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今日の料理 耳長砂漠ウサギのミミガー(※耳の皮)和え物

【耳長砂漠ウサギ】

 タイショ砂漠に住む耳長砂漠ウサギは、白い体毛に赤目で鋭い前歯で他の動物の血を吸う吸血ウサギです。

 名前の通りウサギ耳は胴体の二倍以上、一メートルほど。

 巣穴の近くに好物の黒豚カピバラを囮に仕掛ければ、一晩で十羽以上の耳長ウサギが罠にかかるでしょう。

 耳長ウサギの毛皮は優れた断熱性耐水性があり、防具の裏地によく利用されます。

 砂漠の砂地を跳ねるので足が発達しており、モモ肉は身が引き締まり、丸焼きや骨付きシチュー料理にするのが好まれます。



 ***



「でもこの長い耳は使い道がないんだよね」


 本日のハンティングの戦利品、耳長ウサギ十羽が、宿屋の厨房作業台に並べられている。

 緑の癖毛に細い尻尾のような三つ編みの少年ハルと、ふくよかな体格で目尻の小ジワが目立ち始めた女主人キハダは、料理の下ごしらえを始める。

 暑い砂漠では、シトメた獲物が痛むのも早い。

 素早く皮を剥いで肉の解体作業を行った後、ハルの目の前には白くて細長いソレが二十枚も並べられた。


「ウサギ耳は毛がすぐ抜けるから、毛皮として使えないのよね。

 犬の餌にしても味が無いから飽きて食べなくなるの」


 女主人のキハダは、処分に困るウサギ耳をめんどくさそうに横に除けた。

 ここタイショ砂漠は食糧不足気味だ。

 犬が食べるなら人間も食べることができそうだし、工夫すればアノ料理と似たモノが出来そうだとハルは思った。


=====================

今日の料理 耳長砂漠ウサギのミミガー(※耳の皮)和え物


【材料 人間五十名分】

耳長砂漠ウサギ 十羽分

ヨコ縞ズッキー 三十本 

猫足ヨモギ(香草)

★暗闇落花生(摺り下ろし)

★サボテン油

★三月蜜柑ビネガー

★ナノハナ海醤油 



【1】ウサギ耳の表面を火であぶり、毛をきれいに焼きます。

【2】沸騰したお湯で一時間程茹でます。この時臭み消しの香草も一緒に茹でましょう。

【3】水で冷ましながらヌメリをとりましょう。

【4】ウサギ耳を一ミリの厚さの千切りにして、ヨコ縞ズッキーニも同じように細切りにします。

【5】★落花生は軽く煎ってからドレッシングに、蜜柑ビネガーと醤油を混ぜ合わせます。

【6】千切りウサギ耳にズッキーニ、お好みのドレッシングを混ぜ合わせれば出来上がり。


=====================


 

