Disc-03:オープニング
OPENING PHASE
◆Opening 01◆無垢なる者イノセント
どこまでも広がる草原と青空。
服装などは登録した状態のままだが、ヒカルの周りに一緒にログインした仲間たちは誰もいなかった。
そうこうしていると、複数の足音が聞こえてくる。
そちらを見れば6歳ぐらいの子供を、フードを目深にかぶった黒ローブの一団が捕まえようとしている。
これがゲーム世界のイベントとかクエストとか言うものなのだろうか。
GM:それじゃヒカルから始めようか。草原にポツンと1人っきりだね。
ヒカル:ここがゲームの世界か……――あ、GM、このゲームってウィンドウが開いたりするの?
GM:開かないね。ただ、本当はステータス画面とかのウィンドウは開く仕様だよ。
ヒカル:だけと俺達は開かない……ってことね。じゃあアイテムを取り出したりとかは?
GM:腰に下げてるポーチとか、ポケットから取り出せるみたいだね。
ヒカル:普通に現実世界と変わらないって事か。うーん、良くできてるなぁ。周囲を見渡しつつ。
GM:一面の草原だね、空は青く澄み渡っている……そういえばイージーエフェクト取ったんだっけ?
ヒカル:《ウサギの耳》を取った!
GM:では<知覚>で判定して下さい。
ヒカル:ん? やけに耳が良くなったような……シーフだからかな? 達成値は9!
GM:なら子供が走っている足音を聞きとります。さらにその子供を追っている大人の足音が複数あることもわかる。
ヒカル:こんな草原で? そっちに向かおう。走るぜ!
GM:すると見えてくるね、真っ白い一枚布の服を着た6歳ぐらいの子供を、黒ローブの大人達が追いかけている。
今にも捕まりそうだね。
ヒカル:こんにちは!――ゲームだしまずは挨拶だよな(笑)
GM:するとキミに気が付いた子供が、方向転換してキミに向かって来て、キミの後ろに隠れる。
ヒカル:ん? なんだ? お前は誰だ?
GM:「イノセント、助けて、追われてる」
流子:片言キャラかぁ。
建:子供で白くて片言か……嫌な予感しかしないけど、キーキャラっぽさも全開だ(笑)
ヒカル:追われてるのか? そうか! そういうイベントか!(笑)
GM:ザザッと黒ローブ達がヒカルを取り囲もうとする。手には剣や杖、ダガーなどそれぞれ武器を持っているよ?
ヒカル:しっかり捕まってろ?――と子供を抱えて、黒ローブの隙を見てダッシュ! 囲いを抜ける!
GM:まぁオープニングなのでOK。
ヒカル:俺の移動力に付いてこれるか?
GM:それは……シュタタタタとアサシン走りで追うのだけど、どんどん差を開けられて途中で黒ローブは立ち止まる。
重雄:ヒカルは行動値高いもんなー(笑)
GM:黒ローブ達はお互いに頷き合うと、そのまま無言で消えます。ログアウトだね。
ヒカル:追ってこないのを確認して子供を降ろそう。
GM:子供はキョトンとした顔で見てます。
ヒカル:大丈夫か?
GM:子供は真っ白な肌、真っ白な服、真っ白な髪の毛をしているけど、無表情なまま
――「イノセントは、感謝した、助けてくれたあなたに」
ヒカル:この子、プレイヤーがいるキャラクターって感じはしないよね?
GM:そうだねぇ。
ヒカル:「お前、イノセントって名前なのか?」
ヒカルが子供の頭を撫でながら聞く。
しかし、子供は小首を傾げて聞き返すのだった――
「イノセントはイノセント、名前って……何?」
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◆Opening 02◆さすらいの商人ネコ
どこまでも続く草原に2人、気がつけば流子は南雲美空と2人きりだった。
遠くを見渡せば、食事の支度か煙のたつ小さな村がある。
まずはあそこを目指すべきだろうか……。
GM:次は流子ね。美空と2人きりで草原に出現しました。他の人はいません。
流子:美空! 見て見て! 空がすっごい綺麗! 空気もおいしい気がするし! 良い場所だよ!
GM:「そうだね、ここがゲームの世界だなんて信じられ――
流子:そうだ! ここに家を建てようよ! それでそこに住むの! ここで良いよ! 永住しようよ! 美空、結婚して!
GM:「ちょっとは私の話を――ってか、なんで結婚するのよ!(笑)」
流子:美空はイケズだなぁ。
GM:「そんな事より、他のみんなはどうしたのかな? 私達しかいないみたいだけど……」
流子:え、放っておけば良いんじゃない? 大丈夫大丈夫!
GM:「いや、中には1年のヒカルもいるし、探した方が良いんじゃない?」
流子:うーん、それは部長の重ちゃんとかに任せてさぁ~――と、ここで村を見つけよう
――美空! あれって村じゃない? 行ってみよう!
