82日目(異世界)
この狩場も3日目だ。
そしてわずか3日で、ここでの狩りが安定している。
この狩場のモンスターであるレッドクロコダイルは本来強敵だ。
安定して狩りができているのは、ショーンとクラール、特にショーンが強すぎるからだ。
SPを温存しながら充分に戦えている。
「なぁ、そろそろ奥へ行かないか?」
「僕もそう思っていたところだよ」
ショーンの問いにクラールが答える。
「奥は魔物が増えるって感じ?」
「まぁそれもあるだろうね。
ただそれよりも、奥から炎狐と呼ばれる魔物がでるみたいだ。
小さな狐の魔物で、【炎魔法】を使ってくる。
ショーンとケンは【炎耐性】ある?」
「いや、俺は持ってないな」
「僕は【炎耐性】のスキルレベルは10だよ」
「ぉ、さすが腕燃やしながらパンチ撃つヤツは違うよな」
「確かに、あの技で【炎耐性】がついたのかな?」
「きっかけは違うけど、【フレアバースト】で【炎耐性】は結構上がるよ」
「よし、じゃあケンが死ぬことはないね。
奥へ行こう」
この中で1番耐久、それからHPが低いのは間違いなく僕だろう。
その僕が【炎耐性】を持っていれば遠距離攻撃に耐えることができる。
おそらく死ぬことはないって感じだろうか。
奥の狩場には、レッドクロコダイルのほかに、40cmくらいの小さな狐がいる。
あれが炎狐だろう。
しっぽが3尾あり、耳の先と尻尾の先が赤い。
見た目は可愛らしいが、ギルドの情報によると【炎魔法】が強力らしい。
「とりあえず様子を見たい。
ショーン、SPのことは考えずにある程度数を減らしてほしい。
それから炎狐だけになったらSP消費を抑えた狩りに切り替えよう」
「オーケー!
任せときな!」
そう言うと、ショーンは踏み込みレッドクロコダイルに突っ込む。
「ハッ!」
【清流槍】だ。
レッドクロコダイルを速攻で仕留める。
それからクラールが炎狐に【トリプルスラスト】を使っていく。
ズシャッ!シャッ!シャッ!
炎狐が倒れる。
あれ?
クラールの技で一撃だ。
耐久力はレッドクロコダイルよりかなり低い。
「ショーン!
炎狐は耐久が低いよ!
僕でも一撃だ」
……しかし。
ボワッ!
「なっ!
これが【炎魔法】か!」
他の炎狐が【炎魔法】を使ってくる。
クラールの腕が燃え上がる。
まずい!
僕は【ハイヒール】をクラールの腕にかけていく。
「くっ!
ショーン!
炎狐がいたら優先的に仕留めてくれ!」
「あぁ、わかった!」
ボワッ!
ボワッ!
「ちょっ!
待って!」
クラールを回復していると、ショーンの肩も燃え上がる。
僕の回復速度よりも、彼らのダメージのほうが大きい。
僕は耐久力の低いクラールを優先して【ハイヒール】を重ねがけていく。
「クソッ!
【濁流槍】!」
ブシャシャシャッ!
水しぶきとともに、高速の突きが放たれる。
炎狐が【濁流槍】で仕留められる。
距離さえ詰めてしまえば、ショーンの実力ならすぐに仕留められる。
しかし、奥からぴょんぴょんと次々に炎狐が出てくる。
「待って!
回復が間に合わない!」
「っ!
一旦引こう!」
「おいケン!
お前から下がれ!」
「わかった!」
後衛の僕が下がらないと、前衛は下がることができない。
僕は猛ダッシュで後退しながら【ハイヒール】をかけていく。
ボワッ!
あっつ!
僕の身体も燃え上がる。
去り際に一発もらってしまった。
「はぁ……はぁ……」
「あれは厳しいね……」
「あちち……」
僕とショーンは汗とすすにまみれている。
「くそ、ちょこまかと動き回りやがって……」
「あはは、あれは参った……」
「ねぇ、クラールはなんで汗1つかいてないの?」
おかしい。
僕とショーンは汗とすすにまみれているのに、言葉と裏腹にクラールはすすしげな顔だ。
「昨日から思ってたんだけど、全く汗かいてないし、服も汚れてないよね」
「あぁ、僕は汚れるのが嫌いなんだよ」
ん?
