蒼い薔薇
男は言う。
「お嬢さん、あなたに蒼い薔薇をあげよう」
女は笑う。
「蒼い薔薇なんて、この世界にないですよね?私、知ってますよ?」
男は言う。
「いえいえ、私は蒼い薔薇を作れるんです」
女は笑う。
「では、一本ください」
男は言う。
「かしこまりました」
男の手から「紅い」薔薇が魔法のように飛び出す。
男はそれを女に渡した。
「はい、どうぞ。蒼い薔薇です」
女は「紅い」薔薇を手にして笑う。
「まあ、素敵。ありがとうございます。とても嬉しいです」
「喜んでもらえて幸いです。また欲しくなったらいつでも」
「また来てくれるんですか?」
「もちろんです」
それから毎日、男は「紅い」薔薇を女にプレゼントした。
その薔薇が百本になった頃
いつものように現れた男を待っていたのは
誰も居ない白いベッド。
看護婦が言う。
「ああ、あなたね。あの盲目の女性なら先日、亡くなられましたよ」
男はそっと部屋を後にする。
病院前の公園に現れた男に群がる子供達。
「あれ?ピエロさん泣いてるの?」
男は笑い、「紅い」薔薇を取り出した。
「いえいえ、泣いていませんよ」
男の陽気な踊りが始まる。