GM:「ちょっと、先行かないでよ!」――と美空も追おう。
流子と美空が辿りついた村は、アーサー村というのどかな村だった。
流子の「こういう時は宿屋って決まってるの!」という意見により、2人は宿屋へと入り。
その入り口で宿屋の女将に捕まっていた。
GM:「だから、あんたら初心者だろう? なら始まりの町へは行ったのかい?」
流子:うん、行ったよー♪
GM:「それじゃあ旅団には入ったかい?」
流子:うん、入ったー♪
GM:「どうやら旅団には入って無いみたいだね、あんたら初心者だろう? なら始まりの町へは行ったのかい?」
――とループします。美空が「さっきからループしてるけど?」と。
流子:面白いね美空! 本当にゲームのキャラって同じ事言うんだ(笑)
GM:試してたんだ(笑)
流子:じゃあ、もう一度街には行ったって言おうかな!
GM:「あんたら、初心者かいな?」――宿屋の奥の方から若い女性に声を掛けられますよ?
流子:誰? 誰? どんな子?
GM:大きいリュックを背負った、17歳ぐらいのネコ耳の女の子です。
流子:ネコ耳だ! さっそく触ろう!
GM:じゃあポロっと耳が取れます。
流子:ああ!?(笑)
GM:「なにすんねん! 人のアイディンティティを! けっこうレアアイテムなんやで!?」
――とネコ耳を奪って再び装着します――「ったく、これだから初心者は……」
流子:えっと、あなたはプレイヤー?
GM:「せや、ウチはネコ! ワークスは見ての通りマーチャントや!」
流子:やっぱり中身入ってるプレイヤーだ! ね、美空、当たったでしょ?
GM:それにはネコが不思議そうな顔で――「そんなん、カーソル合わせてステシ確認すれば、誰だって解るやろ?」
流子:カーソルカーソル……ってネコの頭をポンポンと。
GM:「そうそう、そうやって手を当てて相手の所でダブルクリックを……って、なんでやねんっ!」(笑)
流子:この子ノリが良い(笑)
GM:「ま、まぁええ、うちは商売しながら冒険してるんやけど……あんたら、何が目的でこのゲームに?
やっぱクリアして何でも望みをかなえられるっちゅー噂を信じて?」
流子:うん、建はそんな感じだったよ? あ、建は一緒にログインした仲間ね? やっぱその噂本当なんだ!
GM:「あはは、そんな眉唾……ってゲーム開始時には言ってたんやけど。その噂が立ってから少しすると、
何人もの大金持ちが金にあかしてα版を集めてクリアを狙いだしたっちゅー事実があってなぁ……
もしかしたらって言われとる」
流子:そうなんだ! でもネコは凄いね、良く私の家がお医者さんで大金持ちって解ったの?
GM:「へっ? あんたんち金持ちなん?
まぁ、この時期にこれ見つけてくるっちゅー時点で、それなりの小金持っとらんと駄目だろうけど」
流子:まぁね! ネコはいつから?
GM:「ウチは最初に配布された時からのベテランや! 何でも知らない事があれば聞いてくれてかまへんで?」
流子:じゃあ始まりの町ってどこにあるの?
GM:「ああ、そこならウチも一緒に行ったる。もともとあの町へ向う予定だったし。
ワンダリングの相手も2人よか3人の方が心強いやろ?」
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◆Opening 03◆氷の大剣スノウ
長い草をかき分けて飛鳥は進む。
ログインして気がつけば、周囲に仲間の姿はなく1人ぼっちだった。
やがて聞こえてくるのは……低い動物のうなり声、現れたのは――
GM:頭の上まであるような長い草が生える草原です。気が付けばキミは1人だ。
鳳飛鳥:他のみんなはどこ行ったんだろうね。
GM:すると複数の気配がキミを取り囲むように近づいてくるのに気が付く。草むらを分けて現れるのは複数のウルフだ。
鳳飛鳥:狼か……やろうって言うなら、遠慮はしないよ。
GM:ウルフの数は20匹、さすがの飛鳥もピンチになります。
鳳飛鳥:20匹って! それはさすがのあたいも1人じゃ無理(笑)
GM:その時、声が――「伏せろ!」と。
鳳飛鳥:素直に伏せる、すると頭の上を氷の大剣が薙いでいくって感じかい?