 ハルは、大鍋で一時間茹でたウサギ耳を取り出してみた。

 キレイな薄ピンク色で皮は弾力があり、軟骨も噛んで飲みこめるほど柔らかい。


「獣臭さが消えて、味はほとんど無いから、ドレッシングをかけて歯ごたえを楽しむ料理だね。

 このプルプルした皮の部分はコラーゲンといって、女の人の皺とりに効果があるんですよ」

「ええっ、それじゃあこの耳の皮を食べると、私の肌も若返ってキレイな薄ピンク色に戻るのかい!!」


 ハルの言葉に女主人のキハダは素早く反応する。


「薬みたいにすぐ効果はないと思うけど、体にとてもいい食べ物です」


 キハダはハルの話に、へぇ、ほうっ、と何度も感心したように相槌を打ち、これまで無造作に扱っていたウサギ耳を丁寧にまな板の上に並べる。

 しかし細長い一メートものウサギ耳が二十枚というかなりの量に、ハルは腕組みをした。


「しまった、これを厚さ一ミリで切るとしたら、どれだけ時間がかかるのだろう。

 長さ一メートルのウサギ耳二十枚、とても一時間じゃ終わらないよ。

 誰かに手伝って……そうだ、千切りが得意な人がいる!!」



 ***



 ティダが聖堂でスパルタ勉強会を開いている間、SENは宿部屋に籠もり密かに収集した【異世界美少女コレクション】の画像データ構築作業に専念していた。

 何度かノックの音が聞こえたが、久々に得られた自由な引きこもり時間を邪魔されたくないSENはそれを無視する。

 するとしっかり鍵をかけたドアが開き、宿の女主人キハダに部屋から引きずり出され厨房に連れてこられた。


 両手に大量の茹でたウサギ耳を抱えたハルが、満面の笑みでSENを待っている。


「SENさん、お願いがあります。

 その魔法刀で、このウサギ耳を切って下さい」

「ちょっと待てハル、この魔法刀ソハヤノツルギはとても貴重な超激レアアイテムだぞ。

 俺はコイツを入手するために五十時間ダンジョンに籠もって、十六回目にやっとゲットしたんだ。その刀でウサギ耳を切れというのか!?」


 SENが額に青筋を立てて、アイテムについて熱弁するが、幸運度MAXでレアアイテムが簡単に入手できるハルは、話に小首を傾げるだけだ。

 

「判りました、SENさん早くこの茹でウサギ耳を切って下さい。

 あっ、ちゃんとまな板(水晶の盾)の上で散らかさないようにお願いします」

「ハル、お前はなんという不憫な奴だ。

 我に刻まれた電脳世界での聖戦征戦SEISENの歴史を、永遠に封じ込めたはずの、黒き混沌に浸食された疼く魂を知ることはない!!(電波語解説 思い出したくない黒歴史)」


 軽く落ち込んだSENだが、しかし料理オタクモードのハルには逆らえない。


「すまぬ、すまぬ我が愛刀よ。

 ヨハヤノツルギ 我が敵を 那由多に 切り刻め!!

 百 千 万 億 兆 京」


 上級武士の行使する魔法刀は、一瞬のうちにまな板(水晶の盾)の上に重ねて並べられたウサギ耳五枚を、細かい千切りにした。

 

「さすがですSENさん。これでミミガーの和え物を晩ご飯に一品にできます」

「いや、待てハル。いくら千切りが面倒だからって俺に頼ってばかりいては、オアシスの人間のためにならんぞ」


 不機嫌なSENの忠告にハルは戸惑うが、その様子を見ていた女主人キハダが二人に声をかける。


「今のアンタの魔法刀術なら、アタシも真似が出来そうだ。

 こう見えても、竜胆さまを守るために巨人王宮仕込みの剣術を使えるんだよ」


 そういうとキハダは、刃渡り三十センチの肉切り包丁を手に呪文を詠唱する。


「こうすればいいのかい。我が敵を 那由多に 切り刻め!!

 百 千 万 億 兆 京 垓 ジョ 譲 講 澗」

 

 SENの術を上回る、すさまじい魔力の刃が残りのウサギ耳を微塵に切り刻む。

 最強強度を誇るクリスタルシールドに、肉切り包丁は細かい傷を付けた。


「ウワァッ、凄いよ、キハダおばさんがこんなに強いなんて」

「これは、俺より桁違いにパワーのある魔法刀……つぅか、おばさん一人で砂漠竜を倒せたんじゃないか?」





 それから晩ご飯に出したミミガー(ウサギ耳)和え物は、予想以上に大評判だった。


「コリコリと歯ごたえがあって、煎った落花生も香ばしい。クセになる味だ」

「まさかこれがウサギ耳だって?酢醤油で食べるとあっさりして酒の肴にピッタリだ」




 ***


 

 半年後

 ウサギ耳料理は宿屋の名物になり、特に「皺とり効果がある」という噂を聞きつけた年輩の女性がオアシスを訪れるようになった。


「ねぇ、ハルお兄ちゃん。

 最近キハダおばちゃんね、ウサギ耳食べたらお肌ピチピチで十歳若返って、皆に『お姉さん』って呼ばれているんだよ」


 どうやらハルの持つ祝福が発動したようです。

「神科学種の魔法陣」クエスト20 の晩御飯の話

※拍手小ネタのリメイク。おばさん無双

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