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80日目(異世界)前編


朝早めの朝食を食べ、イヴォンさんと街のポータルへ来た。

「これから領都へ向かいます。

そちらで狭間さんがパーティを組んでいただく人を紹介しますね」

「はい、お願いします!」


僕は朝からやる気まんまんだ。


領都はこれで3回目だ。

けれど、きちんと見回ったことは一度もない。

そのうち観光をしたい気持ちもあるが、それよりもステータスを強化したかったりする。


イヴォンさんと一緒に領都のギルドへやってきた。

アインバウムのギルドよりも大きい。

ただし、大きいだけで基本的な作りは一緒だ。

カウンターと掲示板、それから治療所がある。


ぉ?

あれは……


「よぉ、イヴォンさんが言ってたのはお前だったのか」

「ショーン、久しぶりだね!」

緑髪がツンツンしたイケメンのショーンだ。

ダブルヘッド狩りのときに大活躍をした槍使いである。


「おや、お二人は既に知り合いだったようですね」

「はい、イヴォンさんも?」


「えぇ、彼の父親とは友人であり、仲間です。

カルディともパーティを組んでいました。

それからこっちは私の息子です」

「私はクラール、はじめまして」


ショーンの横にいるのは超絶イケメンだ。

クラールさんと言うらしい。


背中には大きな弓がある。

弓がメインの後衛職だろう。


イヴォンさんの息子なのか?

目元が若干似ていないではない。


金髪が肩くらいまであり、やや無造作にはねている。

ショーンのキリッとしたイケメンとは違い、中性的なイケメンだ。

絵に書いたような王子様。

女性だと紹介されたら、そう思ってしまうだろう。


「狭間です。

クラールさん、よろしくお願いします」

「狭間くんか?

下の名前を教えてくれないかな」


「あぁ、(けん)です」

「よろしく、ケン。

それから僕はクラールで構わないよ」


「よろしく、クラール」


クラールがニコリと微笑む。


おぉ、なんだ今のは?

イケメンすぎて彼の周りが光ったように見える。


「では、ポータルへ行きましょう」

自己紹介もそこそこに、イヴォンさんがポータルへ促す。


僕たちは、領都のポータルから第三戦線というところへ移動する。









暑い……


なんだここは……



「さぁ、到着しましたね。

ここが第三戦線です。

あなたたちには今日からここで狩りをしてもらいます」


あたりはゴツゴツした岩山が多い。

やたらと暑くて、湿気がなく埃っぽい。


それからポータルの周りはちょっとした広場になっており、道が延びている。

道の先には、キャンプ地のようになっており、テントが多く張ってある。

ここで狩りをしている人たちのものだろうか。


さらにその先には木造の建物がいくつもあった。

建物もあるのか。

あんまり生活に適した場所では無さそうだけれど……


「とりあえず、ここのギルドへ行けばいいのか?」

「いえいえ、今はギルドへ行く必要はありません。

1日の狩りの終わりに、素材を買い取って貰えばいいでしょう」


ショーンがイヴォンさんに確認をしている。


「ん?

それじゃ他のメンバーはどこに?」

「他にメンバーはいません。

あなた方だけで狩りをしていただきます」


「なっ!」

ショーンとクラールは驚いた表情をしている。


「おいおい、マジかよ!

三人だけで狩りをしろってか?」

「えぇ、もちろんですよ」


イヴォンさんはニコリと微笑む。


「それから、クラール」

「はい……」


「あなたにはこちらを使ってもらいます。

弓の使用は禁止です」

イヴォンさんはレイピアというのだろうか、細身の剣をクラールさんに渡す。


「なっ!

父上、細剣などここ数年使っておりません。

これで私に戦えと?」

「おいおい、正気かよ……」


「えぇ、もちろん正気です。

弓も細剣も威力は器用のステータスに依存します。

問題は耐久面だけでしょう。

ただし、気を抜くと死にますよ?」


イヴォンさんはニコニコしながらえらいことを言い出す。

これから行く第三戦線とはそんなに危険なところなんだろうか。


ショーンは肩をすくめ、クラールは渋々弓を渡している。

僕は何もわからずに見ているだけだ。


「父上、急にどうされたのですか?」

「ははは、昨日久しぶりにダーハルトと飲んだのですよ」

「親父と?」


ダーハルトというのはショーンの父親だろう。


「お互い、息子がかわいすぎて、少々過保護になっていたというお話です。

今思えば私達が若い頃は、何度も死にかけました。

そして、その度に強くなっていったのです。

クラール、ショーンあなた方は狩りで死を意識したことはありますか?」


「いえ……」

「ハッ!

