98日目(異世界)
「いよいよ決勝です。
ロウリュウ選手!
オッズは1.6倍!
フヨウ選手!
オッズは1.6倍だ!
どちらも同じ!
これは接戦が期待できます!」
おぉ!
会場の熱気も最高潮だ。
「はじめ!」
シュッ!
シュッ!
バゴッ!
速すぎる。
なんとか見えるか?
どうやらフヨウの攻撃は当たっていない。
かする程度だ。
それに対し、ロウリュウの攻撃は少しずつ当たっている。
にしても連撃が凄いな。
炎と雷もあり、さらに見えにくい。
ぁ!
そうだ!
目で見ようとするから良くないんだ。
僕は【パーセプション】を発動し、試合会場に集中する。
げ……
ていうか、試合中もこれ使えばよかったんじゃ?
いやいや、【パーセプション】を使いながら闘うとか今はまだ無理だな。
おぉ!
すげぇ!
ロウリュウがフヨウの双剣を紙一重でかわし続けている。
それに対し、フヨウは防御行動をとっていない。
攻撃をくらいながら、距離を詰め、徐々に追い込んでいるようなかたちだ。
お互い容赦ないな。
ロウリュウも女の子の顔面に拳をぶち込みまくっている。
しかし、フヨウは意に介さず腹だろうと、顔面だろうと攻撃をもらいながらも前進し双剣を振るう。
今はロウリュウが優勢だが、全くわからないな。
仮にフヨウの【雷属性】が一発でも入れば、そこからハメ技が始まるだろう。
ロウリュウもそれがわかっているから、引きながら攻撃をしているんだ。
バゴッ!
シュッ!
バキッ!
シュッ!
ロウリュウがステージの端まで追い詰められる。
「……はぁはぁ」
攻撃を当てている方のロウリュウに疲れが見える。
「なんなんスか……
攻撃をもらいながら前進とか、正気の沙汰じゃないッス……」
「私は……誰が相手でも負けるわけにはいかない。
ましてや、こんなところでは負けられないのだ」
ゴオオォォォォ!
フヨウの右の双剣から炎が激しく吹き上がる。
「まだ本気じゃなかったんスか?」
「私は常に本気だ……
誰が相手でもな……」
バリバリバリ!
今度はフヨウの左手の剣から雷がほとばしる。
「これはやばいッスね……
フンッ!」
ロウリュウも構えをする。
すると、ロウリュウに何か集まり淡く光りだす。
僕の試合の時と同じだ。
キイィィィン!
「【昇仙真拳】!」
「【豪炎滅雷剣】!」
拳と炎と雷が混ざり、大きく光りだす。
ロウリュウが回転しながら吹っ飛ぶ。
「がはっ!」
フヨウは……負傷しているが、立っている。
「勝者!
フヨウ選手!」
「オオオオォォォォ!」
会場の熱気が凄い。
大技で締めくくられたのだ。
見てる方は楽しいだろう。
ロウリュウもダメージは大きいが命に別状は無いようだ。
僕は運ばれてきたロウリュウに【ハイヒール】をかけておく。
「完敗ッス。
上には上がいるもんスね……」
◇
その後フヨウも治療室へ来る。
決勝で初めて負傷したのだ。
彼女は治療を終えると、スタスタとこちらへ歩いてくる。
「ロウリュウ、と言ったか?」
「なんスか?」
あぁ、僕ではなくロウリュウに用があるらしい。
「私を昇仙山に連れて行ってもらえないだろうか」
「構わないッスけど、師匠には絶対に勝てないッスよ……」
ロウリュウには師匠がいるのか。
すげぇ強そうだな。
「ん?
いや、違う。
道場破りではない。
門下生としてだ」
「門下生ッスか?」
異世界にも道場破りというのが存在するんだな。
「すまない。
誤解させてしまったようだな。
そちらで【昇仙拳】を学ばせてほしい」
「まぁ来るのは自由ッスね。
修行に耐えられるかは別として、希望すれば誰でも入れるッス」
なぬっ!
