80日目(異世界)後編
第三戦線の狩場へ来た。
「いるな……」
奥にはレッドクロコダイル2匹がいる。
燃えるような赤い色をしたワニだ。
ギルドで調べた情報によると、火属性の魔物でショーンの水属性は弱点になる。
ここのモンスターは火属性がほとんどだからショーンの水属性は相性がいい。
僕は全員に【プロテクト】と【バイタルエイド】をかける。
「いくぞ!」
ダッ!
ショーンが踏み込み突進と同時に槍を突き出す。
「おらららら!」
【濁流槍】だ。
高速の突きと同時に水が吹き出る。
「ハッ!」
クラールも前に出る。
ショーンが攻撃しているレッドクロコダイルに華麗に突きをする。
まずは集中して1匹を倒す作戦だ。
速いな……
ショーンほどではないが、動きが速い。
「ガァァァ!」
「くるぞ!」
レッドクロコダイルが、口から炎を吹き出す。
予備動作が大きいので、二人とも後ろへ飛び回避する。
「危ない!」
ドガッ!
もう一匹がクラールに突進する。
クラールは吹っ飛ぶが、華麗に受け身を取る。
いちいち動きが華麗なんだが……
よし、【ヒール】だ。
クラールの動きはかなり速いが、目で追えないほどではない。
【マルチタスク】でクラールが動きそうなところに【ヒール】を使っておく。
「【清流槍】!」
ショーンがレッドクロコダイルを突き抜け、淡い光と残像がその後を追う。
ダブルヘッドを仕留めた技だ。
ブシュッ!
ドサッ!
1匹仕留めたようだ。
「【トリプルスラスト】!」
おぉ!
今度はクラールの細剣技だ。
目にも留まらぬ三連突き。
本当にメインの武器は弓なんだろうか。
細剣でもかなり強いだろう。
「ギュエエェェ!」
「いくぜ!
【清流槍】!」
レッドクロコダイルが怯んだ隙にショーンが追い打ちをかける。
ドサッ!
2匹仕留めるのにそれほど時間はかからなかった。
「よし、あとは任せて。
【解体】!」
ぇ?
クラールが手をかざすと、レッドクロコダイルが一瞬で肉と皮になる。
何だ今のは。
スキルか?
「おぉ!
すごいね!
そんなスキルがあるのか……」
「【狩人】のジョブを上げきったときに習得したんだ。
ケンはSPを使わないだろうから、素材はケンの【ストレージ】に入れておいてくれ」
「了解!」
「しかし、ケン。
僕の動きはそれほど速くないけど、【ヒール】が的確に入るね。
助かるよ」
「僕はこれくらいしかできないからね。
もう少し慣れれば、ショーンの動きにも合わせられるかも」
「おぅ、期待してるわ」
「しかし、レッドクロコダイルってのは弱くはねぇが強くもねぇな。
奥に行けば、もっと数が増えるのか?」
「……いや、僕は嫌な予感しかしないよ。
父上はどれだけ倒せとか、何処まで行けとは言ってない。
ケンのMPを0にしろ。
それだけだ。
ケン、MPの減りはどう?」
「いや……全然減ってないよ。
だって二人ともほとんど攻撃くらってないじゃん」
「だろうね……
それに対して僕らのSPは減ってる。
特にショーン、君は大技を2回も使ったよね」
「あぁ、それなりの敵だったからな。
今はまだSPがあるが……」
「このままだとSPが切れる……だろ?」
「そりゃな」
「僕は細剣技は【トリプルスラスト】しか使えない。
……父上の狙いが分かったよ」
「イヴォンさんの狙い?」
「第一の目的はケンのジョブレベル。
それから僕とショーンのSP上げ。
そして僕の耐久、HP上げ。
さらには、僕とショーンに持久力をつける、おそらくはSP消費の少ない技を習得させるのが目的だろう」
「なんだよそれ、多すぎねぇか?」
「父上は、お金以上に効率が好きだからね。
そうと分かれば、小技を使うしか無い。
いずれにしろ僕は【トリプルスラスト】しか使えないけど、ショーンはSPの消費が少ない技に切り替えてくれ」
「了解」
「!!
ちょっと待って!
