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今日の料理 海鮮こんがり唐揚げ

【蒼牙ワニ】


 風香十七群島の海辺に住む獰猛な蒼牙ワニ。

 雑食性で、体の大きさは2〜3M。ボスワニを中心に五十匹ほどのコロニーを作る。

 その鱗と皮は非常に硬く、高級防具の材料として重宝される。またワニの牙は蒼珠と呼ばれる魔力マナの結晶で、魔法弓のやじりに使用される。

 蒼牙ワニは解体作業に時間がかかり、身部分は傷みが早くこれまでは廃棄処分されていた。

 しかし特殊な包丁で素早い解体が可能になり、新鮮なワニ肉が手に入るようになった。



 ***



 風香十七群島の猫人族を巻き込んだ戦いは、ハーフ巨人の竜胆と神科学種そしてミゾノゾミ女神の力で、異世界の魔獣を倒し奴隷海賊廃王子を打ち負かした。


 コクウ警備艇の甲板では、倒した魔獣カタストロフドラゴンの肉でバーベキューが始まり、島の地酒も振舞われ勝利の宴が始まる。

 質素なシャツにエプロン姿の少年は次々と肉を焼き配膳して、酒のつまみを運んできた。

 椰子の葉を編んだ皿には、車エビによく似た揚げモノが盛られている。

 からりと揚がった色鮮やかな薔薇色の衣に、中はふっくらした柔らかい白身の唐揚げだ。

 ホロ酔い加減のSENは、その唐揚げに手を伸ばし口に運ぶ。

 ふと料理を運んできたハルを見ると、好奇心満面に自分が食べている様子を観察している。

 SENは嫌な予感に襲われた。


「ハル、この唐揚げは衣が煎餅のようにパリパリして、磯のかおりが香ばしい。

 身はすごくジューシーで柔らかすぎるぐらいの食感だ。エビというより白身魚のカンパチに似ているな。

 ところでこの旨い唐揚げは、なんの唐揚げだ?」

「青海苔を衣にまぶして、ウロコと皮も食べられるようにしっかりと揚げたんですよ。

 味付けの塩は、蒼牙ワニを解体する時に出てきた胆石が岩塩状態で、普通の塩より風味がいいでしょう」


 嬉しそうにハルは答えるが、肝心の唐揚げ具材がなんなのか言わない。

 SENは細長いステック状の唐揚げをマジマジと見つめる。

 おろし金のようなデコボコとした皮、どうも魚ではないようだ。カニにしては細長すぎるし、こんな殻のエビはいたか?

 二人が話していると、そこへ天女のような姿をしたエルフのティダがやってきたが、SENの食べている唐揚げを見ると、うわっ!!と小さな驚きの声を上げる。

 

「もしかして……ハルちゃん、このエビに似た素揚げ、ワニのしっぽ部分じゃない?」


 ティダの言葉にSENの手がとまる。

 ハルはイタズラがバレた子供のような顔で舌をペロリと出した。


==================


今日の料理 海鮮(生まれたて蒼牙ワニ)こんがり揚げ


【材料】

孵化半日の蒼牙ワニの子供

★蒼牙塩&砂漠胡椒

★青紫島海苔

★おにぎりの粉

★オリーブ油(揚げ油)


【1】解体した蒼牙ワニの尻尾に、海苔で風味をつけた粉を薄くまぶす。

【2】高温(180度)の油にワニの尻尾を投入。表面が赤くなるまで揚げます。

【3】厚みのある頭部と胴体は15分程蒸して中まで熱を通し、それから衣をまぶして揚げます。

【4】お好みで塩胡椒で味付けをして、お召し上がりください。


====================


「ワニの卵は火を通しても生臭さが抜けなくて食べにくいけど、生まれたばかりの蒼牙ワニは、鱗がとても柔らかくて唐揚げでそのままバリバリ食べられるんですよ。

 赤紫のぬめった鱗に火が通ると食欲のそそる色鮮やかな朱色に変わるんです!!」


 瞳を輝かせながら嬉しそうに熱弁するハルに、話を聞いている二人は言葉が返せない。

 料理オタクモードになったハルは、何を言っても聞く耳を持たないのだ。

 ハルは食材に関しては情け容赦なく、それが美味しいと判れば、たとえ生まれたばかりのワニでも平気で調理する。

 孵化したばかりのワニの子供をなんの躊躇もなく捌いて、流れるような動作で油の中に投げ込むハルに、船で働く料理人たちも驚いた。


「ううっ、ワニの尻尾だって判っているのに、サクッ、歯ごたえのある皮をかみちぎると中から真っ白な身とコクのある魚脂がジワっと溢れ出すっ。ビールが旨ぇ!!」


 SENはアイテムバッグの中から、この世界には存在しない缶ビール(冷えている)を取り出すと、ヤケクソ気味に喉を鳴らして飲みながら、ワニのしっぽをつまみに食べる。


「この【海鮮(生まれたて蒼牙ワニ)こんがり揚げ】は本当に珍味です。

 蒼牙ワニは一日で倍の大きさに成長するから、ウロコも固くなって食べられなくなる。ワニの唐揚げは、わすか半日しか食べるチャンスがないんですよ」

「お姉様は食べないけど、増えすぎた蒼牙ワニを減らせるからイイかもしれないね。

 ハルちゃん、今この風雅十七群島で食物連鎖の頂点にいるのはハルちゃんだよ」


 そういうとティダはSENの肩を叩き、席を立つと酒盛りをしている竜胆の所へ向かった。

 しばらくするとティダと入れ替わりで、ほろ酔い加減の竜胆がやってくる。


「ハルが神科学種の珍しい料理を作るんだって?

 ティダの代わりに食べに来てやったぜ」


 食欲旺盛で味にこだわりのない竜胆に、ハルはワニの頭部唐揚げを出す。

 竜胆はそれを平気な顔でバリバリ囓って食べ、SENからビールを分けてもらい飲んでいる。


「ティダのやつ、毒味が嫌で逃げたな。

 まぁワニの頭も平気で食う竜胆だし、さすがのハルも、これ以上のゲテモノは出ないだろう」



 しかし次の瞬間、SENは自分の考えが甘かったと後悔する。

 宴の料理は、まだこれだけではなかった。





 なんと続きます。


※「神科学種の魔法陣」クエスト76 魔獣の躯を片付けよう 追加料理



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