表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/52

ラオ

 新幹線の中。彼女は外を見る。景色は早く流れすぎていたし、それをゆっくり眺めるほど体力的に余裕はなかった。もちろん目を凝らせば見えるのだろうが、あえてそんな疲れることはしない。

 

 彼女、ラオはもうすでに自分の体力が何かしらの娯楽に使えるほど残っていないのはちゃんとわかっている。現状をキチンと把握すること、それも自分の仕事の一つなのだ。海外派遣組よりは楽ではあるが、一ヶ月の長期任務は流石に疲労困憊だった。時折仄かな揺れが彼女を眠気に誘っていた。

 

 ふと目を開けるとそこは東都駅だった。新幹線を下車し、キャリーケースを引きながら南下り口を降りると、夜の帳が降りたターミナルへ出た。タクシーを拾って彼女は組織(システム)へのルートを運転手に指定した。

 

 ラオはまたもやタクシーから見える景色を眺めた。さっきよりもゆっくり流れる景色は、今度は繊細に景色を映し出す。多くの企業の看板が残像を引きながら後方へ流れていく。ラオの瞼はゆっくりと重たげに下がり、そして彼女はいつしか眠りに入った。


 夢を見ている。ラオは、そう思った。

 ラオの産まれは誰も知らない。ラオ本人にも。いつ産まれたかもはっきりしないが、両親の顔と生業だけは知っていた。

 東南アジア、インドネシアでシャーマンをしていた両親とともに多くの村々を周り、そして彼女もその後を継ぐつもりでいた。しかし二年前の仕事であたった悪霊が悪かった。母は死に、父は重症を負い今でも病院で意識を失ったままだ。命からがら逃げ出した彼女はたった一人で山の中を彷徨い、約二日後に救出され、完治する前に病院から逃げ出した。

 意識のない父と死んだ母に、かつての悪霊への復讐を誓い鍛錬をしているときに組織(システム)にスカウトされた。

 そんな彼女の背景のためか、他のメンバーとの交流は少ない。覚悟が違うのだ、といつも彼女は自分自身に言い聞かせながら、身体に鞭を打って過酷な任務に勤しんできたのだ。

 

 そうして夢から覚めるとちょうどそこは組織(システム)の入るビルだった。ラオはクレジットカードで運賃を払い、タクシーのトランクから出したキャリーケースを引き、そして建物へと消えていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