今のだけでジョブが3も上がってるよ!」
僕は驚いて声を出す。
聖職者が20から23になっていたのだ。
「レッドクロコダイルはダブルヘッドくらい強いからな。
何匹か狩れば、俺も少しは上がるかもしれねぇ」
「僕の【フェンサー】も結構上がってるよ。
よし、どんどん狩ろう!」
◇
SP消費を抑えた狩りに切り替える。
「ぐっ!」
「チッ!」
ショーンもクラールもダメージを受けながら戦闘をする。
明らかに殲滅力が下がり、レッドクロコダイルが常に2匹いる状態がしばらく続く。
倒す速度と新しく湧く速度がほとんど同じなんだ。
だから、休む暇がない。
「【ヒール】!
【プロテクト】!
【バイタルエイド】!」
回復の他に、補助を常に切らさないようにかけておく。
「ショーン!
一旦殲滅だ」
「おぅよ!」
「そらそらそら!」
ショーンが【濁流槍】で殲滅をする。
殲滅後、クラールが【解体】でレッドクロコダイルの素材を集める。
ちなみに僕の【ストレージ】はもう一杯だ。
「一旦ギルドへ行こう」
「だな、SPもほとんど切れたぜ」
僕たちはギルドへ行き、レッドクロコダイルの素材を預ける。
今日の狩りはまだ続くので、素材の値段を査定してもらっておく。
「おいケン。
お前MPはどれくらい残ってるんだ?」
「7割くらいは残ってるかな」
「なっ!」
「はぁ!?」
「おい、こっから地獄だぞ……」
「そういうことだね……」
◇
もうじき日が暮れる。
だけどまだ僕のMPは4割位残っている。
「………………」
「はぁ……はぁ……」
前衛2人に疲労が見られる。
そりゃそうだ。
ずっと動きっぱなしだ。
「おいケン!
そっちに一匹行ったぞ!」
「!!
【ガード】!」
ドガッ!
うぉ!
ゴロゴロ!
ズザァ!
僕は吹っ飛び転がる。
【ガード】の上からでもダメージを受けるので、すかさず【ヒール】をする。
まずい!
また突進が来る!
いや!
反撃だ!
右手に装備したステッキをしまう。
腰を落とし、レッドクロコダイルの突進に合わせて拳を突き出す。
「【フレアバースト】!」
バゴォォォオオオオン!
「ギュエェェェ!」
レッドクロコダイルが吹っ飛び、悲鳴を上げる。
「なっ!」
ショーンとクラールは驚いているが、クラールはすぐに平静になる。
「ショーン!
一旦殲滅だ!」
「ぁ、あぁ!」
いってぇ〜……
前回のように大木に撃ったわけではないが、それでも右手は折れており、黒ずんでいる。
【オートヒール】が発動しているな。
レッドクロコダイルは火属性の魔物だが、【フレアバースト】はそれでも威力があるのだろう。
一発で仕留めることができた。
イヴォンさんは攻撃魔法は使うなって言ってたけど、スキルは何も言ってないしアリだよな。
とにかく【ヒール】だ。
僕は殲滅が終わるまでずっと【ヒール】をしていた。
魔物を殲滅して、一旦引く。
「おいケン!
今のはなんだ?」
「【フレアバースト】っていう攻撃スキルだよ。
威力は凄いんだけど、使うと自滅しちゃうんだよね」
「……もしかして、死にかけたときに習得した、とか?」
「うん、まぁ……」
「父上が言ってたのはこういうことか……
ショーン、僕らにはやっぱり経験が足りないってことだ」
「だな……」
ショーンが笑う。
「おいクラール、俄然やる気が出てきたぜ!」
「フッ……
気が合うね……僕もだよ」
その後狩りは僕のMPが切れるまで、つまり深夜まで続いた。
狭間圏
【聖職者:Lv46(↑+26)】
HP:247/247(↑+1)
MP:0/524【聖職者:+112】
SP:7/102(↑+3)
力:21
耐久:59(↑+1)
俊敏:37【聖職者:0】
器用:14
魔力:40(↑+3)【聖職者:+50】
神聖:79(↑+6)【聖職者:+100】
【回復魔法:Lv46(↑+2) ヒール:Lv★(↑+1) オートヒール:Lv14】
【補助魔法:Lv35(↑+2) プロテクト:Lv59(↑+1) バイタルエイド:Lv59(↑+1)】
【マルチタスク:Lv38(↑+1)】
【炎耐性:Lv10(↑+1)】
【ストレージ:Lv19(↑+2)】
【フレアバースト:Lv1(↑+1)】
【etc.(30)】




