから使ってから寝たい。


「今日はMPが凄い残ってるんだけど、いつもの頼んでもいい?」

「今日もやるの?」

僕はクラールにいつもの訓練をお願いする。


「うん、少しでも耐久があったほうが明日走るのも楽になると思うし」

「今日は【光属性】の攻撃がいいかな?」


「いや、僕あれだけ【風魔法】使うのに、【風耐性】は持ってないんだよね。

だから【風属性】の攻撃を頼むよ」

「わかった。

ショーンはどうする?」

「もちろんやるぜ」


いつも訓練場でやる訓練を荒野でおこなう。


「じゃ、いくよ!

【旋風撃ち】!」


風をまとった矢が飛んでくる。

ぐるぐると螺旋状に向かってくるため、軌道が読みにくい。


ガツッ!


なんとか盾で受け止める。


ブシュッ!


が、【風属性】の効果だろう。

矢の周囲から、かまいたちのように風が全身を切り刻む。


盾に刺さった矢が消える。

【魔弓士】の矢は実体がない。

矢を用意しなくても、攻撃できるのが大きなメリットだそうだ。

SP消費が激しいらしいけど。


あとはできる限り回避の訓練も同時にしておきたいところだ。

できたら回避、できなければ盾で受ける。

俊敏、耐久、HPを同時に上げつつ【風耐性】を習得できれば理想的だ。


「おぉ!

面白いことしてるッスね!」

「お前もどうだ?

一日の終りにSPが余っているのはもったいないだろ。

クラール、いいよな?」

「問題ないよ」


ロウリュウは腰を落とし、構える。


「それじゃいくよ!」


「ハッ!」


矢に向けて突きを放つ。

するとクラールの矢が消滅する。


「驚いたな。

突きで矢を相殺するとは……」

「ぎりぎりッス。

本気を出されたら無理ッスね……」


「(本気じゃないのはわかっているのか……。

たいした使い手だな)

それじゃこのペースで撃つよ」

「なるほど、撃ち落とすのも面白そうだな」


ショーンも避ける動作から、槍で矢を撃ち落とす動作に変える。

僕は無理だ。

直撃を受け止める。

余裕があるときだけ避ける。

これ以外の回避行動は無理。

撃ち落とすとか、尋常ではない。


さらに今日は限界まで走ったため、動きがいつもより鈍い。

身体が思うように動かない。


「……………………」

フヨウは僕たちの訓練を無言で見ている。


「フヨウさんも一緒にどう?」

「私は結構だ。

馴れ合いに来たわけではない」


あらら……

なんだか言い方に棘があるよな。

やっぱり嫌われているんだろうか。


フヨウはそう言うと、スタスタと立ち去ってしまった。


狭間圏はざまけん

【盾戦士:Lv★】

HP:439/309(↑+2)【盾戦士】:+130

MP:11/666【盾戦士】:-10

SP:6/168(↑+3)

力:28

耐久:83(↑+2)【盾戦士】:+65

俊敏:45(↑+1)【盾戦士】:-15

技:20

器用:28(↑+1)【盾戦士】:-20

魔力:70【盾戦士】:-5

神聖:117(↑+1)【盾戦士】:-5

魔力操作:92【盾戦士】:-15

【回復魔法:Lv66(↑+1) ハイヒール:Lv29(↑+1)】

【盾:Lv23(↑+1) ガード:Lv14(↑+1)】

【ストレージ:Lv44(↑+1)】

【毒薬生成:Lv17(↑+1) 毒草生成:Lv31(↑+3) 薬草生成:Lv19(↑+2)】

【etc.(46)】

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― 新着の感想 ―
[一言] フヨウは協調性のないタイプだねぇ 日本人の方は主人公に好意的だったみたいだけど
[一言] 続きが読みたいです。更新をよろしくお願い致します。
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