93日目(異世界)後編
僕たちは第四戦線西へ向かう。
「…………………………」
僕は無言だ。
というのも、このパーティは僕たち以外だと、前衛の盾戦士3人と3人の魔法職が男性で、残りの魔法職の人たちは全員女性だ。
クラールはにこやかに女性たちと会話をしながら進んでいる。
僕は年上の女性に慣れていない。
同級生とだって、女子とはそれほど積極的に話したりしなかったしな。
そもそも男女に関わらず、年上って先生と親くらいしか話したこと無いな。
「ったく緊張感がねぇよな。
ピクニックじゃねぇんだぞ……」
「いや、僕は悪い意味で緊張感があるよ……」
やっぱり居心地が良くない。
さすがに狩りが始まってしまえば大丈夫だとは思うけど。
「腕爆発させながら攻撃するやつの言うことかよ。
シャキっとしとけ!」
バンッ!とショーンに背中を叩かれる。
「あなた、範囲攻撃魔法は【辻風】と【風刃】が使えるんですって?」
魔法使いの女性に話しかけられる。
スカートと胸元にスリットが入っており、目のやり場に困る。
魔法使いって攻撃はあまり受けないとは思うけど、その服装は防御力どうなってるんだろうか。
「はい、範囲攻撃は【辻風】と【風刃】しか使えません」
「なら地面から少し浮かせて使いなさい。
土埃が舞うと、他の前衛や魔法使いに迷惑がかかるからね」
「なるほど、ありがとうございます!」
「ふふ……
素直な坊やも悪くないわね……
今度魔法を教えてあげようかしら」
「よろしくお願いします!」
うぅ……
なんだろう、ドキッとしてしまうな。
「おいこら、悪い意味の緊張感はどうしたんだよ」
「たった今、良い意味での緊張感に変わったのかも……」
「やれやれ、いい気なもんだぜ」
◇
徐々に魔物が現れる。
ここは草原だけあって、野獣の魔物だ。
虎やサイ、カンガルーのような魔物だ。
すべて明るい黄色をしているので目立つ。
盾戦士が挑発し、後ろから魔法部隊が殲滅する。
「黄色がマイティ種だ。
マイティ種は大して強くないぞ。
ある程度群れを引っ張ってきても殲滅できる。
この狩場だとたまに赤いやつがいるんだが、それがフィアス種だ。
すべてのステータスがマイティより上だ。
釣ってくるのは2匹までにしてくれ。
フィアスが3匹以上くると少しキツイ」
「了解。
色が違うのはわかりやすいな」
ガインさんが説明してくれる。
「あと、黒いのはデス種だ。
今日の狩場では出ないと思うが、出たら逃げてきてくれ」
「そんなにやばいのか?」
「まぁな。
単体ではそこまで脅威じゃないが、大量のモンスターに2匹以上デスがいると戦線が崩れる可能性がある。
今日はやめておいたほうがいいだろう」
「わかった」
「よし、この辺りでいいだろう。
陣形を組め!」
全部で何人いるんだろうか。
これで一つのパーティだとすると、ダブルヘッドのときよりも大規模になるか?
前衛に盾戦士が3人。
その後ろにクラールたち弓部隊。
僕たちはその後ろ、魔法部隊だ。
「よし、最初は10匹くらいでいいぞ」
「オーケー!」
10匹って結構多いな。
ショーンは颯爽と駆けていく。
…………………………
全員が無言のまま構える。
「来たぞ!」
数分後、ショーンが走って戻ってくる。
ドドドッ!
10?
いや20くらいいないか?
「すまん!
思ったより固まってた!」
ズザァッ!
ショーンは盾戦士達の位置で止まり、振り返る。
「「うぉぉぉ!!」」
盾戦士達が挑発系のスキルを発動する。
「【サンダーレイン】!」
「【ファイアストーム】!」
「【アイスレイン】!」
「【トルネード】!」
「【辻風】!」
魔法部隊が一気に魔法を発動させる。
ゴオオオオォォオッ!
バチバチッ!
ガガガ!
