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03-02:狩り、食、疑い

働く少女。冒険者を助けて信頼を得ます。

働く少女。雇用主を助けて信用を得ます。





「私ね。召喚術師なの!」


ドヤァと聞こえてきそうな顔に悪いですが、俺さっきまで召喚術師の馬車に乗ってました。あとゲームの時はこっちほどレアな職業じゃなかったです。

まあ他の人が感心しているようなので俺はリアクション薄くてもいいだろう。

そういや召喚術師ってことはやっぱりその巨大犬はモンスターなのか。


「そうなの。それもただのモンスターじゃないのよ! バリーは私たちに力を貸してくれてるの!」


いや使役してるモンスターってそういうもんじゃねえの?


「違うのよっ。バリーは自分の意思で契約してくれてるんだから!」


なるほど、心優しいモンスターさんか。いまいち要領を得ないが。

デカくて優しい犬&牧歌的な少女の組み合わせって昔やったゲーム思い出すなあ。


山岳救助犬アルペンドッグだな。山脈ダンジョンの救助作業を手伝っているのだろう」

「あー、そういうことか」


首に小さい酒樽付けた犬の写真なら見たことある。

フェイも通過しただけでここには立ち寄らなかったらしく、興味深げに見ている。

横からごめんなさいおかあさーんという声が聞こえたので視線を戻すと少女が女将さんに耳を引っ張られていた。


「彼は使役や誓約の術式なしで私たち一族と契約してくれてるんだよ。ご先祖さんが上のダンジョンで死にそうになった時、咄嗟に呼び出して助けて貰って以来ずっとなんだ」


救助作業も魔力供給だけして後は全部お任せ状態だね、と肩を竦める女将さん。

解説ありがとうございます。折檻はそれくらいにしてあげてください。

客相手にドヤってたせいで怒られた少女が涙目で補足してくる。


「教会ができる前からご先祖様はここにバリーと一緒に住んでたらしいの。それを知った教会が援助を申し入れてくれたから、私たちは宿の営業ができてるのよ」


必要な施設だからあまり収益が見込めなくても支えてもらえると。

やっぱり慈善活動というより公共事業だな、この世界の教会の活動って。


にしてもこのデカい犬が救助活動か。敵のモンスターに間違えられたりしないのかな。


「登る人は大抵知ってるし、召喚術師のコードを使えばバリーの隣に私の姿を映すこともできちゃうんだから大丈夫!」


あー、召喚術系統の幻術ね。

幻術には最近嫌な思いしたので話膨らませないでくれ。


「それに登る人ってみんなバリーより弱いのよね」


そういうことは言ってやんな。


この山脈ダンジョンはLv50推奨程度だから人気が集まる上に、それぞれの峰の頂上にいる中ボスを全て倒したらLv90推奨クラスのダンジョンボスが現れるとのこと。手軽さとやり応えを両立した良いダンジョンだな。

しかも山や森のダンジョンは自然の恵みが豊富なので獲得できる素材が豊富。

このような要素で多くの冒険者に愛されるタイプのダンジョンになったのだ。


そして巨大犬のレベルは100らしい。ダンジョンボスにすら勝ってんじゃねえか。

見かけによらねーなー、とあくびする犬を見ながら忘れていた追加注文をした。




「ありがとうございましたっ。お気をつけてー!」


翌朝、元気な娘さんに見送られて出発した。

ここにはいつかまた来たい。そして今度は勇気を出してあの犬をモフる。


昼前に着いた『トラミーナー』という国境の町をさくっと通過して帝王国入り。

町の構造は昨日までいた国境の町とほぼ同様だった。

あの女の指名手配書とじっくり顔を見比べられたの以外は特に何事もなし。


今度こそ次の目的地までフィールドを歩いて進むことになった。

やっぱフィールドモンスターは弱いなーと思いながらコードの調子を確かめる。

歩行時に限り高確率で奇襲を回避できる【歩哨】。

どのような攻撃の気配も察知できる【警戒態勢】。

便利な2種のパッシブコードだが多少の欠点はやはり存在する。前者の【歩哨】は焦ったりして小走りになると効果が得られず、後者の【警戒態勢】は察知できるだけで回避行動へのボーナスは全く無いから自力で避けなければならない。


わざと下草の多いところを進んで急に出てくるモンスターに慣れる訓練だ。

そして単なる経験でそれなりに察知している横のイケメンがウザい。


「このモンスターは追い払わずに倒しておこうか。骨が傷薬の材料になるから重宝されるだろうしね」

「ぅあ、む……ぬぅ」


剥ぎ取りの時間がやって来ました。

元から苦手だった上にあの犬みたいなの見た後だとさらにやり難く感じてしまう。

仲良くできるかもしれないなら倒さないようにしたいとか、この世界の人は考えたりしないのだろうか?


「一時期そういう風潮になったことがある。あまり狩らずにいたせいで増え過ぎたモンスターに小さな都市国家が壊滅させられるまでは、ね」


……ままならんなあ。

どうやらこちらの世界でのモンスターのリポップは一定数を保つのではなく無限に増殖させてしまうらしい。倒さない訳にはいかないのだ。

ま、そういうことなら糧に感謝してしっかり剥ぎ取らせていただきますか。


「――良かったよ。あまり深く悩まれなくて」

「考えないことは得意なんでね」

「ふ……なんというか、君らしいな。心配は不要だったようだ」


そーいう感じに納得されるのもヤだなー。

生暖かい視線のウザイケメンを無視してぐりぐりえぐり。ちょいグロい。

早く慣れたいもんだね。



剥ぎ取ったモンスターの肉で昼食を済ませて出発。

野性味溢れる調理法も美味しゅうございました。食欲に直結すれば案外すぐ慣れるかもな。

さーて、まだ全然進んでないしこの調子で色々試しながら行くかー……ん?


なんだかとても鼻息荒い女性が向こうからいらっしゃる。

軽装で弓を背負った、まだ少女と言っても差し支えないくらいの若い子だ。

道から結構逸れた場所なんだが何の用かな。


すぐ近くまで来たその人はこちらを指差して声を上げた。


「見つけたぞ犯罪者め!!」


………………………………ぱーどぅん?


なんか言語野がおかしくなってた。

して、今なんと?


「とぼけるな! 昨晩商隊キャンプを襲ったのはお前だろう!」


わーお、なんか凄い容疑が掛かってるぞフェイさん。


「疑われているのは君だろう。現実から目を逸らさず直視しなさい」

「つってもさー」


昨日の晩は宿で酒飲んで寝てたっつーの。

ああそうそう、教会の宿で普通に酒あってちょっとびっくりだったんだ。


適当に説得しようとしたが途中で遮られる。この子話聞かないタイプか。


「酒! そうだ酒だ!!」

「……酒がどうかしたのか?」

「お前は昨晩ずっと酒を飲み続けていた! そして皆に酌をしまくって酔い潰させ、今朝起きた頃には高価な商品を根こそぎ持って行っただろう!!」


知らん知らん。つーかどんな商品が高価かも知らん。

国境とかあの教会とかに確認取って貰えば人違いってわかるからさー。


「しかも幻術を使って私の姿になり倉庫番を欺いただろう!」

「は? いやオレ幻術なんか使えんし」

「それに『手配書のお返しってことで今回だけ許してね』などという謎の書き置きで我々を愚弄して!!」

「だから知ら………………………………あぁ?」


酒。

幻術。

手配書。


あの女かあああああああああああああああああぁぁぁ!!!??

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