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今日の料理 砂漠竜の巨大カブト焼き

【蒼珠砂竜(砂漠竜)】


 タイショ砂漠に住むボスモンスターの砂漠竜は、砂漠の砂と同じ白に青みがかった頑丈な鱗に覆われ、長い胴体に鉤爪の手足が東洋の竜に近いすがたをしています。

 目にしたモノは何でも食べる雑食性。

 性格は凶暴で、獲物を鋭い歯で一瞬でかみ砕き、体内に宿す炎の魔力で興奮すると爆炎を吐き攻撃します。

 額に埋め込まれた蒼い石は砂漠竜の膨大な魔力が凝縮し固まったもので『蒼珠』と呼ばれます。

 砂漠竜の肉は、魚の赤身と味がよく似ています。



 ***



 オアシスを襲い人々を苦しめ続けた砂漠竜は、女神の使徒として現れた神科学種と自警団の手によって倒された。

 大広場中央に横たわる砂漠竜は、ドラゴンスレイヤー(竜殺しの斧)の一振りでとどめを刺され、頭と胴体は二つに断たれた。


 討伐された砂漠竜の見事な切り口を見た料理オタクのハルは、それを素手でペタペタ触りながら嬉しそうに呟く。


「なんてキレイな、熟れたリンゴのような色の赤身に艶と透明感のある肉質、まるで海の黒ダイヤ 本マグロのようだ!!」


 そしてハルと仲間たちが生(刺身)で食べ出すと、砂漠竜が食べられると知った飢えたオアシスの住人は、砂漠竜に群がると争いながら解体し始めた。

 しかしオアシスの住人は砂漠竜の胴体ばかりに群がり、頭の部分は手つかずのまま残されている。

 竜殺しの斧で肉を切り分ていた神官のアラゾメに、ハルが話しかけた。


「アラゾメさん、砂漠竜の頭が残っているけど?」

「そうですね、こんな大きな頭は処分に困ります。

 広場に残してもすぐ腐り始めるし、オアシスの外に捨てに行かなくてはなりません」

「えっ、どうして頭を捨てるの?食べないの」


 アラゾメの答えは全く違うモノだった。

 そしてハルの言葉にひどく驚き、おびえた表情になるアラゾメとオアシスの住人たち。


「ハルさま、いくらモンスターでも頭を食べるなんて考えられません。

 まさか神科学種さまは……ゴブリンやオーガゾンビの頭も食べる習慣があるのですか!!」


 あれ、おかしいな。

 どうして魚を炙って食べるだけなのに、こんなに驚いて怖がるんだろう。


「そうか、海も川もない砂漠に住んでいるから、魚そのものが珍しいよね。

 アラゾメさん、魚は頭まで食べることができますよ」


 それでも硬くいぶかしげな表情のアラゾメに、近くにいて二人の会話を聞いていた竜胆が声をかける。


「ハル、お前正真正銘の料理バカだな。

 こんなデカい砂漠竜の頭を丸焼きに、カブト焼きでも作るつもりか?」

「竜は魚に属するかよく判らないけど、マグロ味だからきっと食べられるハズ。

 マグロのホホ肉とか、歯ごたえがあってジューシーで美味しいんですよ」


 巨人王族の竜胆と従者、そして自警団たちは、ハルが何を料理するのか理解して話に乗ってきた。


「面白い、砂漠竜のカブト焼きを食べたなんて話のネタになるぜ。

 しかしこんなデカい頭をどうやって焼くんだ」

「そうだね、とても大きな鉄板か焼き網が必要だけど。うーん難しいかな」


 困った様子で考え込んだハルに、竜胆は鼻で笑うと仲間に命じた。


「焼き網なら鉄の柵でいいな。オアシス大神官が反逆者を捕らえていた地下牢の鉄格子がある。

 もう聖堂に地下牢なんていらねぇ。お前たち、牢を壊して鉄格子を持ってこい」



=================

今日の料理 砂漠竜の巨大カブト焼き


【材料】

ボスモンスター砂漠竜の頭部 一つ

炎の結晶 適量

★塩

★砂漠胡椒

★三月蜜柑酢醤油


【1】下準備、普通は具材をアルミホイルで包みますが、巨大な砂漠竜のため【結晶石】を肉に埋め込み、熱が逃げないように簡易結界をはります。

【2】新鮮な砂漠竜の頭部を焼き網の上に乗せます。

【3】火が通るまで一時間以上しっかりと焼きましょう。

【4】肉の中まで火が通っているか確認してから切り分けましょう。

【5】それぞれ塩胡椒、酢醤油とお好みで味付けでお召し上がりください。


※料理の出来上がりは大変熱くなっておりますので、口の中をヤケドしないように気をつけましょう。


==================



