初出走
秘書は、執事お薦めの渋いおっさんにした。
名前は皐月菊人。42歳なんだってさ。
小学生の息子がいるらしくて、休みの日にはキャッチボールとかしてるらしい。
良いパパって感じで、とても素晴らしい。
やっぱり自分が子供な分、仕事が出来る人が良いよね。
後は馬主のお仕事の事務処理的な事は全部秘書にお任せで、私は小学生的なお勉強に集中できる。
……とはいえ、小学生レベルなら何とか……まぁ、大丈夫。
中学生になった時に困らない様に、歴史とか地理は勉強しておこう。
前世ではほぼ10点台だった記憶がある科目だし。
今から頑張れば大丈夫だよね?
きっと。
幸いな事に、この体に付属している脳みそは割と優秀だったらしくて、ぬるぬると知識が吸収されて行ってくれる。ありがたやー!
そうこうしている内に、3歳馬の初出走の日がやってきた。
初出走の日取りは秘書の皐月さんと調教師さんの間で勝手に決まってたので、私は当日馬主席と言う特等席で結果を楽しみに眺めるだけと言う、楽なお仕事です。
「皐月さん皐月さん。」
「どうなさいましたか? 忍お嬢さん。」
「ウチの子の単勝、マックスBETお願い。」
「未成年者は馬券の購入は……。」
「代理購入で!!!!!」
散々ダメだと言われた物の、必死に拝み倒した結果、なんとか買って貰えた。
よしよーし!
後はウチの子が勝ってくれれば、濡れ手に粟じゃ♪
そして、私の思惑通りにウチの子はしっかり勝って、私に初勝利をプレゼントしてくれる。
脚質は私好みの差しっぽい。
割と後ろの方から、グイグイ伸びて来て最後にはゴールを掻っ攫ってくれた。
席から飛び上がって、思わず歓声を上げたよ。
ゲーム内で見るのとはまた違うね!
リアルで見るとやっぱり、うひょーってなっちゃう!
「こう、一足飛びに重賞に挑戦とかって出来ないのかな?」
表彰台で記念撮影した後、皐月さんにそう聞いて見た物の答えは『否』。
むぅ。
馬主としての経験値が貯まらないとダメって事か。
そんなところもゲーム的とか。
いや、意外とリアルなのかもしれんけど。
次の出走は、約1カ月後の条件戦に決まった。
取り敢えず、今日は馬券で200万増えたので地味に馬券で稼いで行こうと思う。
早く、出走できる馬を増やしたいなぁ……。
道はちょっと遠そうだけど。