81日目(異世界)
今日も朝から狩りだ。
クラールの動きが昨日とまるで違う。
前衛の動きに慣れたというのと、昨日の後半は疲れ切っていたのが大きいのだろう。
さらに、俊敏のステータスも上がったのだ。
昨日は【ヒール】の9割位はクラールに使っていたが、その頻度が減ってくる。
「いい動きじゃねぇか」
「まぁね、昨日よりだいぶ慣れたよ。
それから【フェンサー】のジョブが上がったのが大きいね。
ステータス補正が上がったから」
「狩りの効率が上がって、ダメージも減ったのは嬉しいことなんだけど……
それだと今日の狩りが長くなるよね……」
イヴォンさんから言われているのが、毎日僕のMPを0にすること。
受けるダメージが減れば、僕のMP消費が減り、狩りが長引くんだ。
「ん?
でも昨日使い切ったから、今日は半分以下だろ?」
「いや……
それが、僕は特殊な体質で毎日MPが全快するんだ」
「は?
そんなわけが……
……いや、だからか……」
ショーンには以前修行に付き合ってもらったことがある。
だからなんとなく気がついたんだろう。
納得したようだ。
「えっと、それは父上も知っていることなのかい?」
クラールが苦笑いしながら聞いてくる。
「そうなんだ。
イヴォンさんとカルディさん、それからアインバウムの冒険者ノーツさんの3人は知ってるよ。
それでこのことは内密にして欲しい」
「なるほど……
わかった、そういうことか。
父上も最初に説明してくれればいいのに……」
クラールはため息まじりだ。
僕の話が本当なら、今日の狩りも長引くことが確定だからな。
そして、クラールもイヴォンさんのことだから、このMP回復は間違いないだろうといった感じだ。
もっと言うと、昨日より【聖職者】のジョブが上がってMP補正が大幅に上がっている。
さらに日本で使った【マナエイド】がまだ効いており、MPが1割ちょっと多くなっている。
トータル昨日の1.2倍はあるぞ。
大丈夫かこれ……
「まぁ考えても仕方ねぇ!
とにかく狩るぞ!」
◇
しばらくすると、クラールが技を使いだす。
「【ダブルスラスト】!
ハッ!
【ダブルスラスト】!」
連続で技を使い続ける。
カチャリ。
ぁ、僕の方も新しいジョブが出たようだ。
クラールが技を連発し、辺りの魔物が殲滅される。
「おい、どうした?
【ダブルスラスト】ってのは新しい技か?」
「うん、そうなるね。
やっと習得できた。
SP消費は1だ」
「なっ!
それでお前連発してたのか!?」
「そうだね。
SPの消費を抑えつつ、ひたすら戦い続ければ消費の低い技を習得できるみたいだ。
ショーンはSPも多いし、大技ばかりだろうから習得に時間がかかるのかもしれない」
「クソッ!
先を越されたぜ……」
「ぁ、僕もジョブが出たんだ。
確認してみるよ」
きたぁ!
【上級聖職者】だ。
さらに【ハイヒール】を習得している。
「【上級聖職者】のジョブと【ハイヒール】だ!」
「おめでとう」
「やったな、おい」
「よし、これからは【ハイヒール】で回復するよ。
MP消費が上がると思うから、昨日みたいに深夜まで時間はかからないと思うよ。
ん?
……ていうか、ジョブをMPと神聖が低いものにすれば、早めに切り上げられるけど……」
「おい、それじゃ意味ねぇだろ。
それになんか卑怯だよな」
「そうだね。
僕も父上に
『ほほぅ、それは考えましたね。
確かにそれならMPを0にできます。
あなた方はそれでいいんですね……?』
とか言われそうだから、やめておくよ」
確かにイヴォンさんならそういうこと言ってきそうだな。
「そうだね。やめておこう。
今のは忘れて」
◇
それからさらに狩り続ける。
「よし!
きたぜぇ!
【二段突き】!」
おぉ!
今度はショーンだ。
SP消費の低い技を習得したんだろう。
にしても、威力がやばい。
あれで低燃費とかどうなってんだろう。
レッドクロコダイルが吹っ飛ぶ。
狩りの効率がさらに上がり、今日は僕の方には一切攻撃が来ない。
が、疲労は徐々に蓄積されているようだ。
僕はまだ回復だけだが、前衛の2人は昨日から動きっぱなしだ。
そして、そろそろ補助が切れる。
「ちょっと試したいことがあるんだ。
一旦いいかな?」
2人はこちらを見てうなずく。
一旦魔物を殲滅して集まる。
「なんだい?」
「そろそろ補助が切れると思うんだけど、同時に補助をかける訓練をしたいんだ」
「?」
「それって?」
「あぁ、もしかしたら同時に補助をかけたら新しいスキルが得られるかもしれない」
思った以上に【ハイヒール】の習得には時間がかかった。
しかし、【ハイヒール】よりも上位の【エリアヒール】は既に習得している。
あれは【マルチタスク】を使って2箇所以上にあらかじめ【ヒール】を使うことで範囲的になり習得したんだと思う。
ということは、【プロテクト】や【バイタルエイド】なども複数同時に使うことで【エリアプロテクト】みたいなのを習得できるかもしれない。
「ということなんだ」
「それは試してみる価値は充分にあるよ」
「まぁやってみろよ」
「よし、やってみる!」
僕たちは背中合わせで3人かたまった。
【プロテクト】!
ダメだ……
2人同時にはできるようだが、そうすると僕にはかかっていない。
とりあえず時間がずれると面倒なので、僕自身に【プロテクト】をしておく。
さらに
【バイタルエイド】!
これもダメ……
同じく2人までは同時に補助をかけることができている。
さらに同じように効果時間がずれると面倒なのですぐに僕自身に【バイタルエイド】を使っておく。
「どうだ?」
「いや、ダメみたいだね。
2人までしか同時にかけられないし、何も習得できていないよ」
「いや、今後は補助が切れるタイミングで集まろう。
何度も試す価値はある」
その後狩りを続け、補助は何度も同時にかけたが何も習得はできなかった。
そして本日の狩りは、昨日よりは若干早く終わることができた。
狭間圏
【上級聖職者:Lv16(New ↑+16)】
HP:247/247
MP:0/533(↑+1)【上級聖職者:+82】
SP:4/102(↑+3)
力:21
耐久:59
俊敏:37
器用:14
魔力:43(↑+3)【上級聖職者:+46】
神聖:85(↑+6)【上級聖職者:+82】
【回復魔法:Lv48(↑+2)ハイヒール:Lv6(New ↑+6)】
【補助魔法:Lv37(↑+2) プロテクト:Lv60(↑+1) バイタルエイド:Lv60(↑+1) マナエイド:Lv15】
【マルチタスク:Lv40(↑+1)】
【ストレージ:Lv21(↑+2)】
【etc.(33)】