俺がただの狩りで死にかけるかよ!」


クラールもショーンも死にかけたことは無いようだ。


「だから弱いんです」

「なっ!」


ぇ?

弱い?

クラールさんは知らないけれど、ショーンはめちゃくちゃ強いだろう。

マジかよ。


「ショーン、あなたの身近には強者がいるでしょう?

あなたの兄シャールは15歳のときにはここでソロ狩りをしていましたよ?」

「……」


ショーンは眉間にシワを寄せて黙ってしまった。

なんか話の流れ的にショーンには兄がいて、さらに強いらしい……

ちょっと話の展開についていけないんだが。


「それから狭間さん、あなたは死にかけましたね?」

「はい、何故それを?」


「ほほほ、勘ですよ勘。

おそらく修羅場を乗り切ったのでしょう。

何故かはわかりませんが、あなたにはそういうものを感じます」


イヴォンさん、恐るべし……


「……ったく、わかったよ、わかった!

三人で、しかもクラールは細剣で狩りすりゃいいんだろ?

やってやるよ!」

「その意気ですよ。

若さで乗り切ってください。

では、私の方から課題を出します。

まずは3日間、狭間さんのMPが0になるまで第三戦線を戦いきってください」


「それだけ……ですか?」

クラールさんはホッとした表情をする。


「えぇ、それだけですよ?

ただし狭間さんは、攻撃魔法を使ってはいけません。

補助と回復だけにしてください。

いいですね?」

「はい!

わかりました!」


攻撃魔法も若干鍛えたいが、教会としては聖職者の能力がほしいのだろう。


「では私は教会に戻ります。

3日後改めてこちらに来ます」


そういうと、イヴォンさんはポータルから帰ってしまった。


「おいクラール、こいつのMP侮るなよ。

めんどくせぇことになるぞ……」

「ははは……」

僕は苦笑いする。

MPが多い分戦ってもらうことになるからだ。


「とりあえず、ギルドへ行こう。

父上は、最初にギルドへ行く必要は無いと言っていましたが、ここの魔物の特徴を調べてから行くべきだ」

「おぅ、いいぜ」

「うん!」


僕たちはクラールさんの意見で第三戦線のギルドへ行くことにする。

ギルドへ向かうと、途中に宿屋や武器屋、それからアインバウムと一緒でギルドの周りには飲食店が多くある。

住宅こそ無いが、普通に街になっているようだ。


ギルドの掲示板には、第三戦線で出現する魔物の特徴が一覧で書かれている。

これらの特徴を踏まえて戦うということだろう。


それから僕の使える魔法についてクラールさんに説明しておく。

「なるほど、父上の指示通り攻撃魔法を使わないとしても、補助と回復ができるね。

狩場についたら【プロテクト】と【バイタルエイド】を僕とショーンに頼むよ。

それからそっちに攻撃はいかないようにするつもりだけど、一応自分にも補助をかけておいて」

「わかった」


「それからケンのジョブについても教えてほしい」

僕は今習得しているジョブについてクラールさんに説明する。


「うーん……

【聖職者】か【見習い魔法士】がいいだろうなぁ」

「?

なんで【見習い魔法士】もいいの?」

ステータス補正としては現状【聖職者】のほうが圧倒的に高い。


「【見習い魔法士】のジョブを上げておくと、他のジョブが出てくる可能性もあるんだ。

回復系のジョブと、攻撃魔法系のジョブを同時に上げておくことでさらに上位のジョブが出てくることもある」

「なるほど」


「現状は【聖職者】のほうが補正ステータスが高いようだから、狩りに慣れるまでは【聖職者】にしてもらおう」

「わかった」


「それからショーン、僕は細剣しか使えないから、しばらく足手まといになるかもしれない。

今のジョブは【フェンサー】だ。

とりあえず【フェンサー】を最大レベルにして、上位のジョブを出せるように頑張る。

それまで頼むよ」

「任せとけ」


一通り打ち合わせが終わり、狩場へ向かうことにする。

大体の流れはクラールさんが仕切ってくれたが、妙な安心感があった。

イケメン効果だろうか。

何らかのイケメンスキルが発動しているかもしれない。


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[気になる点] トリプルヘッドが出たときショーンはどこにいたんでしょうか
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