GM:その通り(笑) 長い草が一気に半分になり、集まっていたウルフ達も全て一刀両断されます。
ウルフ達は全て倒され消滅するね。
鳳飛鳥:誰だか解らないけど助かったよ。
GM:「大丈夫だったかい? もしかして登録したてかな?」
――飛鳥の手を取って助け起こしてくれるのは、空色の髪をした二十歳ぐらいの美女だね。
鳳飛鳥:一緒に始めたのも何人かいたんだけど、いつの間にか1人になっちまっててね。
GM:「それは運が悪かったね。スタートで飛ばされる3つの場所の中で、ここだけホットスタート
――戦闘が発生する――場所だからね」
鳳飛鳥:こう言ったゲームをやるのも初めてで……あんたは何者だい?
GM:「私はスノウだ。氷の大剣スノウ・アルピニス」
鳳飛鳥:あたいは飛鳥だ、宜しく。
GM:「ああ、こちらこそ……うーん、私は今から旅団メンバーと落ち合う予定だったんだが……
キミがよければ、始まりの町へ寄り道していこう」
鳳飛鳥:始まりの町?
GM:「ああ、一緒にログインした仲間がいたのだろう、なら彼らも始まりの町を目指すはずさ」
鳳飛鳥:でも、あんたは用事があるのだろう、その町の場所だけ教えてくれれば勝手に行くさ。迷惑はかけられないしね。
GM:「迷惑だなんて気にしないでくれ、MMOゲームではベテランが初心者をサポートするのはマナーみたいなものだしね」
鳳飛鳥:そういうものなのかい? なら……お願いしようかね。
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◆Opening 04◆オフィーリアの導き
気がついた時にはすでに3人しかいなかった。
建と重雄と、そして尾道満の3人だ。
ここは山道の途中らしく、山を下って少し行ったところに町も見える。
まずはあそこを目指すべきだろうか?
GM:最後は建と重ちゃん、同時に登場して下さい。尾道もいます。場所は山道の途中のようです。
麓が見えるんだけどそこに町が見えるね。そこが目指す場所なのかな?
建:これが俺達のスタートか。
重雄:男だけ3人でスタートかぁ。
建:ふっ、こういうゲームでは女キャラはたいがい男だ! 覚えておけ!
重雄:ああ~。
GM:「キモイですね」――と尾道も。
建:装備品やアイテムはどうなってる? 服装は登録したアバターのものだとして。
GM:うん、常備化ポイントで得ているアイテムは持ってるけど、それ以外は無いね。
ただ『太古の竜を滅ぼし者』と書かれたプレートが荷物に入っている。
建:これは……と取り出そう。
重雄:部室?で戦ったドラゴンを倒した証みたいなものですかね。
GM:ちなみに重雄の荷物にも入ってるし、ヒカルや流子の荷物にも入っているってことで。
流子:はーい。
建:とりあえず、これはしまっておくか。使えそうなものでもないしな。
重雄:あ、そう言えば麓に町が見えましたから、そこを目指せば良いんじゃないですかね?
建:町か……そうだな、そこに向かおう。
GM:と、そこで目の前に光の粒子が集まって来たと思うと、光の扉が現れます。そしてゆっくりとその扉が開き――
扉から現れたのは、ピンクの長いふわっとした髪の毛、西洋風に改造された巫女服を着た少女だった。
建:導きの巫女……オフィーリア。
重雄:夢に出て来た人……。
GM:その通り、オフィーリアは祈るポーズのまま
――「皆さん本当に、この世界へ来てくださったのですね……ありがとうございます」
建:オープニングイベントというやつだな。
GM:「助けて下さい。このままではこの世界は終わってしまう……
この世界の命の泉が、魔神達によって支配されてしまったのです……」
重雄:命の泉?
GM:「この世界の大いなる神、デウス=エクス=マキナも、魔神達によって封印され、
その力を振るうことができなくなっています……。
この世界を救えるのは、魔神の力を持ちつつ、意志の力で正気を保っていられる皆さん、
オーキィの皆さんしかいないのです」
建:デウス=エクス=マキナ……それがこの世界の神の名、か。
GM:「どうか命の泉を、デウス=エクス=マキナを、助けて下さい! まずは……始まりの町へ向かって下さい。
冒険を始まる上で、いろいろと役に立つ情報もあるでしょう。きっとあなた達と旅団を組む仲間もいるはずです。
みなさん、どうかよろしくお願いします」
重雄:なんか最後はテンプレ台詞になった気が(笑)
GM:そこまで言ったところで、オフィーリアの後ろに光の扉が出現、再び扉の向こうへと彼女は消えて行くよ。
重雄:消えちゃいましたね。
建:イベントだからな、強制的に説明して一方的に終わる、そんなものだ。
重雄:先輩、僕は妹を……伊緒を探したいです。
建:それなら情報収集だな、他のプレイヤーが集まっている町で聞き込みした方が早いだろう。
それに流子達とも合流したいしな。
GM:「なら、始まりの町って所に行ってみますか?」
建:ああ、そうしよう。
重雄:飛鳥達、大丈夫かなぁ。