「僕もっ!」
僕は我慢できずに、話に割って入る。
「僕も門下生になりたいッス!」
やばい。
ロウリュウの口調がうつった。
「ぇ?
それは、別に構わないッスけど……」
「ロウリュウさん、フヨウさん、表彰がありますので、ステージへ上がってください」
◇
表彰が終わり、僕たちは会場の外へ出る。
「ぁ!
師匠!
見ていてくれたんスね!」
ロウリュウに師匠と呼ばれた人物は、黒の長髪を後ろで縛っている。
30代だろうか。
いや20代にも見えるな。
背丈は普通で175cmくらいだろうか。
美形で優しそうだ。
中性的で細身だし、格闘家っぽくはないぞ。
とりあえず強そうには見えない。
「えぇ、もちろん見ていましたよ。
よく健闘しましたね。
良い対戦相手とも巡り合え、成長できたようですね」
「はい!
優勝はできなかったッスけど、悔いはないッス!」
「それで?
そちらの方は対戦相手でしたよね?」
「フヨウと申します。
私を門下生として受け入れていただけないだろうか」
「僕も!
僕も【昇仙拳】を学びたいです」
僕もすかさず割って入る。
「構いませんよ。
私は【昇仙拳】の師範代、リャンリュウと言います。
よろしくお願いしますね」
リャンリュウさんは優しそうにニコニコと微笑む。
「おいケン、こんなところにいたのか。
打ち上げだろ?
飲みに行こうぜ」
タイミング良くショーンとクラールがやってきた。
「ぁ!
そうだ!
二人もどうかな?
リャンリュウさん!
僕の他に二人もいいですか?」
「えぇ、構いませんよ」
「どういうこと?」
「おいケン、何の話だよ?」
僕はショーンとクラールに説明をする。
◇
「そういうことか……」
「どうするクラール?」
「今すぐ決める必要はありませんよ。
私達は今日宿に泊まり、明日出発するので入門を希望する人は明日ポータルまで来てください。
少し遠いので野営の装備もあると良いでしょう」
「はい!
よろしくお願いします!」
「では、私も失礼する」
「んじゃ明日、待ってるッスよ!」
フヨウとロウリュウ、師匠も去っていく。
なんとなくだが、ロウリュウとは気が合いそうだ。
フヨウとカミキさんの関係も気になるし、一緒に修行ができたらと思う。
◇
「いい試合だったよ。
自分の弱点をよく理解して【風魔法】を使えていたよね」
「でも完敗だったよ。
正面から【フレアバースト】を破られたからね」
「いやお前、場外無しだったらもっといけたぞ」
僕とショーン、クラールは食堂に来ている。
打ち上げだ。
治療室の仕事もこなしたことで、お金も入った。
さらにギルド貢献度も1つ上がって5になった。
「それでケン、【昇仙拳】の門下生になるの?」
「うん、二人も一緒にどうかな?」
「【体術】だろ?
俺は蹴りくらいしか使わねぇからなぁ。
わざわざ門下生になってまで修行する必要あんのか?」
「いや、【昇仙拳】はただの【体術】じゃないよ。
極めればSPの消費が抑えられるって話だ」
「あと【昇仙真拳】って技、普通に強かったよ」
「まぁSP消費は抑えれれば、その分【体術】以外のスキルの上がりも早いしな。
戦闘中以外のメリットも大きいな」
「行ってみるか?」
「だね」
「決まりだね」
「ところでショーンは、フヨウやロウリュウに勝てそう?」
「ん?
あれで本気なら楽勝だろ」
……マジかよ。
狭間圏
【斥候:Lv48】
HP:306/306
MP:22/659
SP:3/162(↑+2)【斥候】:+116
力:28
耐久:81
俊敏:44【斥候】:+50
技:20【斥候】:+50
器用:26(↑+1)
魔力:70
神聖:116(↑+1)【斥候】:-1
魔力操作:90
【回復魔法:Lv65(↑+1) ハイヒール:Lv28(↑+1)】
【ストレージ:Lv42(↑+1)】
【毒草生成:Lv25(↑+3) 薬草生成:Lv15(↑+2)】
【etc.(48)】