 竜胆と自警団は広場中央に大量の薪を運んできた。

 体格のよい巨人王族の従者が石灯籠を広場に運んで数個並べ、その上に牢屋の鉄格子を乗せる。

 簡易巨大バーベキュー台に砂漠竜の頭が置かれた。

 砂漠竜の頭数カ所に炎の結晶を埋め込み、そして薪に火をつけ砂漠竜の頭を焼き始める。


 神科学種のSENとティダは、礼拝堂で神官たちと酒盛りをしていたが、外の騒ぎに気付いて広場に戻ってきた。


「こんな事をやらかすのは、ハルちゃんと竜胆か。

 あの二人は仲がいいのか悪いのか、不思議と気が合うな」

「しかしティダ、これはオアシスの住人には刺激が強すぎないか?」


 最後苦悶の表情で狩られた砂漠竜の恐ろしい形相が炎に包まれる。

 煌々と燃えあがるバーベキューから人々は距離をおき、閉めた窓の隙間から恐る恐るその様子を見ていた。


 パチパチ、ジュウジュウ

 しばらくすると、砂漠竜の溶け落ちた脂が炭火に落ちて、辺り一面香ばしい肉の焼ける匂いが漂う。

 これまで干ばつと聖堂の搾取で食べ物に飢えていたオアシスの住人は、次第にバーベキューの周囲に集まりだした。

 少し警戒心は解けた様子だが、人々は黙って焼けた砂漠竜を眺めているだけだ。


 砂漠竜バーベキューの番をする竜胆の所に、酒の入った皮袋を両手に持ったティダが千鳥足で歩いてきた。


「交代しよう竜胆。ひっく、これは差し入れだ。

 どうもオアシスの住人は食わず嫌いらしいなぁ」


 すでに砂漠竜のカブト焼きは出来きあがっていたが、このままでは自分たちだけが食べる事になりそうだ。

 赤身肉の中までちゃんと火が通っているか確認して、切り分ける用意をしていたハルは、ティダの手にした酒の皮袋に気が付いた。


「ティダさん、そのお酒を僕に下さい。

 竜胆さん、火を強くして!!

 この兜焼きをフランベします」


 ハルの声を聞いて竜胆とティダは一瞬顔を見合わせると、見目だけは美しい天女のティダは、酒をうやうやしく掲げハルに手渡した。

 竜胆はありったけの薪を再び火にくべる。

 そしてハルは酒の入った皮袋の口をゆるめて砂漠竜のカブト焼きに投げつけた。


 皮袋の中身は、アルコール度数の高いオアシスの地酒だ。

 赤紫の巨大な炎が音を立てて一瞬で燃え上がり、甘く濃厚なアルコールの香りが周囲に漂い、匂いにつられた酒好きの男たちが瞳を輝かせカブト焼きの前に飛び出してきた。


 ハルは鱗を剥いだ砂漠竜のこんがりと焼けた皮にナイフを入れる。

 サクッと音を立て破れた皮の切り口から程良く焼けた赤身と、じわりと肉汁があふれ出す。

 

「うおっ、干からびた干し肉とは全然ちがう。

 分厚く切られた霜降りの肉は噛むたびに旨味が口の中に広がる」

「こいつが砂漠竜の肉だなんて信じられない!!

 旅先の港町で高い金払って喰った高級魚の何倍もうめぇ」

 

 砂漠胡椒と塩のシンプルな味付けに、飲み慣れた酒の風味付けがされた赤身肉は、オアシスの人々の口に合う。


「おーいアラゾメ、早くコイツを切り分けろよ。なにヨダレ垂らしてんだ」

「はっ、俺がヨダレなんて、じゅる、ハルさんが最高に旨いと言っているヨコビレ部分を味見して、ああっ、竜胆さま!!」

「へぇ、それはイイ話を聞いた。その旨い肉は俺がいただくぜ」

 

 もはやハルやアラゾメが肉を切り分けるのを待っていられず、ナイフとフォークを手にした人々は砂漠竜のカブト焼きに群がり直接食べ始めていた。

 バーベキューを囲んで椅子とテーブルが並べられ、カブト焼きの他に砂漠竜の肉は唐揚げやシチューに料理され、オアシスの住人が大神官から隠し持っていた酒が振る舞われてお祭り騒ぎになる。 


 


 全てが人々に食べ尽くされ骨と一部しか残されなかった砂漠竜、ハルはその巨大な目玉に三月蜜柑酢醤油をかける。


「はむっ、目玉の周りのゼラチン質はプリプリのトロトロで、うわぁ、旨味が濃厚に凝縮されて美味しいんだよね」



 ***



 一年後

 再び砂漠竜がタイショ砂漠に現れた時、オアシスの住人は広場の中央に薪を積み、準備万端で待ちかまえたという。


「神科学種の魔法陣」クエスト18砂漠竜を食べよう 追加料理です(笑)

本編も色々ゲテモノ……モンスター料理満載です。


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