爆音とともに、炎や風、雷などが鳴り響く。
僕も【辻風】を数発撃っておいた。
すげぇ……
これが魔法部隊か。
20匹くらいいた魔物が一掃される。
前衛のダメージもほとんどない。
おそらくだけど、ここの魔法使い一人ひとりがかなりの実力なんだろう。
「全部マイティ種だったんだろう。
あれくらいの数なら全然問題ないな。
次はもっと連れてきてもいいぞ」
「わかった」
僕たちは素材を一通り回収する。
魔法で滅多撃ちにされているため、素材の状態はあまり良くない。
魔石だけは、きちんと集めておくのが一般的らしい。
「よし、今度は向こうに行ってみる」
再び数分後にショーンが魔物を引き連れてくる。
「赤がいたぞ!
フィアスだ!」
「了解!」
また20匹くらいだ。
確かに1匹赤いのがいる。
「【サンダーレイン】!」
「【ファイアストーム】!」
「【アイスレイン】!」
「【トルネード】!」
「【風刃】!」
凄まじい爆音と共に、魔物が殲滅される。
今度は1匹赤い虎の魔物が生き残っている。
「ウガァッ!」
ガギンッ!
前衛が盾で攻撃を受ける。
「【濁流槍】!」
バシュシュッ!
ショーンの濁流槍でも倒れない。
が……
「【ファイアアロー】!」
「【アイスランス】!」
「【エアブレード】!」
今度は魔法部隊が単体魔法を連発する。
ドサッ!
フィアス種をあっという間に仕留めた。
「これならフィアスが数匹いても大丈夫だな。
ここの狩場なら全く問題ないだろう」
やはり数人高レベルの魔法使いがいるな。
数発桁違いの威力の魔法が入る。
魔法の範囲が一回り大きいんだ。
ん〜……
僕の範囲魔法は逆に一回り小さいな。
武闘大会のためにちゃっかりジョブを【斥候】にしている。
おそらくそのせいで、この中で魔力がダントツに低いんだろうな。
◇
10回くらい繰り返しただろうか。
「MPが減ってきたわ!」
「私もそろそろよ」
「よし、充分だ。
切り上げよう!」
僕たちは来た道を帰る。
「おい、君はショーンと言ったな。
いい動きだった。
お陰で効率の良い狩りができたぞ。
またどうだ?」
「あぁ、こっちもお願いしたいよ」
「ジョブの上がりが凄かったよね」
「それから、【魔弓士】の君もかなりの火力だ」
「ありがとうございます」
やばいな、僕は結構火力不足だったと思う。
二人ほど役に立ってないだろう。
「それから今回の狩場は俺たちがほとんどダメージをもらわなかったが、東や南の狩場ではそうはいかないだろう。
そっちに行くときは君の【エリアヒール】が頼りになるだろう」
「了解です。
そのときはまたよろしくお願いします」
リーダーにフォローされてしまった。
実際このレベルのパーティになると、回復以外ではあまり役に立てないだろう。
「また明日も狩りをするんですか?」
また今度と言わずに、明日狩りがあるならば参加したい。
「いや、通常は4日に一回くらいだ。
この狩りは抜群に効率が良いが、MPを大量に消費するだろ?
だから4日に一回、MPを全快にしてくるわけだな」
「なるほど」
そうだったのか。
また是非参加したい。
狭間圏
【斥候:Lv48】(↑+31)
HP:286/286(↑+3)
MP:21/612
SP:6/142(↑+3)【斥候】:+116
力:25
耐久:74(↑+1)
俊敏:37【斥候】:+50
技:16【斥候】:+50
器用:23(↑+1)
魔力:67(↑+3)
神聖:110(↑+1)【斥候】:-1
魔力操作:81(↑+2)
【風魔法:Lv72(↑+1) エアブレード:Lv57(↑+1) 辻風:Lv4(↑+4) 風刃:Lv4(↑+4)】
【回復魔法:Lv61(↑+1) エリアヒール:Lv12(↑+1) オートヒール:Lv29(↑+2)】
【光耐性:Lv4(↑+3)】
【ストレージ:Lv35(↑+1)】
【ポーション生成:Lv15(↑+1) 毒消しポーション生成:Lv2(↑+1)】
【etc.(40)】