いやそれ回答になってなくないか?
「こいつの服にはそういう魔石が組み込んであるんだよ」
ショーンが説明してくれる。
「そうそう、便利だよ。
MP減るけど」
「ぇ!?
MP減っちゃうの?」
「まぁ普通そういうリアクションするよな。
そのせいで死ぬかもしれないんだぜ?」
「あはは、僕は汚れるくらいなら死を選ぶよ」
「マジか……」
「マジだ」
ショーンが呆れたように肩をすくめる。
MP消費して清潔を保っているらしい。
「いやしかし参ったね。
先には進めそうにないよ」
「だなぁ。
ケン、MPどうよ?」
「今ので結構減ったよ。
あと3割くらいかな。
【ヒール】じゃやばかったかもね」
「ありゃダメだな。
残りのMPはレッドクロコダイルで使おうぜ」
「了解」
◇
夕方にはMPが0になる。
これでイヴォンさんから言われた3日間僕のMPを0にする、というミッションはクリアできた。
「しかし、すげぇ量だな」
「そうだね……」
目の前にはレッドクロコダイルの素材が大量にある。
昨日と一昨日は、狩りが深夜まで続いてしまい、素材を売ることができなかった。
「魔石も結構あるし、父上に買い取ってもらおうか」
「それが良さそうだな。
肉も教会が喜ぶんじゃねぇか?」
「教会のご飯おいしいからね」
そんな話をしながら、ギルド近くへ戻る。
おや?
イヴォンさんだ。
どうやら待っていたようだ。
「どうでしたか?」
「どうもこうもないよ、ケンのMPがバカみたいにあるし、毎日回復するとかありえないだろ。
イヴォンさんは知ってたんだろ?」
「もちろんそうですよ。
良い修行になったでしょう?」
「まぁそうですね。
父上の思惑通りって感じだと思います」
僕たちは習得したスキルや上昇したステータスをイヴォンさんにざっくり説明する。
「そうですか、それは良かった」
「父上、この素材どうします?
教会で使いますか?」
「ほほぉ、それはありがたいですね。
全部いただきましょう。
それからレッドクロコダイルの革は若干ですが【炎魔法】のダメージを軽減します。
あなた達の防具をそろえてあげましょう。
差し引きして、残った分のお金を支払います」
「そりゃいいな。
あの【炎魔法】は今のままじゃ無理だ」
「炎狐とも戦ったんですね。
では皆さん、色は何色がいいですか?」
「ぇ?
色とか変えられるんですか?」
「はい、有料ですができますよ。
そしてこれだけの素材なら、ある程度装飾しないと勿体ないですね」
「そうなんですか」
ちょっとよくわからないな。
正直性能が良ければ見た目はどうでも良かったりする。
「僕は白だね。
父上、汚れ防止の魔石もお願いします」
「俺は緑かな」
クラールは今の装備と同じく白だ。
王子様感が半端ない。
そしてショーンは髪色と同じ緑。
「僕は黒でお願いします」
僕は汚れが目立たない黒だな。
「わかりました。
ではみなさんお疲れでしょう。
今日は教会でゆっくり休んでください」
やった。
久しぶりにベットで寝られる。
まぁ日本ではずっと寝たきりなんだが……
狭間圏
【上級聖職者:Lv25(↑+9)】
HP:248/248(↑+1)
MP:0/541【上級聖職者:+100】
SP:2/105(↑+3)
力:21
耐久:59
俊敏:37
器用:14
魔力:46(↑+3)【上級聖職者:+55】
神聖:90(↑+5)【上級聖職者:+82】
【回復魔法:Lv49(↑+1) ハイヒール:Lv11(↑+5)】
【補助魔法:Lv40(↑+1) プロテクト:Lv61 バイタルエイド:Lv61 マナエイド:Lv16】
【ストレージ:Lv23(↑+2)】
【etc.(34)】




